~第二十三話~三人の夜《エリー編》
ども、ホワイトカカオです。…実はこの話書くの、今日二回目です。操作ミスっつうか誤ってキーに触れてしまい、まさかの全消去…半分くらい書いたのに…。マジ心が折れそう。原稿と頭の中がホワイトになりました。誰か、慰めてください。
初めて、アキラと旅に出た。ずっと離れず、くっついていた。ただ、アキラが本当に迷惑そうな顔をする前に離れたけど。家族と離れ、向かう先は『迷いの森』。でも、アキラと一緒だと、何も怖くなった。アキラが全部護ってくれる気がしたから。
ーーー僕は今回は何もしてないよ。
アキラは苦笑してそう言ったけど…話し合いを決定的にしたのは、たしかにアキラが連れて来た『妖精さん』だったけど。でもアキラがそんな策を考えなければ、あの森はずっとあのままだった。私達だけでは何一つ状況を変えられなかった。だけどアキラはあっさり打開してしまった。やっぱり、アキラは凄い。
アキラは、私がいないところで二回、命の危険に会っている。
一度目は東の森で緑竜と戦ったとき。幾度となく冒険者が挑み、また軍を派遣してもなお立ちはだかる凶大な古代竜。シーリカさんの伝達が城に入り、アキラが緑竜と戦っていると聞いたときは、目の前が真っ暗になった。魔術師団に入ったばかりのアキラに、敵うはずがない。そう思っていた、しかし、アキラは帰って来た。この国に、私の元に帰って来てくれた。しかも、あの緑竜を打ち倒して。アキラの姿が見えた時、思わず民衆の目の前であるにも関らず、私は抱きついてしまった。その行為に関してはあの後少し反省した。そして、あの竜のことを聞くと、「あいつは悪い竜なんかじゃない。あいつもただ、大切なものを護ろうとしただけだ」って、ちょっと怒られてしまった。護る為に…アキラと同じだと思った。だから、今まで何人もあの竜に殺されてきたけど、あの竜を恨む気持ちが薄れてしまった。そういえばシーリカさんは、城に伝達を飛ばすのと同時に、セラトリウスお爺ちゃんにも通信してたみたい。同時伝達は意識を二つに分けなきゃいけないから、普通の魔術師では出来ない技なんだって。シーリカさんって、すごい魔術師さんだったんだ。
二度目は、アキラがこっちの世界に戻ってくる直前。お父さんは外なる神とか言ってたけど、私にはよくわからなかった。とにかく、もの凄く強い神サマだってことは伝わった。あの緑竜よりも強い神サマだってことはわかった。私はすぐにアキラの元へ行きたかった。何も出来ないけど、行ってアキラの傍に居たかった。でも、お父さんに怒鳴られて止められた。私が行っても、アキラの邪魔にしかならないって。アキラに惚れてるなら、惚れた男を信じてやれって。悔しいけど、その通りだった。だから私は、ただ祈ることしか出来なかった。何も出来ない自分が悔しかった。だからせめて、アキラが勝ってきたら、笑顔で迎えようと思った。そして、アキラは勝って来た。緑竜を遥かに上回る、あの門の神サマに勝って来た。笑顔で迎えよう、そう決めたのに、アキラの顔を見たら色んな感情が止まらなかった。アキラが生きてて良かった、もう危ない事して欲しくない、そう考えると、涙が自己主張してきた。泣いたらアキラを困らせてしまう、でも私に心配ばかりさせて…そんなアキラを甘えて困らせてやりたい。そう思ったら、アキラの胸に飛び込んでいた。アキラは、随分困った顔してたけど、それでも温かいその手で頭を撫で続けてくれた。大好きな、アキラだった。
そして、今回。先の二回は、私がいないところで危険な目にあって、私はただ遠くで心配することしかできなかった。だから、今回は。せめて今回だけは誰に何と言われようと、アキラの傍に居てやると決めた。…そういう時に限って、危険な事はなかったけど。ただ、コボルトやスライムが襲撃してきたとき、森で歩いているとき。常に私を背に回し、攻撃が来るかもしれない方向から私を庇ってくれた。それはつまり、私がまだ役に立てないことの証明だったけど…だけど、アキラに護ってもらっているという安心感が、凄く幸せに感じた。アキラのことを、こんなに頼もしく感じたことはなかった。マドラおじちゃんに負けて、戦いではいつもギリギリで。だけど、アキラならどんな悪いモノからも私を護り通してくれるって、安心感があった。それだけで、この旅に出た価値はあった。ただ…ココちゃんの目が偶に複雑そうな視線を送ってきてたのは何でだろう?もしかして、ココちゃんもアキラのことが好きなのかな?だとしたら、私はどうしよう。偶に一緒に遊んでくれる、優しくて可愛いココちゃんのことは勿論好きだけど…アキラのことは取られたくない。こんな問題も、アキラなら解決してくれるのかな?でも、その為にはアキラに気持ちを伝えないといけないし…うーん…。
城に帰ってきてからもアキラのことが頭から離れず、私はベッドから飛び出した。別に疲れてないし、アキラも同じ城に住んでるんだから、いいよね?
息を殺し、アキラの部屋の扉の前に到着する。なにやら話し声が聞こえるけど、アレはダービーさんかな?そういえばダービーさん、ウォーレンの爺ちゃんに『呪われたアイテム』って言われてたけど、アレはなんだったんだろう?あの後のダービーさん、酷く悲しそうな声をしてた。確かにエッチで邪な事ばかり言ってるけど、あの二人はいつも楽しそうだし、ダービーさんもアキラの事大事に思ってることはわかる。だから、私もダービーさんのことは結構好きだけど…アキラはどうするんだろう?でも、今の声を聞く分には大丈夫そうなのかな?二人とも楽しそうだし。だから、私も輪にいれてもらおう。勇んだ私は、ノックもせずにアキラの部屋に入った。
「アキラー。お外で何してるのー?」
いきなり扉を開けたから、アキラがなんだか慌てている。その様子が、ちょっと可笑しい。そして、アキラの耳から何かぶら下がっているのが見えた。何となく、それを手に取ってみる。
「アキラー。これなぁにぃ?」
アキラはまだ慌ててたけど、少ししたら困ったような笑顔を浮かべて私の頭に手を置いた。
「これは、僕の世界から持ってきた音楽を聴く為の機械と、気分を落ち着ける為の吸うタイプのお香…みたいなもの?」
「機械って…機械のこと!?」
凄い!機械なんて、初めて見た!アキラの世界では、こんな小さくて薄い箱|(?)で音楽が聴けるんだ!…ん?そういえば初めてアキラに逢ったとき、アキラの傍にもっと大きい箱があったけど、アレはなんだろう?車輪が付いてたから、馬車かなにかなのかな?
「だね。まぁ…こっちにはない技術だから、隠してるんだ」
「なんで隠してるの?」
「ほら、無闇に向こうの技術を持ってきても、二つの世界のバランスを崩してしまうかもしれないだろう?だから、秘密。二人だけの、秘密な?」
アキラはそういうと、人差し指を立てて私の唇に当ててきた。『二人だけの秘密』という言葉の響きとアキラの指が私の唇に当たっているという事実に、私はただ頷くことしか出来なかった。たぶん、今顔が真っ赤になってる。冥の闇で、アキラに見えない事を祈る。
「主…そんなことしなくても、エリーのHPはとっくにゼロだぞ」
「何をわけのわからないことを言ってる」
確かにダービーさんの言ってる事はわからないけど、たぶん私の心中的には正解を言ってるんだと思う。気づかれてるのかなぁ…ダービーさんに、私の気持ち。お父さんにも、いつの間にかバレてたし。あっ!いいこと思いついた。
「じゃあさ、アキラ…。秘密にするから、一つ私のお願い聞いて?」
「…なんだ?」
アキラが、ちょっと警戒するような表情を浮かべる。ふんっ。いつまでも私を子供扱いする罰だっ!
「今日は、もう少しアキラと一緒にいたいな…」
「ほう…エリーもついに大人の階段を上る覚悟が出来ブヘァ!!」
「お前は何を言ってるんだ、ダービー」
最後まで言う前に窓枠に叩きつけられるダービーさん。痛そう…。実はダービーさんの言葉に少しドキドキしてしまったのは、秘密。
「まぁ一緒に話すくらいならな…そうだ、ちょっと外散歩しようか」
そう言うと、アキラは腰掛けていた窓枠から飛び降りた。
アキラに手を取られ、こっそり城の裏手から城門の外に出る。風が涼しくて、心地いい。夜空は、星達で埋め尽くされていた。
「昔な…恋人とこうやってよく夜空の下で散歩してたんだ」
アキラが懐かしむように空を見上げながら歩く。
「恋人…」
アキラの、恋人。私以外の誰かがアキラと一緒にいて、そしてその人はアキラに愛されていたという事実。何故かわからないけど、涙腺が泣きそうに震えている。
「うん。とっくに別れたけどな」
そんな私の事など知らず、アキラが笑いながら話を続ける。
「あいつは、寒いの我慢してたらしいけど」
クククとアキラが笑う。ダービーさんがいる、アキラと私を繋ぐ手をいつの間にか強く握っていた。わかった…私は今、嫉妬してるんだ。アキラに愛してもらえた女の人に、嫉妬してる。
「主、いくらなんでもデリカシーが…」
「エリーが二人目だな。こうやって一緒に歩く人は」
不意に言われた言葉に、アキラを見上げる。私より、頭一個半位高いところにあるアキラの顔は、凄く優しく微笑みかけてくれていた。
「えっ…」
「大切な誰かと、一緒にこうやって歩くって、やっぱいいもんだな」
アキラがしみじみと言う。虫の声が、とても耳心地良く感じた。
「アキラ…」
「んっ?」
アキラがさっきと同じ、優しい顔を向けてくれる。
「アキラ、今幸せ?」
『隣にいるのは、その子じゃなくて私だけど』っという言葉を、必死に飲み込んで、なんとか聞けた。
「あぁ。幸せだよ?エリーと…大切な、護るべき、護りたい人とこうやって、のどかな時間を過ごせてる今は、凄く幸せだ。勿論、ダービーの事も」
「大切な…護りたい人…?」
「うん。エリーは、大切な人だよ?何を今更」
アキラは何が可笑しいのか、声を殺して笑っている。
「その恋人よりも?」
思わず、値踏みするようにアキラに訊ねてしまう。答えを聞くのが、怖いのに。
「なぁに馬鹿なこと言ってんだ。あいつもエリーも、ダービーも皆、僕の大切な人だよ。あっ、ダービーは人じゃないか」
「主…別にそれ、面白くないぞ…」
ダービーさんの抗議に耳を傾けず、私に向き合って頭をグシャグシャと撫でる。髪がぼさぼさになるけど、気にならなかった。求めていた言葉と少し違うのが悔しいけど、悔しいけど…
「感じちゃう…ビクンビグバァッ!!」
私の心を読んだ(?)ダービーさんが小石で殴打されている。…懲りないなぁ。
「だからお前はな・に・を!」
「主!ギブ!ギブ!!」
そんなアキラの様子を見て、やっぱり思ってしまう。こんな、楽しそうなアキラが…大好きなんだって。そういえばディーン姉さんが前に言ってたなぁ。
ーーーエリー?恋は、惚れた方が負けなのよ?だからエリー。王女である貴女は、勝ちなさい。
後半はよくわからないけど、ごめんなさい、ディーン姉さん。私は完敗してるみたいです。そして、なんだか振り切ったような気がした。アキラが昔誰と付き合ってようと、今、この場にいるのは私なんだ。アキラの隣を独り占めしてるのは私なんだって。※ただしダービーさんは除く。
「ねぇ、アキラ」
「んっ?」
未だにダービーさんを殴打しているアキラに声を掛ける。なんかダービーさんのむせび泣く声が聞こえるけど、無視しよう。
「アキラ…もう、一人で危ない事しないで?」
「うーん…まぁ…善処する」
本当に困ったような顔を浮かべる。これは、絶対守るつもりのない人の顔だ。
「はぁ…じゃあさ、誓いのキスをして?」
「はぁっ!?」
「さっきの約束が守れないなら、絶対、絶対どこに行っても、誰と戦っても、生きて…私の元に帰って来るって…ずっと、私のこと護ってくれるって。アキラは騎士で、私は王女なんだから」
「あぁ、そういう事か。いや、僕は魔術師なんだけど…」
「いいの!護国騎士団に入ってるんだから、私の騎士様なの!ほらっ、早く片膝ついて、手を取って!」
「エリー…今勢いで告白に近い事言わなかったか?私のカ○ル様みたいな感じの単語で…いや、主なら気づかないだろうが…」
いいの!ダービーさん!今日は、これだけは絶対譲れない。私の、精一杯の勇気だから。それと、そんな十五年近く前にジャ○プでやってた短期漫画なんて誰もついてこれないでしょ!せめて、テニ○の王子様くらいじゃないと!…って気づいたら私がテンパってきたじゃないの!私こういうキャラじゃないのに!
「…わかった」
私の覚悟が、気持ちが伝わったのか、アキラが私の前で片膝を付く。
「エリー…キート=エル=リーナス王女。僕、魔術師晶は、どんな戦であろうともリーナス王女の下に還り、いつまでも護り続ける事を誓います」
心臓が爆発しそうなほど高鳴る私を余所に、アキラは恭しく私の差し出した手を取り、その甲に口をつけた。柔らかなアキラの唇の感触に、卒倒しそうになる。
「…ふぅ。これで、満足かな?お姫様」
アキラが訊ねると、ショートした思考が正常さを取り戻す。
「う…うんっ!絶対、絶対守ってね!」
「あぁ。じゃあ、そろそろ帰ろうか」
アキラが再び手を差し出す。その手を繋ぎ、いつまでも城に着かなければいいのにと、馬鹿なことを考える。でも詮無き事だとわかっているから、私は繋いだ手に全神経を集中させる。いつまでも、この手の温もりを覚えていられるように…。
※これを書いてるのは二十台半ばのキモオタです。えぇえぇわかってますよ!全然女心の描写なんてリアルに出来ませんよ!半ば願望ですよ!…泣きたくなってきた。さて、今日は時間が出来たらもう一話投下します。読みたかったら応援してください。…嘘です。読んでいただけるように頑張って書きます。