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クリエーター  作者: 如月灰色
《第一章 二つの世界》
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~第二十一話~作戦決行《後編》

ども、白カカオです。美容院行ってきました。頭がずいぶん軽くなりました。震災直後以来でしたからねぇ…伸びるわけだ。それより最近皆さんのリアクションが多く、えらい嬉しい思いをしてます。ありがとうございます。

「ぐっ…」


 ダービーが言葉に詰まる。駄目だ。今のはちょっと許せない。僕の相棒を今、愚弄しやがった。傷つける一言を言いやがった。


「訂正しろウォーレン!ダービーは呪われてなんかいない!」


「主…よい。今までタイミングがなく言わぬままだったが…事実だ」


「けどっ!」


「…して、お主らは何の為にこの森に来た?」


 ウォーレンが冷淡な瞳で僕らを見る。落ち着け…泣きそうなくらい腸煮えくり返ってるけど、ここで激情に身を任せたら、何のためにここに来たのかわからなくなる。落ち着け。こいつにほえ面かかせるのは、後で出来る。


「この森を、セラス側の人間に開放して欲しい。正確にはセラスの者にとって、『迷いの森』ではなく普通の森として受け入れて欲しい。お前達もわかってるんだろう?緑竜が倒れ、ガラリオン越えをしてきたギランのやつらにとって最早セラス側の防壁は、ここだけなんだ。お前達もセラスの地に住むものなら、わかってくれるだろう?勿論この森を開放してもらっても、好き勝手はしない。敵がこの地で暴れて助けが必要なら、こちらも手を貸す。交易だって、少しずつでもそちらに良い方向で考えていく。だから…頼む。」


 声を絞り出してなんとか理由を話す。しかし、腕を組んでいるウォーレンの仏頂面は変わらない。


「くだらん。こちらにとって、メリットがない。ギラン側からの侵攻に対しては、今まで通りで充分こと足りる。それに、この森は自然のままに生きている。交易などいらん。開放してみろ。いくらお前が大丈夫だと言っても、どこにも無法者はおる。そんなやつらを入れとうない」


「じゃあこの森に消えていった者は全て無法者だって言うのか!?そんなわけがないだろう!」


「ふん、そんなもん知らんわい。疑わしきは全て罰するのがワシの遣り方じゃ。そうして、幾年もの間この森を守ってきた。さて、交渉決裂じゃ。どうするのじゃ?お主。この森に来て、易々と帰れると思っておるのか?あの優しき緑竜を殺しおった、人間風情が」


 いつの間にかウォーレンの周りに、小人族や妖精が集まってきた。皆僕の腰上位の身長で、女の子の妖精はさらにそれより小さい。ゴクリという音と共に、騎士団の皆が晶を見る。


「ここに、エルフと別に僕以外の人間がいるだろう?」


「?」


「こいつらは、三十歳を越えてなお己の貞操を守り続けていることによって人外に進化した、僕の世界の妖精だ」


ーーーものは言い様だな。実際はただの童貞の連中だろうに。というか、人外とはちと酷いな、主。


「こいつらは僕が本来の力を封印している。しかし、ある一言呪文をかけることによって、この森の住人を恐怖のドン底に叩き落す程の力を発揮するだろう。たった一言、『お前ら、あの妖精と小人族(ようじょたち)を死ぬほど愛でていいぞ』っと言うだけでな」


 円卓の馬鹿どもの目がキラリと輝くと同時に、妖精と小人族に一斉に悪寒と寒気が走る。黒目がちのつぶらな瞳をした何人かの妖精が、体を震わせウォーレンや大人にしがみつく。涙目になって怯える彼女達、うぅ、なんかちょっと悪い気がしてきた。つうか、何もしてないのにここまで怯えられるこいつらもある意味すげぇ。


「こいつらは女子供が大好物だからなぁ!ハァーハッハッハ!!」


ーーー主、今の主完璧に悪者だぞ…。


「ふん、脅しか。しかし幻影ミラージュで惑わせてしまえば済む話じゃ」


「一つ教えてやろう、ウォーレン。人の力は想いの力。一途に研ぎ澄まされた想いは、どんな魔法をも貫く。それも、性欲なんて本能に準じた感情なら尚更なぁ!」


ーーー主、言ってて情けなくなってこないか?


 …五月蝿い。実際僕がヨグ=ソトースに勝ったのは想いの力だ。その後性欲が出てきたのはちょっと…アレだったけどさ。クソッ、あいつらのレベルに合わせた発言をすると、なんでか締まらん。一途な性欲とか…たしかに情けなくて溜息が出る。つうか、後ろの騎士団の連中の呆れたような顔がオートで再生される。クッ…耐えろ、僕。


「何をわけのわからんことを」


「それに…」


 バッグからヨグ=ソトースの球を取り出す。ダービーの力で抑えていた瘴気をあえて少し開放してみせる。こっちの世界に来て、何故か少し活性化したこいつを、抑え込むのはなかなかしんどかった。ダービーの魔力の媒体は、あくまで僕の魔力だし。エルフの一団からはざわつきが聞こえ、ウォーレンの眉がピクリと動く。


「それは…」


「僕がこの世界に来る前に偶々退治した、ヨグ=ソトース。外なる神だ。こいつは時間と空間を自在に行き来出来る門の神性だ。こいつの力を借りれば、簡単にここから出られるさ。さぁ。どうする?」


 ウォーレンが表情を歪める。チェックメイトだ。

 …不意に辺りに静寂と共に、ある圧倒的な存在感が現れた。


「ユニ…コーン…?」


 湖の畔に、淡く儚い光を全身から放ちながら、一頭の一角獣ユニコーンがどこからか現れた。ここは、ユニコーンの縄張りなのか?


「そうじゃ…清浄と処女を好むあの幻獣。あやつの恩恵を受け、わしらは生きておる。簡単に、ここを開放するわけにはいかんのじゃ…」


 なるほど…。溜息が漏れるほど美しいその姿は、見るもの全てを魅了する。そして生え変わり落ちた一角獣の角には、どんな怪我や病気も治す効果がある。それを悪用せんとする輩は五万といるだろう。

 一角獣がこちらに気がつくと、突然目の色を変えてこちらに突進して来た。


「いかん、主!あやつ、ヨグ=ソトースの混沌カオスの魔性に、この聖地が侵されたと思っておる!」


 それはヤバイ。あの突進を喰らえば、この場に居るどんな者でも命を落とす危険がある。急いでヨグ=ソトースに封をかける。


「っ!?拙い!フェアリーが!」


 こちらへの進路上に、妖精の女の子が二人挟まれてしまっている。突然の事態に、体が動かないらしい。クソッ!今からじゃ間に合わない!僕は交渉しに来たのであって、誰かに危害を加えにきたのじゃないのに!


「あっ!」


「きゃっ!」


 二人にぶつかると思った直前、巨体が二人を抱き庇い、弾き飛ばされる。思考が一瞬ついていかないが、アレは…


「香川さんっ!!」


 二人の妖精を庇うように覆いかぶさる、香川さんの姿があった。ヨグ=ソトースを封印し直した為、勢いを殺した一角獣は少しの間うろうろし、また水辺に戻って行った。


「お師さん…一つ勘違いしてますよ」


「香川さんっ!なんで無茶を…」


「僕達は女の子(幼女)を陵辱したいんじゃない。ただ儚くて、か弱くて、可憐な花のような彼女らを愛でたいだけなんだ。世界的財産(可愛い女の子)を身を挺して助けることは、そんな僕達にとって当然じゃないですか」


 香川さんが、誇らしげに僕を見上げる。よく見れば、怪我一つしていない。


「主…わかったぞ。死ぬほど意外だが、あやつらの想いは純粋過ぎる程に純粋で、愛に満ちている。そして、勿論童貞であるから身も清廉。一角獣が傷をつける理由がない」


 なんと…死ぬほど意外だが確かにそれなら納得だ。しかしこれで二人に何も無くて本当に、良かった。嬉しい誤算だが、その誤算のおかげでこいつらをこの森に放つという最終手段が使えなくなった…。どうしよう…。


「おい、指輪の主人。名は何と言う?」


 ウォーレンが何とも言えない表情でこちらを見る。


「晶…神谷晶だ」


「魔導士アキラ…ヘブンズ・ゲートの主人マスターよ。お主の提案、呑もう」


「ウォーレン…」


「何故オークを従えておるか疑問だったのだが、結果あやつらにこの森の者が護られた。あやつら、見た目は醜悪だが…あやつが子供達を庇ったとき、その瞳には正義の光が灯っていた」


 あの変態馬鹿に正義…?に、似合わねぇ。


「それと…」


「?」


「子供達が助かったとわかったときのお主。明らかにホッとしておったろ?口ではああは言っていたが、実際わしらに危害を加えるつもりはなかったのであろう?」


「何をそんな」


「主、もう無理しなくていいのでは?バレバレユカイだぞ」


「五月蝿い。色んな意味で」


「指輪の精…そしてアキラ。先ほどは侮辱してすまなかった。心から詫びよう。お主らに邪悪な魂胆は無いようだな。信用するに値すると判断した」


「ウォーレン…ありがとう」


 なんか憑き物が落ちたように、すっきりした気分だ。何とか無事に作戦を遂行出来た…。僕の策から随分乖離した流れになったから、内心焦ってた。そして、ダービーの件も謝ってもらったし。


「こちらも、必要以上にここに介入するつもりはないよ。ただ、有事の時はお互い助け合っていこう」


「ふんっ…」


 僕とウォーレンが握手すると、エルフと小人族、妖精から歓声が湧いた。良かった…これで目的が本当に達成できた。


 …で。


「お前はいつまで妖精抱いてんだ!このデブッ!」


 妖精から香川さんを引き離す。驚くべきことに、補助魔法で筋力を強化しないと離れなかった。本当に豚人オークなんじゃないか?この人。なんで一角獣、こいつを轢き殺さなかったんだろう。

さて、なんとかかんとか迷いの森編、終わりました。前置きの割りに、薄い感じになってしまった…すみません。そして、1万PVと1千ユニークのお礼を言おうと思ったのですが、その倍の数字のお礼を述べることになってしまいました。本当に、ありがとうございます。

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