~第四十六話~Fly To The DARKNESS
こんばんわ、白カカオです。やっと、調子が戻ってきそうで来て無さそうな感じです。さて、この編もクライマックスです。早くネタ書きたいけど…まだかかりそうですね。
仮病を使わせてもらい、しばらく軍から離れ神話の世界に没頭すること一週間。やっとお望みの神サマとの会合を果たし、無事に使役契約を結んだ僕。いやぁ大変だったよ。ダービー(ナイアルラトホテップ)の力を借りて|肉体(マテリアル体)と|精神体(アストラル体)を切り離し、第九のセフィラ、イェソドへ。その前段階での座禅や瞑想でのトランス状態に入る所から一苦労し、更に今回のお目当て…インド神話の神々のおわすところに向かうのに一苦労。なんせ、幾ら人間としては特別な立ち位置にいるとしても、右も左もわからない世界じゃお手上げしそうになってもおかしくないでしょ。めげそうになるもこれも目的を果たすための必要な過程だと言い聞かせなんとか踏破。うん徒歩だったんだよね、移動。時間の感覚がなかったのが幸いだったけど、もし通常の流れだったら、確実にタイムオーバーよ?
更に目的の神サマに会うも、お目当て二人の内片方はいきなり斬りかかって来るし。肉体に戻ってみたら同じ切り口にちゃんと鮮血が残ってるっていうサービス精神。エリーが入って来なくて本当に良かったと思う。まぁ、なんやかんやで作戦に必要不可欠な鍵はゲット。残りの数日を疲労の回復に費やし、ようやく、本当にようやく決戦の日時を迎えた。
「グレン…」
「あぁ!もう心配ない!やっと、妹の仇が討てると思ったら武者震いが止まんねぇよ!」
時刻は冥の刻、下弦の月が正中に差し掛かる前だから、たぶん二十三時くらい。この作戦は軍内ですら秘密裏の事だから、日中の目立つ時に出立するわけにはいかない。ちなみに、情報操作は全てセラトリウス団長に任せた。僕らが今からすることが明るみに出るのは、全てが終わった後だ。別名、尻拭いしてもらうとも言う。月明かりに、気合の入れた装備姿の、グレンが映える。暗い黒いローブに白銀の胸当て。さらに…。
「おいグレン。その背中に担いでる剣はなんだ?」
「これか?これは俺の魂に呼応して召喚された、フレイム・タンの最終形態だ。まぁ…後の楽しみにしておけ」
…こいつ、少し楽しんでるな?今から向かうのは私怨を討つ戦いだぞ?もしこないだの僕と同じ状態なら、まだ時間が足りなかったのかもしれない。怨敵を討つ死闘に、愉悦はいらない。戦場では、いつでも冷静さを保っていた方が勝つのだ。…でだ。もう一つ疑問。
「それと、なんでお前らがいるんだ?」
…カイムとシーリカ。この二人も、いつもと違った装備でこの場に居る。…つうか、なんでいんの?
「なんでって、ココは今も昔も私の妹分よ?私が立ち上がらないわけがないじゃない!」
「うん。ココちゃんは、俺らの大切な仲間だからね。それに…今回は久々に昔の仲間の前で本気を出したくなって」
いつもニコニコしているカイムの目が、キュッと結ばれている。こいつも、まがりなりに仲間意識はあったというのだろうか。…いかんいかん。まがりなりにっつうか、元々カイムは僕らの仲間だろうが。僕の方も、昂りすぎてるのかもしれない。
「…まぁいいか。魔術師団の主力隊長副官が非公式の作戦にこうも志願するのはどうかと思うけど…。じゃあ、先に作戦を伝えておく。一番先に言うが、今回あいつにトドメを差すのは。あくまでグレンだ。本当は僕もだけどシーリカもカイムも自分の手で討ちたいって思うところだろうけど…原初での唯一人の妹を殺されたグレンにその権利を譲ろうと思う」
「アキラ…すまねぇ…」
「気にすんな。…でだ。プロセスは至って単純だ。グレン、カイム、シーリカは今回陽動に回ってもらう。あいつ…ウラヴェリアを眷属からなるべく孤立させて欲しいんだ。配置としては、グレンが吸血鬼城の南、カイムは北、シーリカには東を攻めてもらう」
「じゃあアキラは西ね…」
「いや、僕は城を攻めさせてもらう」
「えっ?でも西はどうするのさ?北は俺がいるからいいとして西から迂回してギランの奥に逃げられたら追走は難しいよ?」
うん、カイムの疑問も尤も。ぶっちゃけ、この陣形はカイムとシーリカの参加と僕のスキルアップが偶々重なった結果産まれた、アドリブに近い産物だし。
「西には、僕の召喚神を置く。これで、僕が中央に潜入し、全部のお膳立てをしてやる。だから、お前らは安心して暴れ回ってくれ」
「でも、アキラ一人か?城には、アキラのあの…人間もいるんじゃないか?」
「それに関しては我が答えよう」
ダービーがいきなり声を発した。内心ちょっとびっくりした。このやろ…。
「あの女の気配…反応は何故か今あの城にはない。つまり…あの城の本丸は、ウラヴェリアだけだ」
「まぁ…ダービー氏が言うなら間違いないね。…マドラ団長の仇がとれないのは残念だけど」
カイムが首を縦に振り納得している。たしか、カイムには原初の記憶がそのままあるんだよな…つうか、その頃から器変えてないって言ってたし。ダービーの言葉にも、こいつらには事の他重みが違うのだろうか。
「じゃあ…そろそろ行こうか。ココの、弔い合戦だ」
「うーわ…アンタ、こんな隠し玉持ってたのね。道理で、伯爵復活のギリギリまで我慢出来たものね。普通なら一週間前後かかる道も、一っ飛びか」
「俺らは飛行の魔法は持ってないからな。…こりゃ便利だわ」
今僕らは地表より高度数百メートルの高さを、文字通り『飛んで』いる。僕らの背中には、それぞれ一対の翼。僕がイェソドに行った時に使役関係を結んだ、迦楼羅…つまり、ガルーダの力。それを双児宮のジェマイニの力…乱暴な言い方をすれば影分身の術みたいなもので増やして三人にも適用させ、さらに加速の魔法でジェット機も涙目になりそうな勢いでギランへ飛翔している。衝撃波?んなもん自分で防御壁張って護れ。加速による時間の歪み?知らん!!今の僕にとって、世界よりも目の前の敵の方が大事だ。本当は旅客機とかはもっと高度を上げるんだけど、そこまでの距離じゃないし。
「さて…竜族の頭上も軽々飛び越えてきたし、目標は目と鼻の先だ!みんな!!また、後でな!!」
「「「おうっ!!!」」」
魔族が踊る冥の刻。復讐の二文字を胸に抱き、怨敵の血飛沫の期待に胸は躍り。古より連ねし因果を孕んだ四人が、獲物の頭上を散開する。その想いは等しく、同じく、今は亡き大切な人の為に。
今回の四人の方角の配置決めですが、一応四神の配置を基準にしました。…それ以上の意味はありませんが。そして、五行じゃなく四大元素ですが。ちなみに、この物語の主要人物の四人が四大元素に符号しているのは、全くの偶然です。まぁ書いてるのがファンタジーなので、ある意味必然なんでしょうけど…。