~第三十九話~グレンの想いと暗闇のアキラ
ども、ハーレム物書いてたら実生活もハーレムじみてきた白カカオです。でもね、聞いて?こっちのハーレムには、恋愛のれの字もないの!逆に凄くない!?普通絡むでしょ、そこらへんの感情。全くないの!はぁ…泣けてきた。さ、気を取り直して頑張りまひょ
何が起こっているかわからなかった。
周りの食屍鬼の群れに気を取られ、他の仲間のことに意識がいかなかった。アキラが深手を負って駆けつけようとしたが間に合わなかった俺に対し、アキラの近くにいたココが次々と敵を蹴散らし、どんどん近づいていく。たまたまあいつの所が薄かったのかもしれないが、俺は、ココがあんな圧倒的な暴力的力を使っている所を見たことがない。
俺とココは幼馴染だった。キュートスから少し南西に外れた小さな村。そこが、俺とココが育った村だ。俺とココが二十歳になったとき、俺らがアカデミーに入学する為に、家族ごとキュートスに越してきた。村でもキュートスでも、俺とココは隣の家だった。
俺達の村の象徴である火の証。少なくとも俺にとって誇りだったが、ココにとっては重荷でしかなかったらしい。実際二人ともアカデミーを卒業し魔術師団入りは果たしたが、俺に比べ引っ込み思案なココは、戦場でも活躍できることはなかった。気弱だけど心優しいココ。俺にとって、ココは妹のような存在だった。
しかし、アキラと出逢ってココは変わった。自分に自信のを持てないところは相変わらずだけど、少しずつだけど、自分を前に出せるようになった。
『いつか、アキラ君の隣に並びたい』
それが、最近のココの口癖だ。そしてその口癖通り、あいつはアキラの副官になった。アキラが私をアキラの隊に入れてくれたと、俺の目の前ではしゃいでいたココが嘘のように、強くなった。そう、ココは俺の前では歳相応の女の子なんだ。好きな男の為に頑張り、好きな男の言動に一喜一憂する。そんな普通の女の子なんだ。
そのココが、制止する間もなく惚れた男のところに追いついた。その男を護る為に。まるで、これから起こる全てがわかっているが止める手立てはない…夢を見ているような感覚だった。そして、俺の予想通りそれは起こった。ココの小さな体をウラヴェリアの腕が貫き、アキラにその血飛沫がかかる。ウラヴェリアの腕を失いココがバランスを崩し、アキラがそこを抱きとめる。
不思議と、声も出なかった。体も動かなかった。体中食屍鬼に嬲られ、噛みつかれ、蹂躙されるが、目と意識だけがはっきりしている。
「ココーッ!はっ!?グレンッ!?」
シーリカの声が聞こえた気がしたが、何も反応出来ない。目の前の現実が、ただ信じられない。ウラヴェリアが何か言っているが、耳にすら入らない。
ココが、胸を貫かれて倒れている。その『事実』だけが頭に入っている。そして、自分には何も出来なかったことも。あれは、誰がどう見ても致命傷だ。そして俺もこのままダメージを喰らい続けると、命が危ない。でも、そんなことはどうでもいい。
俺は女好きな性格をしている自覚もあるし、そんな行動もしている。ナンパなんて毎日のようにしてるし。いつか刺されるんじゃないかとすら思ってる。でも、ココにはちゃんと女の子らしい普通の幸せを享受して欲しいと思っている。その好きな相手がアキラなのは若干複雑だけど、あいつも別に悪いやつじゃないし。見守ってやるだけの気持ちもある。いつだか、あいつの結婚式に出るときは泣くんだろうなぁっと、何故か思ったことがある。まぁその相手は少なくとも俺じゃないだろうが。…そんな妹同然のココが、今消えようとしている。
信じられない。ココのいない世界なんて、信じられない。兄貴分として、あいつを見守ってやることがもう出来ないなんて、信じられない。信じられない。でも、これだけ認識しているということは、受け入れていることと同じなんだ。ココが今…死に絶えてしまう…。
「黙ってろって言ってんだよクソ野郎がぁぁぁーーーー!!!!」
アキラの絶叫が聞こえる。そしてその直後、ココとアキラが数秒停止した。その後もウラヴェリアが何か言ってたような気がするけど、そんなことはどうでもいい。ココを失う…あれはもうアキラでも無理だろう。
唐突に、二人の時間が戻った。アレはやっぱり、アキラの力だったのか?しかし、ココの容態は改善されてない。
「…ほぉう?」
ウラヴェリアが下品な笑いを浮かべた。その足下でココとアキラの唇が重なるのが見えた。
「涙が出そうだねぇ…死に行く女が捧げる最期の接吻。実に、実に美しい愛の形だねぇー。待っててやろう。私は紳士なのだ。恋人達の最後のひと時、せめてそれ位の慈悲くらい与えてやろうではないか!」
大仰な振る舞いで演技をするウラヴェリア。滑稽な一人芝居など、見るに値しねぇ。不快なだけだ。 二三、二人のやりとりがあったようだが、アキラの腕の中、ココの存在が希薄になる。それも一瞬、ついに…ココの肉体…命の器が空になってしまった。
「ココ…最期、いい笑顔だったな。ホント、いい女になった…俺が言うんだ、間違いねぇよ…好きな男の腕の中で逝けて、幸せか…?」
虚空に向かって話しかけてみるが、勿論答えは返ってくることはない。わかってる。わかってるけど…。
「でも…でもな…」
「あっ…あああ…」
アキラの慟哭が、ようやく聞こえた。
「俺は…お前を失いたく…なかっ…たよ…クソッ!クソ…」
涙が俺の双眸を濡らし、景色がぼやける。俺の肉体も、いい加減限界が近づいてる。でも、その前に…ココ…ココ………
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
「ウラヴェリアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
俺の絶叫とアキラの絶叫が重なった。
「っ!?お前の目覚めが先か…グレン…『煉獄育ち』」
周囲が爆散すると同時に、何処からかカイムの声が聞こえたような気がした。
「今度は…どこだ…?これも、僕の世界なのか?ダービー」
一握の光もない、魔黒の空間に気づいたら僕はいた。今度はなんだ!僕は、あの吸血野郎をぶちのめさなくちゃいけないのに!
「…ダービー?」
いつも余計な所で出しゃばる、ダービーの声が聞こえない。お前、ホンット役立たずだな。
「おい!いい加減に…?」
空気が読めない相棒を恫喝しようとしたところで、気がついた。
「…いない?」
僕の右手から、ダービーの感触がなくなっていた。大剣も何処かにいってしまっている。
「おい…おい…!何処だよ!何処行ったんだよ!?ダービー!!」
急に心細くなった。こいつに依存していたとは思いたくはないが、こいつがいなくなったとしたら僕の力は半減以下だ。
「なん…なんなんだよ…ココ…ダービー…なんでいないんだよ…もういい加減にしてくれよ!!!」
「ここは生命の樹『隠されたセフィラ』ダアト。物質界マルクトと幽子界イェソドとその先、創造主が住まうケテルに繋がるパスに隠された、お前の為に用意されたセフィラだ」
急に前に人の気配がする。暗くて姿が確認出来ない。でも…
「ダー…ビー?」
僕の呼び方は違うが、確かにダビデの六星環、天国への扉の精…ダービーの声だった。
真面目な章なのに、カイムの台詞のせいで邪気眼が頭から離れなくなってしまいましたorz最後、ネタの出典はカバラです。一応次回、説明も入れながらお送りします。まぁ、私設定を多分に含んでおりますが…。エヴァのOPやまどかマギガに出てくる、あの生命の樹です。
それと先週行った投票の結果ですが…ダービーに決まりました!!…人一倍灰汁が強いキャラなんで、私自身も想定内の結果ではありますが(笑)ということで、この章が終わったらダービー外伝を考えています。箸休めだと思っていただければ…。皆さん、投票ありがとうございます!