~第三十六話~晶と白夜
ども、白カカオです。金曜日です。昨日色々ありまして、今日は親父に出社免除してもらいました。久々に、ぐっすり寝れました。あと、昨日の後書きで書いてた投票について…。期限決めるの忘れてました。期限は日曜日の日付が変わるまでにしたいと思います。外伝の執筆は…今回の章が終わってから取り掛かります。
脱力して後ろに仰向けに倒れこんだ僕を、柔らかい感触が包んだ。
「…お疲れ様です。大召喚師、アキラ様」
「「「あーーーー!!」」」
首だけ後ろを向くと、獣人族の集落からついてきた中の女性の一人、狐の獣人のコトリが優しく膝枕してくれていた。狐なのにコトリとはいかがなものか。しかし彼女はなかなか面白い経歴の持ち主で、遡れば東の獣人族の長、九尾と同じ血筋らしい。彼女の親の代が、九尾の得体の知れない存在感に恐怖し、こっちの集落まで逃げてきたということだった。ベースが狐の九尾の血筋なので、日本や中国系の力の行使をするそうだ。法力や妖術の類が得意分野なのだが、同じ日本の出身の僕が色々ありえないことをしているので面白がってついて来たのだ。巫女装束の割に、意外とお転婆なお嬢さんだ。しかし、狐耳に巫女装束って…狙ってるとしか思えない。
ちなみにさっきの叫び声は、シーリカとグレンとココ。…なんだよ?
「エリーちゃんがいるのに…アキラって意外と軽薄なのね…言ってやろ」
「アキラ…貴様、貴様…さっきの戦闘では俺がかっこよく締めを決めたのに…」
「あの子…アキラ君に膝枕を…うらやま…っ!許せない…あの女狐…」
グレンはこの際無視していいとして、シーリカ、すまん、それは止めてくれ。別に狙ってやっていることじゃないんだ。偶々コトリが受け止めただけなんだ。それと…ココ?なんか後半怖かったけどどうした?ほら、こういう時なんて言ったっけ?…笑えば、いいと思うよ。
ーーー主!巫女みこコナ○ス!ミコミコ○ース!
ダービー?そういうのは声を出して言おうな?それにしても懐かしいネタを…。つうかコトリナースじゃねぇし。
ーーー本当はネコミミ○ードと迷ったんだがな。コトリは猫じゃなくて狐耳である故。
だからどっちにしろ電波だろ。緑竜の時のフタナリと言い、お前は全属性網羅してるんじゃないか?
ーーー確かに先日ケモナーはグレンに譲るようなことは言ったが…いや、実際獣耳の巫女とはなんという破壊力っ!!クッ…このヘブンズ・ゲート、簡単に篭絡してなるもの…ふぅ。
おい………おい。最後だよ最後。何した。
ーーーさて、主殿?フタナリとか属性とか、何を馬鹿げた事を言っておるのだ?
お前っ!賢者になりやがったな!?つうか人の指に寄生してる分際で賢者とかこの変態指環が!!死ね!!今すぐ砕けて死ね!!!
「ふふ、アキラ様…よしよし」
何を勘違いしたのか、ダービーとの会話で顔をしかめる僕の髪に、コトリが優しく指を通す。
「お主ら…もうちょっと集中力持続できんのかね…」
セラトリウス団長が頭を抱えるのが、コトリの背後の気配でわかった。だって、残った蜥蜴人もグレンの炎でかき消しちゃったからもう勝利のファンファーレ流れてるんだもん。
「アーキーラー!!アンタ別に疲れてないでしょ!!!本気でエリーちゃんに言うよ!!?」
「ガハッ!」
待て、別になんもやらしい気持ちとかなかったんだぞ!?膝枕が寝心地よかったからこうしてただけで!…それがいけなかったのか。つうか、お前の一撃でダメージがやばい。
「…わかった、わかったって。だから別に浮気とか全くそんな気はないから、エリーに言うとかやめて」
「へぇぇ…アンタ無自覚でやってたんだぁ…最っ低!!」
「いいんじゃないですこと?別に一夫一妻制とは法律で決まってなくてよ?」
そう言うと、何とか立ち上がったコトリが僕の腕に抱きついてくる。巫女装束越しにわかるほど、胸の弾力が腕に伝わる。漫画なら、『ドキッ☆』とか言って顔が斜線で赤くなっているだろう。
「頼むから…少し自重してくれ、巫女…」
戦闘後に生傷を増やして経過すること丸二日。鬱蒼と木々が生い茂る中、目指すはウラヴェリア伯爵家。道中、何度か敵さんとご対面したが、エンカウントしたときの敵数が少なかったために危なげなく行軍を続行している。…流石にエルフゾンビの背後にドラゴンゾンビがいたときは一斉に退却したけど。それ以外は全く問題なかった。長年負の魔力にさらされて瘴気が充満しているこの地で、ドラゴンゾンビと戦う馬鹿はいない。総力でかかれば倒せなくは無いが、大局を見据えて余計な消耗は避けるべきだ。
「団ちょー。セラトリウス団ちょー。ドラキュラ城はまだですかー?」
「あと二日はかかるわい。ドラゴンゾンビのおかげで、大分遠回りをしたからの」
「えぇぇー。遠いー」
駄々をこねても早く着くわけもなく。ただただ進軍は続く。
「アレが…セラス軍か?そこまで強そうには見えんが」
「ふふ、油断は大敵よ、マスター。そしてあの子、あの馬に乗ってる子が、貴方のライバル。アキラ君よ」
黒衣の女が笑う。
「アレが…アキラ。アキラ?」
なんとなく、見覚えのある顔だった。たしか俺が孤児院に入って間もない頃、たまたま近所の子供が遊びに来たとき、友達もいない俺も分け隔てなく輪に入れてくれたあの男の子…面影が似ている。
『僕ね、妹が出来るんだ!妹がもう生まれそうだから、お母さんの実家があるここに来てるんだよー。生まれたらすぐ向こうに帰っちゃうけど…それまで遊ぼうよ!』
『なんで、俺も?みんなから、嫌われてるのに』
『だって白夜君、別に悪い事してないじゃん。悪い人でもないし。だから、ほら、行こうよ』
そう言って俺の手を取り、みんなのところに走っていった彼。両親が死に、心が瓦礫のように荒んだ俺。そんな俺に向ける、あいつの屈託の無い笑顔がやけに胸に刺さり、印象的だった。たしか…あいつの名前も晶と言った気がする。
「どうしたの?まさか、緊張してる?」
なんとなく馬鹿にされたようで、軽くムッとしてヘル・ブリングを睨む。
「んなわけあるか、今更。…行くぞ」
漆黒の天使を換装し、両手には二本の黒き魔剣。俺は、眼下を横切っていくセラスの軍隊に舞い降りた。
「んっ?」
「どうしたの?アキラ君」
急に明後日の方向を見上げた僕に、ココが疑問を向ける。
「いや、ダービーになんとなくよく似た気配がしたから…お前はずっとここにいるもんな?」
「あぁ、確かにここにいるぞ?我思う、故に我在りだ」
「どこのデカルトだ」
「いや、冗談だ。しかし…主も感じたか」
「っ?おい、まさか」
「うむ、近くに…我の同属がいるようだ。なぁ…ヘル・ブリング?」
「っ!?」
ダービーが誰かに話しかけた途端、頭上から急襲を受けた。馬の腹にかけていた無銘の大剣で剣戟を受け止めるが、バランスを崩し馬上から落ちる。急いで起き上がると、漆黒の鎧を纏った剣士が立っていた。隊列の中ほどを敵に襲われ、恐慌が広がる。
「アキラ君!!」
すぐ傍にいたココが火球を作り、目の前の剣士に放つ。
「えっ!?」
直撃すると思ったそれは、当たるには当たったのだが剣士の鎧に触れた瞬間に霧散し、または吸収された。
「おいっ!なんなんだよダービー、アイツは!?」
「漆黒の天使…物理魔法の如何に関らず、あらゆる遠隔攻撃を吸収する、私のコレクションよ。ねぇ?ヘブンズ・ゲート」
突然現れた漆黒の美女に、驚きを隠せない。つうか、今僕を襲ったあいつ…人間じゃなかったか?そいつを中心に、囲い込む騎士団のみんな。袋にするのは騎士道に反するが、そうも言ってられない位にこいつの放つ存在感は異質だった。
「喚くな囀るな。お前らはこいつらに遊んでもらえ。…食屍鬼!!」
そいつを囲った騎士団を、さらに囲うように食屍鬼が出現する。森の瘴気が、一気に跳ね上がった。
「みんなっ!」
「俺の狙いは…お前だよ。アキラ」
そう言うと、黒い剣士は瞬間移動してきたかのように僕の目の前に現れた。
昨晩ですが10万PV突破しました!!ありがてぇありがてぇ…いや、マジでありがとうございます。もののついでにめいさんの『勝手にランキング』を覗かせてもらったら、クリエーターはファンタジーで211位でした。本当に…ありがたいです。