~第十七話~迷いの森、攻略への布石
ただいま帰りました、白カカオです。二週間ぶりのバンド練楽しかったです。…三人しかおらんかったけど。そして気づいた方もいるかと思いますが、文学ジャンルで「チーム「H」」という群像小説を連載し始めました。もしよかったらそちらもご愛顧いただけたら幸いです。
遠征から帰って来て初めて軍部に向かった僕は、セラトリウス団長に面会した。
「セラトリウス団長、先の遠征においては勝手な行動をとり、誠に申し訳ありませんでした」
先ずは謝罪。ダービーのせいで火に油注いじゃったし。
「う、うむ…。その件についてはもうよい。…して、また別の話があるのじゃろう?」
さすが団長。打てば響くとはこういうことなのか。いや、違う。
「話がお早いですね、では今後について僕から提案があるのですが…」
昨日の晩、ダービーと話していた事を説明する。
「うーむ…確かにアキラ殿の話にも一理ある。しかし、今それをするにはあまりにもリスクが大きいのではないか?急じゃし」
「勝算…というか、秘策はあります。そこで、曜が一周する間、暇をいただきたいのです。この作戦を成功させる為に…」
「じゃが、何も聞かずに決行するわけにはいかぬ。一端でよい。教えてくれぬか?」
まぁ一団員の言葉を全て鵜呑みにすいるわけにはいかないからな。
「えぇ…一端というか、ほぼ全容なのですが。この作戦には、僕の世界の妖精に働いて貰います」
「何っ!?アキラ殿の世界にも妖精はいるのか!?そしてアキラ殿は使役できるのか!?」
「使役というか何と言うか。まぁ…色んな意味で期待はしないでください。こちらに迷惑はかけませんし、作戦は絶対成功させてみせますから」
ニヤリと笑う。なんか楽しみで、そしてある意味凄く不安なプランだけど。
ーーー我もその秘策とやらは聞いてなんだが、主がこういう笑みを浮かべる時は、絶対に悪いことを考えておる時だ。我にはわかるぞ。
「うむ…ではアキラ殿が戻ってくるまで、全軍に作戦の準備をさせよう」
「いえ団長。今回の作戦は、森に着くまでの護衛程度で充分です。一個小隊くらいで」
「護衛じゃと?」
「えぇ。向こうの妖精は戦闘技能を持ってないので。ただ…メンバーの中に、シーリカとココ。この二人は入れてください。できれば女性陣気持ち多めで」
「むぅ…アキラ殿の意図が読めんが、『騎士王』と名高い国王が信頼しているアキラ殿じゃ。わしも信用しよう」
信頼じゃなくて信用ね…まぁこの国に来て日も浅い上に、こないだの遠征でやらかした僕を信用してくれるなら、有り難く受け取っておこう。ってゆーか、あの駄目国王、『騎士王』なんて大層な二つ名もってやがったのか。絶対嘘だろ。
その日の昼休み。
「アキラ、また面白そうなことやらかすんだって?」
「あぁ、そういや俺にもさっき団長から伝達があったな。迷いの森に行くんだって?」
「私のとこにも来たわよ。ココのとこにも。ねぇ?」
「うん…私も呼ばれた。なんか…アキラ君の推薦だって…?」
一緒に昼食をとっている、カイム、グレン、シーリカ、そしてココ。カレンおばさんの食堂は今日も大繁盛している。…大方、僕が『人間』のドラゴンスレイヤーとして更に有名になってしまったからだろう。失敗した。落ち着かない。
「ああえ(まぁね)」
口の中をいっぱいにしながらしゃべる。だって美味いんだもん、ここの料理。
「アンタ…飲み込んでからしゃべりなさいよ」
「あいはい」
ゴクリと嚥下したが、如何せん量が多かった…苦しい…喉が痛い…。
「はい、水」
「………ふぅ。ありがと」
ココが差し出してくれた水を飲み干した。あっ…。
「全部飲んじまった。わりぃ。僕の分あげるよ」
「えっ…あ…」
正面に座っているココに水を押しやる。なにやらココが顔を赤くして戸惑っている。
「あっ、ごめん。僕が口つけたやつだもんな。って言ってもココのグラスにも口つけてるし…おばさーん、グラスもうひ
「ううんっ、いいの。これ…ありがとね」
「…?そっか。ごめんおばさん、何でもない!」
なんだかわからんけど、ココがいいならいっか。
ーーー…主、主のそれは天然か?
何がだよダービー。
ーーーいや、完全に無意識なんだろうな。何でもない。
なんだよ、教えろよ。
「でも、何でまたシーリカとココなんだ?」
ダービーの話は棚上げになってしまったが、確かにグレンの疑問はご尤もだ。シーリカは優秀な魔術師だが、ココははっきり言って魔術師としては並だ。だが、今回の作戦にそれ以上に大事な要素をココは持っている。
「今回の作戦のキーパーソンは僕の世界の妖精だ。そして、その妖精を最も効率良く従えるのに必要なのが、シーリカとココなんだ」
「ふーん…よくわからないけど、後で説明してくれるんでしょ?」
シーリカが興味なさ気にフォークでサラダを食べる。作戦なんだからちったぁ関心持て。いや、特に説明することもない…あまり説明したくないや。
「うん。つうか、シーリカとココはいつも通り仕事してくれたらいいから」
「わかった!頑張るよっ!」
ココが目を爛々とさせて返事する。よし、いい返事だ。
「…で、俺達は?」
カイムが興味あり気に聞いてくる。目に何か別の意味で爛々とした輝きがあるのは、何故だろう?
「カイムとグレンもいつもどおり。僕の交渉がメインになるから。…半ば力押しだけど」
「ふーん。わかった」
グレンが肉の最後の一切れを飲み下す。ちゃんと噛め。
「…ということで、今日から少し元の世界に帰るから」
「アキラの世界の妖精か…楽しみだぜ」
グレンが拳で掌を叩く。
「…いや、期待しないほうがいいよ?」
…ということで、帰ってきました。我が家に実に一週間ぶりくらいなのだが、キュートスに行くときゲートの時間を止めてきたので、実際は週末の夜のままだったりする。カモフラージュの為に、しっかり汗かいてから帰宅。
「ただいまぁ」
「おかえりぃ…アンタ、そんな髭生えてたっけ?」
お袋が怪訝な顔をする。やばい、そんなに髭伸びるペース速くないから油断してた。肉体年齢までは止めれないこと、忘れてた。
「ほっ、ほら。一週間くらい走ってたから」
「…何わけわからないこと言ってるの?早くお風呂に入って寝なさい」
「はぁい」
ふぅ…忍法『わけわからないこと言って煙に巻く』成功したな。人は十の嘘で塗り固められた話より、一でも真実が混ざった話の方が騙されやすい。この場合、走ってたって部分が嘘にあたる。ふっ…自分の天才っぷりが怖い。
ーーー主、何も知らない人からすれば頭のおかしい人だぞ。
お前はお前の主を何もわかっちゃいない、ダービー。僕は…分の悪い賭けは嫌いじゃない。
ーーー…もっとまともなやりようがあったのではないか?
ふっ…昔の人はこんなことを言っている。『敵を欺くにはまず味方から』っと。
ーーー主は何と戦ってるんだ…。
風呂に入ろうとシャツを脱ぐと、ちょうど順子が風呂から上がってきたようだ。濡れた髪に、ほのかに石鹸の香りがする。僕は静かにダービーとのチャンネルを閉じた。
「お兄ちゃん!こんなとこで脱がないでよ…ってアレ?傷?」
…さすがにそこまでは想定外だ。異世界で戦争してました…なんて、それこそ頭がおかしい人だ。それでブラコンフィルターが解除されるなら、それはそれで喜ばしいことなんだが…兄妹の交流を永久に失ってしまいそうで怖い。
「いや、熊に襲われてさ。戦って勝って来た」
この場合、熊の部分が嘘。正解は竜。事実は小説より奇なり。
「何無茶苦茶なこと言ってるの。…よくわからないけど、危ないことはしないでね?」
うう…色んな意味で心が痛い…。でも、ウチの家族があまり立ち入って聞かない人間ばかりでよかった。安心して風呂に入れる。
ーーー主、いきなりチャンネルを切るなんて酷いではないか。
順子のあんな姿お前に見せたら、後でナニに使われるかわからんからな。
ーーー実体の無き我に、ナニに使えるわけなかろう。
…お前に実体がなくて、ホント良かったよ。さて、月曜日が楽しみだ。これが上手くいけば、あっちの作戦は九割方成功したようなもんだ。ジャ○プも読めるし。
ーーー主…いい歳こいて未だにそんなもの読んでおるのか。表紙になんて書いてあるかわかっておるのか?主。週刊『少年』ジャ○プと
うるさい。僕は少年の心を忘れないんだ。
ーーー主、世間ではそれを『大きいおともだち』と呼んでおるらしいぞ?
ええい!お前の知識は偏りすぎだ!
なんとか、日付が変わる前に投下できました。間に合った…。明日はリアルにジャンプの発売日なので楽しみです。…出来れば早く金曜日になって欲しいです。給料日まで遠い…。