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クリエーター  作者: 如月灰色
《第三章 楽園》
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~第五十話~休めない休日

ども、白カカオです。シリアスが多くて自分的にも大変だったので、前述の通り少し平穏な世界をどうぞ。

「号外ー!号外ー!」


 キュートスの城下街にはいつも通り…いつもより若干にぎやかな喧騒が広がる。今日は紅葉の節第一週、土の曜。元々の世界での日曜にあたるこの日は、商人が皆大わらわになる繁忙日だ。そして、いつも以上ににぎわっている原因は…これ。


ーーーギランに巨大な光の十字架出現!!吉兆か凶兆か!?


 足元に落ちている号外を拾い、頭が痛くなる。何々…?一部の専門家の意見によると、ギラン側の正当性が神に認められた証とされ、物議を醸している…。ナンダヨコレ?


「…アキラ?」


「…もうどこから突っ込んでいいかわからん…」


 文面に目を通した途端頭を抱える僕を見て、隣を歩くエリーが心配そうに顔を覗き込む。

 先ず、アレは僕らが作り出した物で、神云々は関係ない。…まぁ神代の時代の系譜を引く僕らが言うのも微妙な感じがするけど。

 次に、この種族は何の神を信仰してるんだ?こっちに移り住み結構な時間が経つが、特定の信仰をしているところなぞ見たことないぞ?どっちかって言うと、個々に信仰している節はあるから、ある種日本に近い部分があるけど。…それぞれ自分にとって都合の良い神サマをな?

 そして…一部の専門家って誰だ!!確かに僕らの出生のこともあるから、すぐにおいそれと公表出来ることではないけど…それでも国の上層部にはきちんと理解が浸透しているはずだぞ?こんな与太話を吹聴する馬鹿はいないはずだ。そして大臣の爺さんは何やってんだ!魔法監督省のトップだろ?こんな出鱈目が広まれば、国家レベルの混乱が起きるぞ!?そんな適当なことを言う似非専門家なぞ早く突き止めてしょっ引け!


「主、気にするな。これはきっと、東○ポ的な新聞なのであろう?」


「気にもするだろう?僕は当事者で、軍の責任者の一人なんだから…」


 声の音量を下げ、げんなりするメンタルを大袈裟に表現する。…実際大袈裟でもない気もするけど。一部隊の長ということは、それ以下の部隊員に正確な認識を広める必要がある。でないと、一部の情報の綻びから組織の瓦解が始まりかねない。あー…頭痛い。全て本当のこと言うわけにもいかないし、後でセラトリウス団長と口裏合わせしよう。辻褄合わせでっち上げて、なんとか誤魔化すしかない。


「アキラ、向こうに茶屋があるよ?最近出来たんだって!行ってみようよ!そこで少し休もう?」


 さっきから頭やら胃やら抑えている僕を気遣って、エリーが休憩を切り出す。

 そうだよ。今日は国王直々に言い出したデートなんだよ!


ーーーアキラ君?君がエリーとそういう関係なのは最早周知。どうだ?ここは明日は一日仕事の事を忘れ、我が愛娘と一緒に街にでも行ってみてはどうだ?片や国内で知らぬ者などいない騎士団屈指の勇将。片や現国王の愛娘にして超ミラクルスーパーハイパースペシャル(以下略)銀河系アイドル。どうだ?このビッグカップルが一般人と変わらず普通に街をデートするなど、民を元気にする薬だと思わないかね?此度の遠征で…心に大きな傷を負った民も多く、兄上やココなど有力な者を失った国としても、ここで活力を取り戻したいところだ。…経済効果もあるだろうし。


 …最後にそれが出てくる辺り流石国王だな。つうか、馬鹿殿様のようで色々考えているもんだ。でもエリーは何時から銀河系アイドルになった?キラッ☆とかやってないだろ?…案外良いかもしれない。どこかの変態紳士に作らせるか。

 まぁ…置いといて。国王の提案の影に、僕らの出生を聞いてからの心境の変化があったみたいだけど、そこまでは知らん。ただ、政府直下の考古学者が西へ東へ奔走して神代の時代の資料を探し回っているらしい。残ってるのかねぇ…僕らの文献なんぞ。…にしても。


「あまり必要じゃなかったんじゃないかなぁ…?まぁデート出来るならいいけどさ」


 ポツリと零してみる。自分で言うのもなんだが、ビッグカップルのゴシップなんかより、皆ギランの謎の十字架の方に夢中だ。


ーーー突如現れた巨大な炎の十字架に勇んで駆けつけた命知らずな冒険者によると、その炎は全然熱くなくて、癒しの効果すらあるらしいぞ!?辿り着くまでに負った傷に、炎が触れると完治したとか!


ーーーmjd!?でもギランだろ?危なくていけねぇよあんなとこ…。


ーーーでも最大手のキャラバンが、観光ツアーを企画してる最中らしいぞ?


 …ホント、頭痛い。まぁその命知らずな冒険者の話が本当かは知らんけど、本当に癒しの効果があるならいいなぁ…と。浄化は知ってるけど、もしかしたら、ココの魂がそうさせてるんじゃないか?とか考えたり。


「すみませーん。席二人分空いてますか?」


「はいはい少しお待ちくださいねー」


 考え事をしていたら、いつの間にか目的地に着いていたようだ。しかし、この国に茶屋とは…。


「………あっ」


「これは…大召喚師様っ!!」


 まさかの…いや、確かにこの国に日本家屋とか、少し考えたらわかるはずだ。…先の遠征の折、僕にやたらと懐いていた狐の獣人、コトリがこの国にいるという情報を持ってさえいれば。


「アーーーーッッッ!!」


「おいコトリ!仕事中だろっ!?抱きつくな!」


「いや、主…仕事中とかの問題ではない気がするが…」


「だって、こんな偶然に大召喚師様とお会い出来るなんて!あのプリンセス姫子の『ドキドキッ!!今週の恋愛運』は本物だったのね!!」


 …いや、そんな与太臭いもんじゃなくて、自分で占えや巫女。いや、逆に占うな。んなしょうもないもん。僕?一切信じないね!なんせ占星術や姓名判断、血液型占いや動物占いも全部当たったことないもんね!!


「動物占いとは嫌に懐かしいものを…と言うより、そこまでくれば不憫だな」


「アキラ…その女、誰?」


 …エリーの繋いだ手から、絶対零度の殺気を感じる。お前、氷属性なのか?だとしたら、ガラムより凄い才能持ってそうだけど…。


「あっ…コノヒト、エンセイデシリアッタ、ジュウジンゾクノコトリサン」


「…なんで片言なんですの?」


 あれ?寒気がするよ?季節の変わり目で風邪でも引いたかな?アハハハ…。


「コトリ、この子がエリー。この国の第三王女で…僕の彼女」


「アキラ、なんで最後小さくなってるのよ?」


 べっ別にやましいことないよね?なんでだろうね?


「あっ、コトリ。そうだ、席を頼む」


「…まぁいいですわ。ご案内しましょう」


 確認したい。今日は休息日なんだよな?なんで前門の虎、後門の狼状態なの?作戦中じゃないよね?


「ップ!ハハハ!見た?グレン。今のアキラの顔?」


「一人だけ美味しい思いしてる罰だ」


 隣の席は、まさかのカイムとグレン、シーリカだった。なんといういつもの面子。


「なんでお前らが居るんだよ?」


「偶々よ。ねっ?」


「うん。グレンは修行の息抜きに、俺とシーリカは買い物中に出くわしてさ。もしかしてアキラもって話してたら、まさかこんな形で会うとはね」


 出来れば会いたくなかったがな。シーザス!ガッデム!神は死んだ。


「…主がそれを言ったらいかんと思うぞ?」


「シーリカさん?あの女の人は?」


 エリー、目が…笑ってない。怖い。つうかなんで怖いの?僕何もやましいことは…。


「さっきアキラが言った通りよ?遠征で獣人族と合流して、そのときについてきた子」


「ふーん…」


 ほら見ろエリー!僕は何一つ嘘なんて言ってないさ!


「しかし…エリーちゃん見事な絶対零度だったなぁ。火の魔術師としては、なんとしても敵に回したくない」


「見事な修羅場だったねぇー」


「ホント…あんなの、蜥蜴人と不死族同時に相手した方がまだマシだよ…」


 半ば涙目になりながら男性陣二人に同情を乞う。…あれ?蜥蜴人に不死族?どこかで…。


「あっ、そういえば」


 思い出した!!思い出したから、それ以上は言うな!頼むシーリカ!!


「あの蜥蜴人と不死族との戦闘が終わった後、アキラが膝枕してもらってたの、あの子だったわよね…あっ」


 シーリカ…皆まで言った後に気づくな。つうかお前、確信犯だろ、それ。…そぉぉっとエリーを横目で見る。


「へぇぇ…膝枕…ねぇ?気持ち良かった?アキラ…」


 ヤバイ…。エリーの顔が固まってる…。なまじ端整な顔立ちしてるだけに、恐ろしさが倍増どころじゃない…。


「あっあのさ、エリー…」


「アキラの…」


 ええい!時の魔法よ!時間を戻せ!クソッ!無理か!拙いっ!エリーが右腕を大きく振りかぶって…。


「馬鹿ぁぁぁぁーーー!!!!」


「ゲブハァーーーーッッ!!!」


 平屋の屋根を突き破り、お空の彼方へ飛んでいく僕。ドップラー効果で悲鳴が小さくなっていく。…なんでストレート喰らったのに上に飛んでくの?自然法則は無視なの?馬鹿なの?死ぬの?…死にそうなのは僕でした。


「これが国王が言わんとした、銀河までぶっ飛ばす系アイドルか…」


「主…誰うま…」


 ガルーダを召喚せずとも、軽々飛んでいく僕。現在、成層圏。このままの速度だと、重力圏を軽く振りきりそうです、十二宮の皆…僕も今日から仲間になるからよろしくね…。




 そんなこともならず、無事に地表に落ちてきた僕。夜まで意識を取り戻すことなく、デートは勿論中止。壊れた茶屋の屋根は、僕の給金から引かれることになりました。なんという理不尽…。

コトリ、久々に登場させました。積極的な巫女さん…ふぅ。ということで、日常編はやっぱり馬鹿やらないと。いやぁ…楽しく書けました(笑)


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