~第三十七話~対立、絶望
白カカオです。クリエーター、ググってみたらそこそこ上の方にいて驚きました。そういやダービーとカービーって似てるよね。とかアホなこと考えてます。まだ、昨日の酒が残ってるのかなぁ…。そういや一人で梅酒のパック空けたし。
「俺の狙いは…お前だよ。アキラ」
そう言うと、黒騎士は次々と剣戟を繰り出してくる。
「クッ!」
壁の魔法で防ごうとするが、こいつの剣はいとも簡単にそれを砕いてくる。おいおい、こいつの剣の威力はおっさんクラスか!?つうか、
「なんで僕の名前を知ってるんだよ!!」
闇雲に反撃しようとするが、僕の剣技は至って素人だ。何の問題も無くかわされていく。僕は騎士じゃなくて魔術師だっての!その内僕が繰り出す適当斬撃の一撃を、そいつは唐突に受けた。この鍔迫り合いで押せれば、チャンスが生まれる。
「お前…黒城白夜という名前に覚えがないか?」
黒騎士が最中に話しかける。はっきり言って、こんな時に質問されても冷静に思い出す余裕なんかない。
「はっ?いきなり、何の事だよ?」
「お前の妹が生まれるとき、顔を出したM城県の啓愛館という児童施設にいた、お前と同い年の黒城白夜だ」
「待てよ!いきなり、んなこと言われてもわかんねぇよ!」
「…ふんっ!」
それまで拮抗を保っていたと思っていた力の駆け引きは、いとも簡単に弾き飛ばされた。
「グハッ!」
強かに背中を打ち、思わず呼気が漏れる。派手に吹っ飛ばされた割に、ダメージはない。その代わり頭がぐるぐる回っている。いきなり何を言い出すんだ?こいつは。妹が生まれたとき…啓愛館…児童施設…黒城…白夜?白夜?白夜…君?
「…白夜君なら僕の友達だ。お前、白夜君がどうした!?」
「その白夜君には、眉に傷がなかったか?」
そいつがするりと兜を脱ぐと、左眉に見覚えのある傷があった。白夜君が小さい頃、お父さんに灰皿を投げつけられ、そのまま消えてくれないと言っていた、あの傷と同じだ。
「な、なぁ…ダービー…。この世にさ、変化の魔法なんて都合の良いものないよな…?」
「あるにはあるが、それは妖怪変化の類だ。それ以外が使う変化は、大抵粗がある」
「じゃ、じゃあさ…これはどういう事だよ…。あいつ、白夜君と全く同じよころに傷があるんだよ、僕が知ってる…小さい頃遊んだ白夜君と同じところに。あんな傷、知らないとわからないようなものなのに…」
声が震えるのを抑えられない。まだ、他人かもしれない。まだあいつが白夜君の名前を出しただけで、本人だとは言っていない。ただ…僕を晶と知っていて、白夜君がいた県や施設まで正確に知っていて、白夜君が僕に打ち明けた、あの傷を持っていて…それはつまり…考えたくない。悪い冗談であって欲しい。だけど…。
「主、それは…」
「ふっ…脆いな、神谷晶。そうだ。俺が白夜だ」
ーーーザシュッ…
膝から崩れ落ちる。耳の奥で、自分が斬られる音が聞こえた。数メートル離れた位置から、白夜君が右手の蛇腹の剣を伸ばして僕を斬りつけるのが他人事のように見えた。不思議と、痛みはなかった。
「「アキラーーーー!!」」
「アキラ君っ!?いやぁぁぁぁぁ!!!」
晶が崩れ落ちる様を見て、周りの食屍鬼を蹴散らしながらグレンとシーリカ、ココが叫ぶ。助けに近づこうにも、周りからわらわらと集まってくる食屍鬼が許してくれない。
「クッ…まだ早い…まだ早いよ、ヘル・ブリングのマスター…!まだ、その時じゃない…」
同じく敵の群れを蹴散らす、カイムが誰にも聞こえないように呟いた。ヘル・ブリングのマスターが、トドメを差そうと近づいていく。
「クソっ!お前ら邪魔だぁぁぁ!」
「駄目!全然離れてくれないっ!」
「いや!いや!アキラ君!アキラ君っっ!!」
三人が感情のままに魔力を最大限に放出するが、次々に湧き出てくる食屍鬼の群れの勢いは衰えない。
ーーーふっふっふ…私の主もえげつないでしょう?それに比べて…セラスに回った貴方達は、随分甘くなったようね…。
突然グレン、シーリカ、カイムの頭の中にヘル・ブリングの声が響く。
「おい、なんだよ!?今の!誰の声だよ!!」
「ヘル…ブリング…貴女はぁぁぁ!!」
グレンとシーリカの絶叫が木霊する。そうしている間に、黒い騎士は晶の前に立っていた。
「………るじ…主っ!!」
頭の奥にダービーの声が聞こえる。どうやら軽く、意識が飛んでいたらしい。目の前には地面が広がっている。僕は、倒れているのか?
「意外と…他愛なかったな。じゃあな、晶」
声と同時に、背中に殺気を感じる。そうか、僕は白夜君に斬られて倒れていたんだ。
「「「アキラーーーー!!!!」」」
「っべ!!」
間一髪横に転がり、九死に一生を得た。自分の血溜まりの上を転がるのって、気持ち悪い。大剣を杖代わりに立ち上がる。白夜君が地面に左手の黒剣を突き刺した辺りに広がる紅が自分の血だと再認識すると、途端に痛みと貧血で意識が遠くなる。傷自体は決して深くは無いが、蛇腹の剣の斬られた際にその刃についた櫛で、組織の損壊が酷い。左胸から右脇腹にかけて広範囲で出来た創傷に、回復の魔法をかける。表皮と血管を繋ぎ合わせるだけしか応急処置がとれない。
「ふんっ…悪運が強いな」
白夜君が離れた間合いで地面から剣を抜きながら笑うが、それに答える余裕はない。ヘモグロビンが酸素を体中に届けるように、マテリアルの体は概念的に魔力も血液が体を循環させている。その血の量が、圧倒的に足りない。瞬間的に大量に失血し、失血性ショック死でもしなかっただけありがたいのだろうか。とりあえず、止血だけで精一杯だ。バルゴーでも呼べばいいかもしれないが、白夜君がそれを許してくれないだろう。とにかく、今はこの状況を打開する方法を考えないと…。
「くっくっく…ヘル・ブリング…白夜。楽しみは私にもとっておいてくれと言ったはずだが?」
突如、黒い影が僕と白夜君の間に割って入った。大柄な体躯に、黒いマント。周りには、大型の蝙蝠が羽ばたいている。
「ウラヴェリア伯爵…」
ダービーが苦々しく呟く。
「主…戦況は最悪だ…なんとしても…この場から脱出せんと」
「脱出って…どうやってだよ…」
息をするのも苦痛な痛みの中、僕は目の前の吸血鬼が先ほどの僕の血溜まりをすするのを見た。
「んぐっんぐっ…っふーーー!なかなかに旨いな。流石ヘブンズ・ゲートに選ばれた男だ。まぁ、これでお前が生娘なら最高だったのだがな」
…うるせぇよ処女厨が。
「しかし…やはり新鮮な生き血を啜ればまた格別だからな。感謝しろ。今度は私が直々に、木乃伊になるまで喰らってやろう」
…おいおいおい。僕は男に吸われて喜ぶ趣味はねぇぞ。
「待て!晶は俺の獲物だ。手ぇ出すんじゃねぇ」
白夜君の声を無視し、ドラキュラ伯爵が僕に近づいてくる。やっべ、本当に体に力が入らね…。
「…ふむ。普通にかぶりつくのもよいが、せっかくの久しぶりの魔術師の血だ。首を裂いて、贅沢に血飛沫を頭から浴びて飲んでやろう。鮮血に染まることの、なんと心地好きことか」
僕の少し手前、その長い腕のリーチなら僕に届く距離で、こいつは止まった。くそ…ここまで深手を負った白夜君よりもさらに、圧倒される威圧感。洒落になんねぇ…。
これから、バンド練習です。久しぶりにドラムが叩けると思うと楽しみで仕方ありません。おかげで、こっちもいいテンションで書けました。そして、友人からこの作品なかなかに酷評され、若干へこんでおります、こんなノリでも(笑)昔から、ポーカーフェイスには定評があるんで(笑)たしかに、もっと緩急つける表現力欲しいなぁ…。