~第三十三話~若者達の旅立ちの朝
ちゃおっす。白カカオです。予告すると、三週間後にデスマが確定して戦々恐々しています。夜勤明け、同窓会、バンド、夕勤。これがたった二日間に詰め込まれました。死にます。その間は更新勘弁してください。なるべく時間は作りたいですが…。
「アキラ…これ…」
一夜明け、小鳥の囀りが聞こえた辺りで、ようやく僕らはもぞもぞと起き出した。しばらく離れようとしなかったエリーだが、何かを思ったのか体を起こした。なんか、もう裸の恥じらいとかないっぽいな。女はたくましい。
「お守り…というわけじゃないけど、これでいいから私も連れて行って」
そう言うと、エリーはネックレスを外し、正面から腕を回し僕の首にかける。
「おい…」
「私が…ついてるから…」
エリーは僕を見つめるとその至近距離を利用し、そのままキスをした。僕は、もう抗う事をしなかった。互いの唇が銀の糸を引き、そのまま見詰め合う。
「あぁ…」
そう返事してもう一度唇を重ねようとすると、
「アキラ様ー。朝食の時間ですよー。あとエリー知らないかしら?あの子ったらどこに行ったのか…」
ノックもせずにドアを開けるセリーヌお姉様。お、おはようございます。に、二度目ですね、こうして顔を合わせるのは。こないだと確かによく似ていますが、決定的に違うこの二人裸というこの状況、いかがお写りでしょうか。あと、どうします?この状況。とりあえず、思考がまとまりません。
「アキラ様…ご朝食はもうお取りになったととらえてよろしいのでしょうか…?」
そう言うと、静かに笑顔でドアを閉める。
「タンマ!ストーップ!!待って、待ってくださいセリーヌ王女!食べてない!入ってないから今!!!」
僕の絶叫がセリーヌ王女に届いたかはどうかはわからない。届いてくれていることを切に願う。
「アキラ、寒い…ちょっと温めて?」
男が全裸で手をドアの方に伸ばし、その背中に女がピタリと抱きつくという恐ろしくシュールなこの空間。ダービーが起きてたら大爆笑してただろうな…。その日の朝食が何故か僕とエリーの分だけ豪勢だったのは敢えて言及すまい。今日が出陣だからとか、そういう理由だと思い込むことにしておく。しておきたい。…だから色々な思惑のありそうな視線で僕らを見るのは止めてください、皆さん。戦の前に、SAN値やらMPやらガリガリ減る。マジックでなくメンタルポイントが。
「では、いってきます」
「はい…いってらっしゃい、アキラ」
城を出ると、そのまま軍部を目指す。目指すと言っても城とは目と鼻の先なので、ものの数分もあれば着いてしまうのだが。その間、ダービーの無言がやけに気になった。気配はするんだが…。
「…アキラ、絶対お姫様と何かあったでしょ」
護国騎士団の精鋭を以っての出陣。城外までの道のりの間の壮行パレードの最中、隣の隊列にいるシーリカが話しかけてきた。
「なっ、なんだよ藪から棒に」
「だってお城の高見からアキラを見るエリーちゃん、なんかいつもと違って落ち着いてるもん」
「そっ…そんなことも、あるんじゃないか?」
おっ、女の勘、こえぇー…。全っ然わからんぞ、僕には。何が違うんだよ?
「あっ、首元にキスマーク発見」
斜め前にいるカイムが楽しそうに振り返って言う。
「おいっ、マジかよ!?」
「おい…マジかよ…」
カイムの前にいるグレンが、完全に引いた表情を浮かべる。…カイム、鎌かけたのか?謀ったのか?貴様…。
「お前、散々俺をロリコンだのなんだの言っておいて…なんて羨ましいことを…。俺の心は今、憎しみの紅蓮の業火が渦巻いているぞ…」
「グレンだけに」
「お前はぁぁぁ!!」
「馬鹿っ!街中で火炎流の魔法使うなっ!!カイム、ガロン!ローブに火がついちまったじゃねぇか!消火しろよ!」
「プックク…」
「クックック…ハッハッハ!」
「笑ってんなぁ!あーあ、穴空いてんじゃねぇか…」
戦闘前に味方パーティーの防御力減らしてどうすんだ…対物理用の装備だったんだぞ、これ…。
「ア、アキラ君、それ…」
「あぁ…エリーが。お守りだってさ。よくわかんないけど」
わしゃわしゃと頭を掻きながらココの質問に答える。もう…隠し立てなんて無理だし。
「そっか…そうなんだ…」
ココがそう言いながら下を向く。ココには刺激が強い話だったか?この流れ。ったくこいつらはデリカシーの欠片もない。
「さくばんはおたのしみでしたね」
「「ギャハハハハ!!」」
「うっせぇぞクソダービー!!いつから宿屋の親父になったんだお前は!!お前らも笑うな!」
「…やれやれ。馬鹿ばっかじゃ」
先頭を乗馬で闊歩するセラトリウスが頭を抱えていたが、その顔には成長した愛弟子達の姿に微笑が浮かんでいた。
「この僅かな期間で、本当に頼もしくなったものじゃ。これも…アキラ殿のおかげかの」
「なぁに老け込んだこと抜かしてんだジジイ。もうそろそろ寿命か?」
「なっ、何を失礼なことを言いよる、マドラ!」
「まぁ…頼もしくなったことに関しては同意だな。ガキの成長は早いからな。あの若造も、大したもんだ」
「ふっ…」
気がつけば、マドラにも似た表情が窺えた。この男も、憎まれ口を叩きながらも愛弟子達の成長を心から喜んでいるようだ。
「…ところでジジイ」
「なんじゃ?」
「本当にあの若造と嬢ちゃんが乳繰り合う仲になったということは、例の賭け、俺の勝ちだな。ほら、とっとと金貨六枚よこしやがれ」
「くっ…覚えておったか」
何やら軍部トップの秘密裏の賭博が、隊列の前方で決済される。
「ふん!これが三途の川を渡る六文銭にならぬといいがの」
「ケッ。金貨六枚じゃ銭よか上等な舟で渡してくれるだろうよ」
「はぁ…家内になんと今月の小遣いを無心すればいいかの…」
魔術師団を率いる大魔導士の、悲痛な呟きが零れた。…とても偉大な老師に見えない背中だった。
内容は聞こえないが、今から死地に向かうとは思えないキュートスを担う若者達の陽気に、高見にいるキート王家の皆は自然と安心感を覚えていた。
「…あの子達なら、大丈夫よね?」
「あぁ…。見てみろ、あんなに明るく真直ぐで、仲間想いで優しい子達ばかりだ。きっと、皆またこの地に帰って来てくれるよ。あの子達は…私の、我が国の誇りだ。勿論アキラ君もな」
王妃と見詰め合う国王は、最後にエリーに優しく微笑んだ。
「…はいっ」
昨日までの子供っぽさが消え、一人の淑女として一皮剥けたエリーの姿がそこにあった。
「アキラ君が帰ったら、祝言をあげようか」
「それにはまだ早いわ、お父さん。今はまだ、もう少し恋人気分を味わいたいの」
大人びたエリーの頬を、優しく心地好い秋風が撫でた。それは、あの日のアキラと散歩した夜の風に似ていた。
キート王家の面々の目の前を小鳥達が数羽、戯れるように弧を描き、何処かに飛んでいった。
空は快晴、風は微風。旅立つには絶好の日和だった。
まさかの予定してたところまで進まなかった件について。余計な肉付けばかりして進まないのが私の作品の真骨頂です。誰がDEBUやねん。…痩せよ、体も文も。どうすれば文才って身につくんですか?教えてエロい人。