~第四十五話~後始末《後編》
お久しぶりで申し訳ありません、白カカオです。体力の低下か夏で消耗が激しいのか、寝落ちが多くてへこんでます。それでもアクセスしてくださってる方々…マジ感謝。ホント、ありがとうごぜぇやす。
セラトリウス団長から資料を借り、執務室にこもること二日目。紙の山に押しつぶされながらいつのまにか突っ伏して寝ていた。ダービーは根詰めている僕に気を使って話しかけないようにしていたのかもしれないが、机の上で紙の山に潰されて見る夢なんてロクなもんなはずがなく…結果最大の見返りであるはずの記憶や思考の整理も体力の回復もままならないまま現時点に至る。ぶっちゃけ部屋でやっててもいいんだけど、執務室の方が理由をつけて仕事の時間も使えて便利だからここに引きこもっているのだ。隊のことは、粗方デンゼルに任せてある。優秀だからね、あいつ。完っ璧に勘繰られてるけど。
「復活まであと約一週間半か…」
セラトリウス団長の資料によると、吸血鬼は今回と同程度のダメージの回復に約一ヶ月を費やすらしい。あの後キュートスに帰るまで一週間。僕が部屋に引きこもって一週間。さらに僕の軍部復帰日と昨日今日の研究に費やした日数が二日。ぶっちゃけもう時間がない。何かしら吉兆がないまま時間がすぎるというのは、本当に気ばかり急いて逆に思考がまとまらない。だけど思考のストップをかけるわけにもいかないので…。
「ダービー」
「なんだ?」
「状況の整理をしよう」
こういうのは、第三者を交えて声に出して確認した方が、往々として自身の理解度を客観的に分析できると言うものだ。
「うむ」
「あいつの復活まで、約一週間半。攻めるに最も最適な日取りは?」
「復活ギリギリであろうな。主の魔力の回復、グレンの精神的立ち直りの時間を考えるとギリギリまで待ち、こちらのコンディションを限りなく完璧に近づけつつ、敵方は全快に至らないギリギリの見極めで向かうのが上策だろう」
「その間吸血鬼の魔力が著しく下がる新月を挟むけど、その日に決行しない理由は?」
「新月の日はそもそもこちらの魔力、施行力のふり幅も大きい為、そもそもの戦力の低下は避けられん。向こうは数多の眷属を抱えているのに対し、主とグレン二人だけのこちらは取るべき日取りではない」
うん、この件に関しては、もう見直す余地は無さそうだな。
「じゃあ、戦力について。向こうはウラヴェリアが仮死状態で体組織の復元中、白夜に関しては不明。ここからウラヴェリアの状態は好機だけど、ヘル・ブリングを持った白夜の様子が知れないから下手に現状の僕たちが攻めるべきではないと判断できる。じゃあそのこちらの現状を良くする為に、自軍の情報を整理。まずはグレンから」
「魔力値は全快時で、団長レベルよりやや下。しかし覚醒に伴いグレンの性格を考慮に入れると、最大値は大幅に上昇すると見て間違いない。火力も、下手すると今回で火属性の最大レベルを凌駕する可能性もある。なんせ、あやつの故郷は煉獄だからな」
「それ、チートじゃね?」
「まぁ今回は隠密ゆえ、元々の仮定の作戦通り陽動に回ってもらうのがいいだろうな。なんせ…」
「なんせ?」
「下手するとクトゥグアを呼び出しかねん」
「あぁぁ…お前、ナイアルラトホテップ時代は犬猿だからな」
仲良くしてくれよ。そして、絶対呼ぶな。ギランどころかこの世界が焦土と化しかねないし。
「次は僕として…。使える神はレオ、アクアリウス、タウルス、バルゴー…あと、ヨグ=ソトース。あと属性魔法が並より上って位か…神々どもも性質上隠密には向かないから、割と自力で戦うことになるな。まぁ、輝くトラペゾヘドロンもあるし、妙案が浮かばない場合は、最悪アドリブでなんとかするしかないだろうな」
「主…申し訳ない訂正がある」
「…一応聞いてやる。なんだ?」
決行直前で僕のアビリティに不備があるとかならマジで洒落ならん。今のうちに知っておくのは幸運と思っておこう。さて、心の準備も出来た。
「…上がっておるのだよ」
「…はっ?何が?」
「主の器としてのレベルと無限の魔力の成長率が。ダアトでの事によって、主の魂の位階が第七のセフィラ、ネツァクレベルまで。黄道十二宮全ての召喚と、さらに別の神々も幾人か。十二宮に関しては、相対的に召喚コストが下がり、全員同時召喚出来るようになっとる」
………それ、なんてチート?
「痛い痛い痛いっ!!主っ!すまんかった!!痛い痛いからやめてくれ!!!」
「だから!何でお前は!報告が!いつも後手後手なんだ!!」
「だから済まんかったと言っておるだろう!!だからペン先で水晶をグリグリするのは止めてくれ!!」
…なんだ。全然イケるじゃん。ちょっと手を加えるだけで、割と簡単にあいつ嬲れるわ。なんだか、ご都合過ぎて笑がこみ上げてきた。
「ックックック…アーハッハッハッハ!!勝てるぞ!ココ!お前の命は、こんなにも僕に力を与えてくれた!!お前の仇、これで完璧に討てるからな!!」
嬉しくて、怨敵を討てる喜びがこんなにも昂って、それが嬉しくて涙が出てきた。
「でも…そんな力いらないから、お前がいてくれるのが一番嬉しかったんだけどな…ココ…」
「主…」
急なハイテンションの直後のこの急降下。まだ大概に不安定なのかもしれない。でも、希望は見えた。その希望が、たとえ夕焼けにも似た、仄暗く闇が支配する光でも。
「ダービー。この作戦で、なんとしても使役したい神がいる。やっぱり、決行はギリギリになりそうだ」
「うむ」
「だけど…絶対、勝つから、誰も、失わずに…」
すみません、ちょい短めです。平日の朝方なんで。あと先日うちのバンドのギターとドライブしていたら、この作品のサントラっつうか、曲作ってみないかと提案がありました。自身の作品のそういう二次創作(?)は勿論凄く嬉しいのですが、更新に加え作詞とか…orz過労死しそうです。