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クリエーター  作者: 如月灰色
《第一章 二つの世界》
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~第二十話~作戦決行《前編》

昨日途中で寝落ちして更新できなかった白カカオです。だって家に着いたの零時半前なんですもん…ついつい話し込んでしまった。口から先に産まれてきたんだと思います。タラコだし。じゃあ鼻から産まれたらもっと鼻高くなったのでしょうか。あと、昨日今日とアクセス数が跳ね上がりすぎて驚いています。何か、悪いことでもしたのでしょうか。告白されたら真っ先に罰ゲームを疑う白カカオです。

ーーー主、主?


 香川とやら達を宿屋に任せ、我が主は城の一室に着くなり熟睡してしまった。まぁ短時間とはいえ、あの、ヨグ=ソトースと激戦を繰り広げたのだから仕方が無い。

 …というより幾ら才に恵まれているからと言って、人間が外なる神に勝つなぞ聞いたことが無い。主の一つ前の世代の世界、マサチューセッツ州のダニッチという農村で、ヨグ=ソトースと人間の間に産まれた異形を倒した学者連中ならいたが…それだって、異形は脅威だが外なる神ほどは勿論力はないし、一人ではなかった。それが…一部とはいえ、ヨグ=ソトースを、しかも一人で立ち向かい撃退しただけでも凄まじいのに、更に最後まで魔力が枯渇することはなかった。マドラ団長と対決したとき、あの緑竜を倒した後、魔力切れで意識を失ったあの主がだ。前代未聞どころの騒ぎではない。内包魔力量が人間とはデコピンとN2爆雷ほど差がある神々でさえ、アレを相手どるには相応の代償は覚悟する。いや、単体では勝つのも難しいだろう。外なる神とはそういう存在なのに…。


ーーー有り得ない。主はまだただの人間だぞ。だが……芽生え始めているのか…?主の心臓に…。


 我が主となる者に宿るという『無限の魔力(エターナル・マナ)』。何人もの主に仕えてきたが、終ぞそれを発動しえたのは我を生み出した創造主クリエーターのみ。まさか、主が…。しかし、それなら…死闘を重ねる内に主の中に無限の魔力が芽生えたとしたら、その種が成長しているとしたら…。マドラ団長の時は己が魔力のみで戦い気絶したが、我も手を貸したが限界を超えて魔力を供給して緑竜を倒したこと、本来なら自然に増えることがない魔力値が増えていたこと。そして瞬間的に、外なる神すら撃退しえるほど魔力が上がったこと。全てが解決する。そして主に待ち受ける幾多の試練に、必ずや主に必要になるだろう。しかし…


ーーー恐らくアレは、使えば使うほど成長するタイプの代物…。最後には、ヒトの枠を越えてしまう…主は、主は人間の主だからこそ良いのだというのに…主が人外の存在になってしまったら、我は…。フッ、我も大概に主に誑されておるな…人のことを言えぬ…。


 主と出逢い、信頼という名の心地好さを知った。人を大切に想うという優しく、温かな心を知った。人を護るという、強さを知った。創造主は人間に負の感情も等しく与えたが、それでも人間はこんなにも美しい。全て主が教えてくれた。口は悪いし扱いもぞんざいだが、本当は主は誰よりも優しい。常に繋がっている我には主の心の機微が分かる。本当は我の事を言えない位邪で小賢しいところもあるが、それも含めて主は『人間』そのものだ。だからこそ、我は主を気に入った。いや、好きである。心酔している。アッー!な方向ではない。断じてない。こんな主だからこそ、我は喜んで仕えようと思った。主の選んだ道なら、我は喜んで力を振るおう。そんなことは絶対にないが主が世界を敵に回すなら、我は誰にも負けぬ力をやろう。今では、主の力になることが喜びでさえある。…しかし、主が力を使えば使うほど、無限の魔力を増長させる。そして、その機会は何度も訪れるだろう。なんという皮肉なことか…。


ーーー我を創り、我が初めての主、創造主…貴方は、何を考えておるのですか…?これは、貴方が作り、貴方が望むシナリオなのですか?創造主…。何故、我が初めて心を開いた、アキラなのですか…?


 ダービーの呟きは虚しく月夜に消え、静寂だけが辺りを支配していた。




「さぁて、向かう前に一つ言っておく。お前らだ!円卓の馬鹿共!」


 ここはキュートス北の城門のすぐ外。昨夜はダービーが茶々を入れる隙もなく爆睡したから、すこぶる調子がいい。僕の前にいるのは、騎士団十五名、魔術師団十名、僕の世界の妖精ども。そして…


ーーー私も行く!二度もあんな心配させて、またお留守番なんて絶対に嫌っ!私も一緒に行く!今回は絶対譲らないからねっ!!


 …と、駄々をこねてついて来る事が許可されたエリー。生きて帰って来れる保障などどこにも無い迷いの森などに!!っと王妃は反対していたのだが、国王が僕がいるから大丈夫だと説得したらしい。…その件は王妃の心証に賛成。まぁご都合的に秘策が一つ増えたから、国王の言う事も実は正解なんだけどさ。馬鹿共の別に必要ない士気が上がるけど、そこは置いておこう。エルフ側の男衆の士気も、ついでに上がってるし。特に、グレンとかグレンとか、あとグレンとか。


「お前ら…お前らの為に今回の作戦は女性を多めに配置して貰った。一応連れて来た理由も理由だから、そこはお前らにちゃんとメリットを立てる。…皆にはもう色んな意味で申し訳ないけど」


 ちなみに今回は騎士団の内七名、魔術師団の内五名が女性で構成されている。出兵にしては有り得ない男女比だ。別に差別するわけじゃないけど、やっぱりフィジカル的な強さは男性に軍配が上がるから、このようなことは普通有り得ない。だが討伐や制圧が目的ではない今回は、残念キーパーソンの為にこの構成でよしとしようと判断した。セラトリウス団長も相当渋い顔してたけど、最終的に納得してくれた。マジ心広い、あのお方。


「だが…」


ーーーブォン…ザシュッ!!


 大地から薙刀を召喚し、地面に突き刺す。仕掛けは、地中深くの地質から金属分を凝縮、同じく地中のその圧力と熱量で成形、さらに時の魔法でその過程にかかる時間を短縮。出来た薙刀をその上部の土に働きかけエレベーターよろしくここまで運んでもらった。だから召喚と言っても実際は地面から飛び出してきたに近い。何で薙刀かというと、剣術の心得はないし、剣を使うような間合いだと即死亡コース。槍だと長い間合いで戦闘出来るが、かわされたらそこから切り返せるような技量がない。石突とか出来ないし。故にこちらも振り回してるだけでも中距離までは牽制出来て、槍よりも小回りが利く形状をしているからとしか言えない。うーん…今度来るときまでにもっと僕的に使いやすそうな武器調べよう。三国志あたりで。つうか今回別に白兵戦闘しないけどな!とりあえず武器を出そうと思って出て来たのが、これ。出した理由は、


「この世界でここの住人に下手に手を出そうとしたら、僕が叩き切る。それを元の世界で裁こうという事を思う人もいるだろうから、連帯責任。全員殺す。ただし鑑賞する分には自由。いいね?」


 この脅しの為。それ以上でもそれ以下でもない。だってこうでもしないと何するかわかんないし、こいつら。


「「「サー!イエッサー!!」」」


 全員が一切のブレも無く敬礼する。お前らは某隣国の兵隊か。その周囲では、呆気に取られている護国騎士団の方々。たぶん土魔法をこういう使い方するという、発想とか知識とかないんだろうなぁ…。魔法ってイマジネーションだし、イマジネーションは知識という下地がないと浮かんでこないから。

 ちなみに、僕がこの作戦の責任者。僕が立案した作戦っていうのと、たぶん竜殺しの名声も一役かっている。なんだかんだ言って、名声って時に便利なんだね。じゃないと、ぽっと出で異世界人の僕が隊をまとめることに納得するわけがないし。


「そして騎士団の諸君。今回の作戦は知っての通り、後のバリアスの奪還及び、ギラン側からの侵略に備えた、今後を左右する作戦だ。東の森の主が倒れ、ガラリオン山脈の守りが不完全になった今、悪名高いあの森を押さえられれば、戦況はグッとこっちに傾く。たかがこんなオー…妖精どもの護衛とはいえ、気を抜くな!こいつらはこんなだが戦闘技能はまるでない。お前らが護ってやってくれ。そして、迷いの森まで無事に着いたら、あとは僕が全てやってやる。絶対成功させてみせる。お前らがこの『竜殺し(ドラゴンスレイヤー)』アキラについて来た事、後世まで自慢させてやる!さぁ、僕らで未来への礎を築こう!!」


ワァァァァ!!!


 たかが三十人弱とは思えないほどの、エルフの騎士団の喚声が大地を揺らす。時々、セラスの地に平穏を!っと聞こえるがこれが彼らの掛け声なのだろうか。


ーーー主も大したものだな。この人数を前に淀み無く事を進めるとは。残念妖精で下がった士気を、上手く盛り上げる。…だが主よ。緑竜を倒したのは主であるぞ。


 こちとら検査官とはいえ、時には開発会議に出張して、プレゼンとかやってんだ。たかが一クラスにも満たない人数くらいなんだ。あと、細かいツッコミ禁止。


ーーー主はしょっちゅうツッコんでおるではないか。


 …五月蝿い。


「アキラ…かっこいい…」


 何暢気なことを言ってるんだエリー。今馬鹿どもの視線が向いてるのは、何故か僕の横に居るお前だぞ。


 そんなこんなで出発。今回は荷が少ないから、馬鹿どもと僕、エリーは馬車で移動させて貰った。道中、何度かコボルトとか、湿地帯ではスライムとか出て来たけど、難なく撃退してきた。いやぁ、ちゃんと見たことなかったけど、本当は強いねこの人たち。全く危なげない。状況が揃ってると、こんなに強いのか。…まぁ、所詮コボルトスライムレベルだけど。ちなみに格は、先のゴブリンよりやや下の程度。実はゴブリンは単体で僕の世界でのライオンとか熊とかより強かったりする。その下でも、僕らただの人間が遭遇すると簡単に命を落としかねない。毎年野生動物相手に何人もお亡くなりになってるじゃん?


ーーー主…どの口で『ただの』などと言うか。


 だからツッコミ禁止。魔法が使えないと、僕は無力な一市民だ。


ーーー主は町民だろうに。


 五月蝿い五月蝿い!田舎の何が悪い!最寄のコンビニまで普通自転車使う距離で何が悪い!ジャ○プはちゃんと月曜日発売だこのやろー!!


ーーー主…泣いておるのか?


 その日、僕は初めてダービーに口で負けた。こいつ口、無いくせに。





 その森は昼というのに闇を内包していた。正面から見ると、非常識な位高い木々。平原ばかりのセラス、ガラリオン間に、明らかにその森は異質で異様な存在感を放っていた。


「…よし、行くか」


 尻込みする団員らに気合をかける。生還率、ほぼゼロパーセント。この死の森を目にしては、当然の反応かもしれない。


「大丈夫、万に一つもないけど、そんな事態になったら、皆だけでも外に出すから。ほら、お前らも。円卓の馬鹿ども。もうひとつのお目当ての妖精は、この奥だ。」


 そう言うと、僕は森に足を踏み入れた。馬車の馬達には、少しの間お留守をしてもらう。この作戦の責任者と、自分で言ってはなんだが団員にしてキュートスの要人である僕が先導すると、他の皆もついて来る。円卓の馬鹿どもも重い足を上げる。優しく言ってやったのが利いたのかな?たまには飴もあげないと。


ーーーいや、主。たぶん敵が出るようなところに自分達だけで居れないだけだと思うぞ?


 あっ、なるほど。クソッ。飴やって損した。


 森に入ること数時間。僕達はベタな手に引っかかったようだ。


「クソッ!またここじゃねぇか!おいアキラ!どうなってんだよ!」


 グレンが僕に当たる。お前がご執心の、僕の腕から離れないエリーがジト目で睨んでるぞ?まぁお前の文句も無理ないけどさ。あとエリー。そろそろいい加減疲れたから離せ。


「たしかに疲れたし、もう頃合いかな?」


 歩き始めてから、どうやら同じところをグルグル回っていた僕ら御一行。ベタに、木に印をつけていたのが災いしたか。


ーーー主…、ベタとわかってて何故やるか…。


 お約束は踏襲しないといけないだろう?ほら、念の為バッグに入れてたパンをちぎったりして。


ーーー主はお菓子の家にでも行こうとしておるのか?


 うっ…そろそろ周りの目が痛い。足場の悪いところの行軍は、どんな予想をも上回るほど兵を疲弊させた。


「…いるんだろ?見てるんだろ?この森の主。そろそろ姿見せてよ」


 僕が虚空に笑いかけた途端、辺りの景色が崩れて開けた。幻影ミラージュか。木々に囲まれた、綺麗な湖の湖畔に僕らは立っていた。


「ホッ、小人族(ホビット)!?」


 意外なことにそこには、セラトリウス団長のように白髭を垂らした、小さな老人が立っていた。


「…正確には、小人族と妖精の混血じゃ。名はトルド・ウォーレンという。お前か、東の緑竜を倒した人間は」


 身長に見合わない威圧感が周囲を包んだ。


「なんで、わかった?」


「お主から、あの竜の匂いがする。気のいいやつじゃったのに…」


 うっ…やめれ。心が痛い。すっげぇ痛い。泣きそう。


「我が主を責めるのは止めよ、ウォーレン。あれは不幸な行き違いだ。緑竜も納得しておる」


「ほう、ヘブンズ・ゲートか…。持ち主を非業の死に追いやる。呪われたアイテムよ」



さて、中途半端なところですが、一端区切ります。次回、後編お送りします。…ちゃんと、明日に。

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