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クリエーター  作者: 如月灰色
《第三章 楽園》
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~第五十三話~強制召集略して強襲

白カカオ惨状…参上です。日常系の受けが想いの外良くて軽く複雑です(笑)ほのぼの好きだからいいんですけどね…。勿論嬉しいですよ?ありがとうございます!さて、時間が許す限り頑張りますか!

「…何でここにいる?」




 時は遡ることほんの数分前。そう、思考を取り巻く環境も全く正常なはずのたった数分前。


「おはよー…」


 驚くほど規則正しくなってしまった生活リズムのおかげで朝からベッドを出た僕。完璧なオフ日にこんな早く起きること事態が、こっちにいた頃を考えると正気を疑うことなのだが、向こうの日が昇ると起きてしまうリズムに侵食されてしまったらしい。


「お兄ちゃん、おはよう」


 洗面所に行くと、順子が顔を洗っていた。学校はもう二学期が始まっていて、登校する準備をしているようだ。化粧っ気がないこいつは、寝癖頭さえなんとかしてしまえば男並に準備が早い。うんうん。お前に化粧はまだ早い。肌悪くなるしな。その内いやでも化粧しなければいけない時期が来るさ。社会人になれば、化粧はある種女の人の身だしなみみたいなもんだしな。だがまだお前はしなくていいぞ。しなくても充分可愛いからな。


ーーー兄馬鹿…。


 お前だって愛でていたろうが、我が妹を。順子に生返事をすると、わしゃわしゃと歯を磨く。うぇ、無精髭生えとる。寝癖も酷い。こんな姿じゃお外に出れないが、別に今日はダレる予定だし、出かける時に整えればいっか。


「お兄ちゃん、お兄ちゃんがこんな早く起きてるのも珍しいし、今日は一緒に朝ご飯食べようよ?」


「んん?ふぁあ」


 同意を示そうとしたのだが、如何せん口に歯磨き粉がたっぷりな為正しく発音出来ない。それでも順子はわかってくれたようだ。


「楽しみにしてるねっ!」


 髪のブラッシングとドライヤーをかけ終わった順子が、ニヤケながら洗面所を後にする。…ニヤケながら?


「ぺっ!そうかそうか。そんなにイケメンな兄貴と飯を食うのが嬉しいか。可愛い妹め」


ーーー自分でイケメンとか言うか。それに妹君のブラコンに困っていたのではないか?


 離れて暮らしている、年が離れた妹のことが可愛くないはずがないだろう。自慢の妹だし。全く、兄貴冥利に尽きるというもんだ。一部の人種の羨望の眼差しが目に浮かぶ。

 そうして、ニヤニヤしながらリビングに向かった。…普通の朝食を期待しながら。




「おはよーアキラ!」


 …頭を振ってもう一度確認する。


「どうしたの?」


 今度は薄目で見てみる。…どっからどう見てもエリーだった。


「…何でここにいる?」


 普段から規則正しい生活を送っているが故一同に揃っている神谷家…仕事に行った親父除く。その中に、なんでかエリーが一緒に朝食を取っていた。エリーの前の目玉焼きが半分崩れている。


「何でって、ゲート通って来たんだよ?アキラの家覚えてたし」


「手段じゃない。どんな理由でこっちの世界にお前がいるんだ?」


 最早色々諦めてエリーの隣、僕の席に着く。デザート用の林檎を最初に齧り、頭をすっきりさせる。…訂正、すっきりさせようとする。


「えっと…ぐんぶしれい?」


「伝令か。で、用件はなんだ?」


「『護国騎士団後衛魔術師団第三部隊長アキラ殿、休暇が終わり次第、セラス西部アララギ島にて稀少幻獣種保護の任務を命ずる』だって。セラトリウス団長から」


 しっかり言えるじゃねぇか。なんでさっきのは疑問系だったんだよ。


「つうか、伝令はシーリカの仕事じゃなかったか?」


「ううん、シーリカさんの魔法、ここまで届かないから。あと…お父さんから、ごゆっくりだって」


 家族がいるところで出来るか馬鹿国王。


「そういえばエリーさん、随分早起きなのね?」


「へっ?」


「いやね、朝ご飯の仕度してたら、窓の外に見覚えのある人がいたから、誰だと思ったらエリーさんだったのよ」


 お前…朝早いどころじゃないぞ?お袋が起きる時間って…。


「アッハハハ…すみません」


 エリーが空笑いをして謝る。一応それなりに悪い気はしてるんだな。


「そこから晶の部屋案内したんだけど…」


「………えっ?」


 何してるの?いやマジで。


「晶ちゃんの寝顔見たら満足して出てきたんだよね」


 千尋さんが便乗してきたが、どうやら楽しんでいるようだ。クッ…女だらけだとアウェー感がヤバイ。エリーも顔を赤くしている。


「お姫様って聞いてたからすごく固い子想像してたけど、蓋を開けてみたら普通の女の子でなんとなくホッとしたわ。これからヨロシクね、エリーちゃん」


「はいっ!千尋…さん?」


「うんうん、良かった良かった」


 姉貴が何でいい感じに締めようとしてるかは知らんが、ようやく順子のさっきのニヤケ顔の意味を理解した。


「あーーーーー!!私のウインナーーーーー!!」


 兄貴を謀ろうとした罰じゃ。


ーーー残念、それは私のおいなりさ…


 黙れ馬鹿指環。絶賛爽やかな朝だ。壊すな。


「ううう…いってきまぁす…」


 順子が最後に残したウインナーを僕に食べられ、意気消沈してバッグを持つ。


「あれ?じゅんちゃんどこ行くの?」


「学校!エリーちゃんも行く?」


 行くわけないだろ馬鹿たれ。


「行くーーー!!」


「行けるわけないだろ馬鹿たれ」


「いいじゃない、途中までなら。雨も降ってるし、晶、順子と一緒に送って行ってあげたら?」


「「やったーーー!!」」


 五月蝿い。眼鏡かけた超能力者ばりに喜びやがって。


「…へーいへーい」


 重い腰を上げて出かける仕度する。順子の学校は自転車だとそれなりに時間がかかるが、車だと結構余裕をもって登校出来る。順子も、下校するとき交差点からこっち側の自転車泣かせの坂を上らなくてすんだと喜んでいるのだろう。その気持ちはわかるけど、母校を同じくする者としては。いや、家の前の坂だから違くても同じか。


「間に合わせるから待ってろ」


 そう言うと、二階に上がり着替えをする。流石にお年頃のお子様方が大挙する所にスウェットでは行けまい。順子的にも。しょうがないからジーンズに柄シャツを着て、もしかするとそのまま出かけるかもしれないから一応ネックレスとかもつける。幸い寝癖もすぐ直せそうだし、髭も電気シェーバーで一分もいらない。


「おそーい」


 順子がブーたれている。


「間に合ったんだからいいだろ」


 エリーと千尋さんと三人で朝のニュース番組の犬のコーナー見てたくせに。


「ほれっ!」


 後部座席に座るエリーに、全く被っていないキャップを投げて渡す。


「これ何?」


「被れ」


「なんで?」


「耳、目立つだろ?」


 なんとも端的な会話を交わし、坂道を下る。カーステからは、目覚めの一発と激しめの洋楽が流れる。


「あぁ、なるほどね」


 助手席の順子は納得したようだ。流石我が妹。


「ふぇ?」


「まだこっちの世界には、エリーちゃんみたいな子来てないからね」


 そう。神谷家は感覚が麻痺ってたかもしれないが、他の方々はエルフの存在など基本的に見たことがないのだ。パニック必至である。


「なるほどぉ…」


 エリーも納得してくれたようで、素直にキャップを被る。よしよし、耳ちゃんと隠れてるな。


「…えへへ、アキラの匂いだ」


「馬鹿言ってんな」


 僕はそんなに被ってない、その帽子。…似合わないから。

 そんなことをしている内、早くも順子の高校に近づいてきた。県立ひばり野高校。どこかのギャルゲーみたいな名前だか、れっきとした県内有数の進学校だ。そのくせ部活も活発な文武両道、さらに結構生徒も垢抜けているという色んな意味でブランド校だ。…僕はサボり魔の底辺だったけど。


「じゃあ、行ってくるね、お兄ちゃん」


 助手席を開け、順子が出る。近くに友達もいたようだ。


「おう。いってら」


 軽く手を挙げると、順子の友達数人が僕に気づいたのか頭を下げる。


「じゃあ私こっち座るね」


 エリーが後部座席から助手席に移る。雨が降ってるから、サッとドアを閉めても少し濡れたようだ。


「ふー…アキラ、帽子、ちょっと暑い」


 エリーが帽子を脱ぐ。馬鹿っ!ここで脱いだら…。


「キャー!!あの子」


 あーほら、パニクってる。急いで出る…


「可愛いーー!!」


「向こうの世界の子かなー?キレー!!」


「運転してるの、三組の神谷さんの兄さんじゃない?」


「テレビで見たー!!ちょっと、かっこよくない!?」


 …なし崩し的に僕までバレた。あーあー車にたかるな。パパラッチかお前らは。




 数分後、出勤してきた先生によって蜘蛛の子のように散らされたが、囲まれていた時間と同じくらい説教をくらった。

年頃の女の子って、有名人を見るとたぶんこんな反応なんでしょうね。たぶん…。色々受難な回でした。

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