~第一話~ファースト・コンタクト
こんにちわ、白カカオです。クリエーター目を通していただいた方、感謝です。(主に私が)悪戦苦闘しながらも頑張って書いていきますので、応援してくださいませ。
「ゲー…ト?」
晶の前に現れた異形のそれが、空間に黒い渦を広げるように段々と、確実に成長していた。呆気にとられている晶を尻目に、ようやく人の丈と同じ位の大きさでそれは安定した。
「よい…しょっとっ」
突然の事態に硬直している晶を展開は待ってはくれず、中から見た目10代後半であろう少女が現れた。もう何がなんだかわからない。状況を整理しようとも、超展開過ぎて頭がフリーズしてしまっている。いや、テレビで見たエルフの国王が出てきた時と同じなのだが、まさか自分の身に降りかかろうなんて雀の涙ほども思っていなかった。
「確か…この辺で魔道反応があったはずなんだけど…あっ」
鈴の音のような澄んだ声で独り言を呟きながら何やら探っていた少女は、呆然と立ち尽くしている晶にようやく目がいった。あっと言う声に晶は思わずビクッと反応してしまう。
「ねぇねぇ、ちょっと聞きたいことあるんだけど…」
体が一瞬動きを取り戻すと、ようやく半分方思考が蘇る。背丈は、晶の肩位であろうか。綺麗なブロンドの長い髪に、淡い紫のドレスがよく似合う。まだ幼い顔立ちをしているが、髪から覗いた長い耳が否が応にもあちら側の存在であることを主張している。おそらく、いや十中八九エルフだろう。エルフ族とは、皆容姿端麗なのだろうか。体つきは華奢だが、どことなく気品のようなものが窺える。
「もしもーし」
目の前で手を振り振りされ、現実に戻される。どうやら半分も思考は回復していなかったらしい。
「はっ、はいっ!?なんでしょう!?」
思わず声が裏返る僕。自分でもビックリするくらいみっともない声だ。
「この辺にさ…指輪、落ちてなかった?父上からの頼まれごとで探しにきたのだが…」
指輪ってこr
「あああああああああーーーーーーーーーーーー」
返答より早く、エルフの少女が声を上げる。声の大きさに、またもビクッとなる。
「ちょっ、これ、外れないの?てゆーか!なんで貴方がつけてるの!?」
「えっ、いや…つい。なんとなく。ごめん、君のだったの?それなr痛い痛い痛い痛い!」
謝罪の言葉も聞かず、僕の指から指輪を外そうとする少女。つうか指もげるって!
「ハッ…ごめん、ちょっと気が動転してて…」
気が動転された相手に指をもがれましたなんて、カタギじゃない人の世界でもないぞ?たぶん。いや、悪いのはたぶん僕だけど。それより何より、驚くべきはその力。亜人種は力が強いって設定は間違いじゃなかったんだな。…身をもって知りたくは無かったけど。
「とりあえず、事情を説明して貰えるかな?」
なんか少女にとって大変な事をしてしまったみたいだし、僕も謝罪なりするならきちんと何に対して謝らないといけないかは聞きたいところだ。
「えっとね。貴方がつけてるその指輪、私の国の秘宝の一つなの。私のうちの蔵から盗み出されてしまって」
待て待て、いきなりついていけない。とりあえず、何で国の宝が小さな娘っこの家の蔵に何かあるんだ?
「あっ、その前に自己紹介しなきゃね」
怪訝な顔をした僕に気づいたのか、いきなり自己紹介を始める少女。
「私の名前はキート=エル=リーナス。エルフの国、キュートス国の国王、キート=ベイン3世の娘です」
皆さん、お元気ですか?神谷晶です。僕はなにやらとんでもないことをしてしまったようです。泣きそう。
ここはゲートの内側。そうです。僕は今、アストラル界に向かっています。車、鍵つけっぱ。
と状況をしごく簡単に語ってみたものの、言葉以上に大変な状況です。今、リーナス姫…
ーーーエリーでいいよ。みんなそっちで呼んでるから。
エリーに手を引かれて光の向こう側に向かっています。美麗な少女に手を繋がれて一部の方々は羨ましがりそうですが、僕にとっては半ば強制連行です。いや、それで正解かも知れんが。
事の次第は、あの場でエリーが説明してくれた。賊から盗まれた指輪を取ってきて欲しい、との国王様、エリーのお父上からの勅命でやってきたというエリー。護衛も連れずなんと無茶なと思ったが、
---だって護衛の人準備長いし、マテリアル界興味あるし、これも修行だと思って一人で来ちゃった。
…とのことだ。行動派すぎるだろこのお嬢様。つうかなんの修行だ。何を目指してるんだ。
そして、指輪の事も。強力な加護を施されたこの指輪は、「ダビデの六星環」という、あの「ソロモンの指環」と対をなす物らしい。後者とは対称に、こちらは神とか天使とかそれらの眷属を使役出来るのだというが、本来なら儀式やら何やらして装備する物らしい。勿論そんな事せずに簡単に嵌めていた僕を見て、エリーは二重の意味でビックリしたんだとか。そんなもん僕の理解からフライアウェイしてるが、とっくに。しかも主を選ぶというこの指輪、いくらサイズがピッタリでも普通はするりと抜け落ちてしまうそうだ。なぁんで僕の指に嵌まってんのかねぇ、こいつ。
まぁそんなことより、そんな大儀を背負ってやってきた一国の姫様が、人懐っこい見た目相応の女の子で良かった。これが忠義に厚い騎士様とかなら、その場で切り伏せられてもおかしくない。いやぁ僥倖僥倖。
「ホントは来る予定だったよー。忠義に厚い騎士様」
…運命の神様、マジ感謝します。貴方のおかげで私めのか細い命は救われました。出来ればこんなことに巻き込んで欲しくなかったが。向こう側の世界にいるみたいだし、会ったときはその件について小一時間話し合いたい。
で、運命の悪戯で指輪が外れなくなってしまった僕ごと、お父上の御前に連れてって事情を話すとのことだ。僕の意思の介入一切無し。ガッデム。なんてこったい。
「さぁて、着いたよー。ようこそ、我が国へ」
…思ったより騒がしい。ゲートの中を徒歩数分、初めて見た異世界の街はイメージ的にはまんまロープレの城下町。ちなみに僕らが出てきたのは、門の外の森の出口。僕らを見つけた門番がいきなり切りつけてきたが、エリーの制止で事なきを得た。まぁいきなり外の世界に出てったお姫様が、今度は異世界の男と手を繋ぎ戻ってきた。…なんて良からぬ想像をされても無理もない状況だ。事実はエリーが手を引いてるんだけど。
それにしても、さっきはエリーの毅然とした態度にも驚いた。
ーーー下がりなさい!この方はキュートス国の客人として参ったのだ!剣を収めよ!
やっぱ国の中では王女様なんだなぁ。少しばかり感心する。そしてもう一つ。まぁ視線は痛いほどに感じるが、王族がこうして街中を闊歩できるのは平和な証拠だ。子供達がエリーにまとわりついてくるが、当のエリーは軽く相手にしつつも城までの歩みは止めない。この世界、この国に対する好感度が少しアップする。活気があり、王族も大衆に慕われ、そして子供たちは皆笑顔だ。微笑ましい限りではないか。
そうして一人感心していると、城が眼前に迫っていた。…でけぇ。白い煉瓦を基調に作られた城。こちらの中世ヨーロッパの城と遜色無いかもしれん。
向こうではエリーが兵士達と何やら話している。困惑した表情を浮かべているが、最後に渋々頷くと、二人一緒に中に入れてくれた。まぁ当然のやりとりだわな。
「すぐに迎えが来るから、アキラはここで待っててね」
二人きりになるとエリーは言葉を崩し、そして調度品たっぷりな客間に通すとせかせかと出て行った。お姫様には色々と準備があるのだろうと大きく構えて待つことにしたが、いざ一人取り残されると不安が大きく自己主張してくる。元の世界でも異国の地に一人で行ける度胸もない。どーせチキンだよ。ケッ。
…待つこと十数分、体感にして数時間。仰々しい鎧を来た兵士が迎えに来た。
「カミヤ・アキラ殿。お迎えに参りました。さ、こちらへ。国王様と姫君方がお待ちです」
歳は晶と同じ位だろうか。エルフは長寿な種族だからもっといっているんだろうが、とりあえず青年騎士に連れられ廊下を歩く。
「あの…エリー、じゃなかった。リーナス姫はどちらに?」
「リーナス様は国王様とご一緒です。さぁ、着きましたよ」
朱に塗られた大きな扉が開いていく。たぶん一般人で初めて、今僕は異世界の国王に謁見する。
早くも晶が異世界に踏み入ったわけですが…安西先生、もっと文才が欲しいですorz
晶が手にしたダビデの指輪ですが、完全に私の創作です。どの本見ても(たぶん)載ってないので、あしからず。たぶんこういうのちょいちょい出していきます。
それでは、ご意見、ご感想お待ちしてます。