~第五十五話~再会
キャッスルカカオです。私事ですが…こないだ初ライブ終わったと思ったら、次のライブが来月に決まってます。練習スタジオの確保と、まさかのドラムボーカルをさせられる可能性が出てきててんやわんやしてます。つうか、二週間半でドラム三曲にボーカル五曲覚えるとか鬼畜過ぎんだろjk…orz
なんだかんだ充実した…かは微妙な休日を終え、早速セラス西のアララギ島へ向かうことになった僕ら後衛魔術師団第三部隊。今回は個別任務で他に部隊はいない。何故か知らないけどウチの部隊は、後衛のはずが遊撃部隊的ポジションになってしまっているらしい。
「隊長がアキラさんですし、妥当な成り行きだと思いますよ」
「デンゼル、あまり泣きたくなるようなことを言うな」
「隊長が部隊の顔なんですから、平気でほいほい前線に行っちゃうアキラさんが部隊長なら、そういう目で見られても仕方ないです。ココさんもなんだかんだ言って前に出てましたし。正直、ボクを含め前衛向けの魔術師もそれなりの割合を占め、かつトップが魔法理論の破壊者的存在のアキラさんです。純粋な後衛になり得るはずがありません。他の部隊員も、完ッッ璧に染まってますよ。アキラさんの色に。勿論歓迎すべき事ですのでボクはこのままでいいと思いますが」
デンゼル…長文のそこかしこに聞き捨てならんエキスがふんだんに含まれてた気がするが…料理なら完璧にいやがらせにスパイスたっぷりな罰ゲーム…。つうか、ペロ…これは青酸カリ位の致死量なんだが。うん、ちょっと泣いてくる。騎乗だから逃げ場ないけど。
「アキラさん、泣いてないで見てください。例の…『奇跡の火架』ですよ」
獣人族の集落ルートから逸れて、もうすぐ西の海に差し掛かる辺り。ガラリオン山脈の途切れ目から、先日僕らが放ったクリスクロスの壮大なオブジェが見える。つうか、ここから見えるんだ、アレ…。
「あぁ…そうだな」
遠い目で視線を逸らす僕。他の部下達もざわつき始める。
ーーーアキラ殿、天下の初まりの者達のアキラ殿ならば、こんな任務第三部隊だけで楽勝じゃろう?それともこの期に及んでまだ一人じゃ不安かの?まぁアキラ殿にとってここは所詮異界…心細さに押しつぶされても仕方のうて…そこまで言うならもう一部隊つけてやっても…
ーーーやってやるよクソじじい。
ーーーアキラ君、幾ら君が成果を上げようとも、君の部隊はまだ若い。命を削る戦場から離れ、他にも多くの経験を積むことが引いては君の力になるだろう。君の部隊にも優秀な風魔術師はいるだろう?万が一何かあったなら、伝令を飛ばせば良かろう。アキラ君、健闘を祈る。
セラトリウス団長の挑発からのカルバン団長の諭し。…断れるわけないだろうが、こんな鮮やかなコンボ。はぁ…でも意地張るんじゃなかった。まさかこんなタイミングで心労背負い込むとは思わなんだ。あの三人の誰かを道連れにしてやりたい気分で一杯だ。適任はシーリカ辺りだろうか。カイムは駄目だ、いつものスマイルでどこ吹く風で逃れそうだ。グレンはグレンで、うっかり口が滑って色々機密事項がバレかねん。僕らに関する。…そうなると、やっぱシーリカか。…いや、もう止めよう。あいつはここに居ない。考えるだけ詮無き事だ。
「あー…なんで遠征費用削減中に遠征させるんだよ…」
よって、一部隊だけなのだ。
「何かおっしゃいましたか?」
「いや、何でもない」
もうすぐアララギ島が見える沿岸部に着く。…っと、アレ?
「アキラ、まさか海を渡るのに何の準備もせずに来たのかい?」
カイムが砂浜に一人で立っていた。
「…あっ。でもなんでお前がここに?」
「部隊の予定は全幹部に通達されるでしょ?で、休みボケしたアキラのことだから絶対普段の遠征のままで来ると思って」
…忘れてた。よく考えたら、舟とか必要じゃねぇか。確かに見える距離だけど、泳ぎは無理。そこまで凶暴じゃないけど海獣の類もいるし、そもそも食料とかどうすんだって話だ。いやぁ…渡りに舟ってやつだ、文字通り。
「片道金貨一枚で手を打とうか」
ーーーピシッ…
全員の時が止まった。とんでもねぇ守銭奴だ、コイツ…。ほら見ろ、入りたての子とか涙目じゃねぇか。いや、元々僕の不注意が悪いんだけどさ。
「大丈夫、アキラからしか貰わないから。下の子から搾取するわけないじゃん」
会場から溜息が漏れる。…って、僕から取るのは確定かよ。
「流石カイム副隊長!」
「懐が広い!」
「あの爽やかな笑顔が素敵!」
待て待てお前ら。あいつ搾取って言ったの聞こえなかったか?お前らの隊長が食われようとしてるんだぞ?
「天下のアキラ様とあろうお方が、高々金貨一枚を渋るのかい?あぁ可哀想だ。シーサーペントとか半魚人、クラーケンまでも生息しているというのに…。何人も命を落とすだろうなぁ…。果たしてこの中の何人が無事に島に辿り着けるのだろうか…救いの手を払いのけられた俺には、ただただ祈るばかりしか出来ない…」
「無駄に隊員の不安を煽んな。あいつら個々の能力はさほど高くねぇよ…。わかったよバカイム。払えばいいんだろ?食料とか備品の問題もあるし、手ぶらで来た僕に選択権はねぇよ」
「毎度ありー!」
懐から差し出した金貨を渡すと、カイムがホクホク顔で受け取る。
「こういうのを隙間産業っていうんだろうね」
「いや、絶対違う」
「アハハ!そう微妙な顔しないでよ。最上級の安全で向こうまで届けるから」
色々落胆している僕を尻目に、隊の子達はカイムが用意してくれた何隻もの舟に荷を運ぶ。お前ら…少しは自分とこの隊長を敬え。つうか慰めろ。
「諦めてください。これも一種の親しみの形です」
「んなわけないだろ!」
「それに慰めて欲しければ、アキラさんにはあんなに可愛いお姫様がいるじゃないですか」
「…言ってて恥ずかしくないか?デンゼル」
「アキラ!みんな準備できたみたいだよ!じゃあ、行こうか。俺はここでお見送りだけど」
カイムが促すと、確かに準備は出来ていたようだ。荷を積む舟に二人ずつ配置し、他は少し大きめの舟にスタンバイしている。
「じゃあ、頼んだよ、バハムート」
ーーーザバァァァ!!!
「我が主君のご友人、必ずや無事に渡そう」
………よう、出目金。お前はいつから君主になったんだ?カイム。
ふと、みなさんお気に入りの話とかあるのかなぁとか思ったりしました。別に投票とかは募りませんけど(笑)もしお気に入りがあるのなら幸いですっつうか作者冥利に尽きます。