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クリエーター  作者: 如月灰色
《第一章 二つの世界》
19/121

~第十六話~エリーの手料理、そして…

さて、早いものでクリエーター書き始めて二週間弱経ちました。白カカオです。ほぼ何も考えずに始まったこの作品、ほぼ毎日更新していますがちょっと練ってから投下した方がいいのかなぁとか思ってみたり。この設定いいんじゃね?って思って書いたものが意外と創作の王道行ってたとか、割とショックな出来事があったりして。熟練の読者さんからすればどうなのかと、内心気になってます。つうかこの作品どんな風に認知されてるんだろ…。周りの目が気になるお年頃なんです☆…えぇ~…とりあえず、しばらくはこのペースを保つんで安心してください。

 その日、城の情報はカオスな事になっていた。


「ありのまま今聞いたことを話すぜ…」


「我が軍が敵勢に押され、敗走しているじゃと…?」


「なっ…何を言ってるかわからねーと思うが、おれも何を話されたかわからなかった。頭がどうにかなりそうだった…」


「なんと、避難ルートは緑竜の森だと!?」


「しかも、緑竜を倒しただと!!?」


「ハルマゲドンだとかラグナロクだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…」


「誰かその髪を逆立てたやつを黙らせろ!!!」


 …侮れないとはいえ敵の下級種族の軍勢には敗走し、伝説レジェンドクラスの緑竜には勝利するという矛盾。その状況をその場で正確に把握していたのは、千里眼でその光景を静観していた国王。唯一人だった。


「アキラ君…君は…」


 何かを言いかけ、フッと笑い胸の内に秘める国王。


「我々は、とんでもない男を味方にしてしまったのかもしれんな…」


 国王の呟きは、錯綜する城内の誰の耳にも入らなかった。




「アキラ殿!そなたは何を考えておる!!」


 僕達がキュートスに到着して一晩明け、城に用意して貰っている部屋でくつろいでいた時、いきなり団長二人が入ってきた。珍しく息を巻いているのはセラトリウス団長の方だった。…で、ハイパー説教タイム。


「そなたは後衛のはずじゃろう!?それが前線で戦闘し、それもあの緑竜と!!奇跡的に…今でも信じられんが本当に奇跡的に勝てたから良かったものの、本来なら軍罰どころの話ではないぞ!」


「いいじゃねぇか、勝ったんだし」


「ええい!そなたは黙っておれ!マドラ団長!」


 …早く終わらねぇかな、これ。


ーーー主…自分のしでかしたことに反省の色無しとは、随分と 図太くなったものだな。


 だって、今疲労とか精神的虚脱感とかでそれどころじゃねぇもん。一晩で回復しないとは、僕も歳をとったもんだ


ーーーまぁ主がしたことは、言葉が見つからないくらいとんでもないことだからな。


 …でさ、そんな状態でもちょっと考えたんだけどさ、ダービー。


ーーー何だ?


 僕、今度は西の森にも足を運んだ方がいいと思うんだけど。


ーーー主…あの緑竜を倒したからってまた大きく出たものだな。


 違う違う。そうじゃなくて、理由を聞け。


ーーー言うてみよ。


 バリアスのことなんだけどさ。あのままにしとくわけにはいかないから、いずれ奪還しに行くじゃん?そこであそこらへんの地理的なことなんだけど。


ーーーふむ…。


 あそこって、背後にガラリオン山脈、西に迷いの森、東に緑竜の森で立地としては天然の要塞に近いものがあったと思うんだよね。でも僕が緑竜を倒しちゃったから、東側の守りはもう期待できない。そしてガラリオン山脈もあくまで中立だから、守りは完璧じゃない。今回だって信られないけど、山越えの説が濃厚なんでしょ?そうすると最後は西。ここが崩されれば、あそこは丸裸に等しいわけじゃん?


ーーー主、あそこが丸裸とはなんと卑猥な…


「五月蝿い!…あっ」


 セラトリウス団長が青筋を浮かべてプルプル震えている。その後ろでは別の意味でおっさんがプルプル震えてる。これがチワワとかあのゲームのスライムとかなら助かるんだけど…。てゆうか、軽い既視感デジャヴを覚えてるんだけど…


「あの…セラトリウス団長?…寒いとか泣きそうとか、加速の魔法で残像作ってるとかそんなことは


「真面目に聞かんかああぁぁぁ!!!」


「ギャハハハハハ!!!」


 その後、セラトリウス団長の『超』説教はエリーが夕飯の呼び出しに来るまで続いた。うん、自業自得だということは自覚してる。ごめんなさい。


「まぁ…今回のところは緑竜の討伐という大手柄に免じて、これにて処分無しとしよう」


「ハッ!爺さんの長話は下手な軍罰よりきついぜ」


「…ふん!これは最初から最後までアキラ殿の自業自得じゃわい」


「違えねぇ。小僧!俺は竜殺しの件、褒めてやるぞ。初めての竜殺しが古代竜ったぁ大したもんだ!」


「気持ちはありがたく受け取るけどよおっさん。一度でも難しい竜殺しを、平然とやってのけるあんたのがよっぽどバケモンだ。何だよ幾ら竜と比べて個体値が低いワイバーンっつっても、三桁はねぇだろ三桁は。どこのシモ・○イヘだ」


「誰だよそれは。まっ、後は王女のお嬢ちゃんとよろしくヤってろや」


「字体を変えんな!!」


 バタンと閉められる扉。長かった…。まぁ団を統べる者としてはセラトリウス団長の説教は至極当然なのでちゃんと反省する。僕はそこら辺はわきまえてる人間なのだ。頭空にしてたらちょっとは疲れ取れたし。


「主が殊勝な態度を取るとは面妖な…」


「馬鹿タレ。そんな展開でこないだは緑竜が本当に出やがったんだ。アレはグレンのせいだけど」


「主…それは絶対違う。流石にグレンが可哀想だ」


「さて…着替えて食堂に参ろうかね。エリーの作った料理か…」


 正直、ここまで期待と不安が拮抗した食事も珍しいと思う。ローブを脱いでジャージに着替えるか。


「…なぁダービー」


「なんだ主」


「廊下の方から、不吉なドタバタ音が聞こえるのは僕の気のせいか?」


「いや、私にも聞こえる。しかし主。ここで動作を止めるのはこの後のフラグを受け入れる覚悟が出来たということか?」


 今の僕の格好は上半身裸で下はパンツ一枚。俗に言う、パン一だ。そんなことを誰に言うでもなく説明したくなるほど、このタイミングはある意味芸術で、ある意味確信犯的だった。


「いや…でもまさか。お前が期待する、そんなベタなラブコメ紛いの展開には…。そう、これは賭けなのだ。僕が運命という強大な力に打ち勝つ器なのか否か。見てろよ運命の女神。その幻想をぶち


「アーキーラー!おーそーいーっ!!」


 開け放たれた扉から、弾丸もかくやという速さで僕に突撃して来る一条の閃光、もといエリー。


「ごぶふぉあっ!!」


 そんな質量がそのまま破壊力になる勢いを生身の僕が受け止められるハズがなく。見事に押し倒される。


「エリー?待ち遠しいのは分かるけど、もう少し落ち着い…」


 なんというベッタベタな展開。エリーに押し倒される僕。更に僕の格好は上半身裸…っつーかパン一。そんな光景を目に入れ、名状し難いオーラを背中から放つ、セリーヌ王女。


 …勝者、ダービーアンドベタな運命の女神チーム。




「…美味い」


 意外ッ!それはッ!味付けッ!未熟だがッ!こってりと…あっさりッ!押すところは押しッ!引くよころは引くッ!基本的だがッ!それだけで口内に広がる絶妙なハーモニーィィィィィl!!!ブラボー!おぉブラボー!!


「シェフというッ…!聞けば答えてくれる道しるべッ…!そしてッ…!アキラの部屋にあったッ!料理の漫画ッ!見逃さなかったッ…!私はッ…見逃さなかったッ…!アキラにッ…なんとしてでもッ…美味しいと言わせるというッ…『覚悟』ッ…!充分じゃないかッ…それだけでッ!充分だッ!」


「まさかッ…!期待以上だッ…!僕がッ負けるなんてッ…!侮っていたッ…!エリーはまだ子供だとッ…!侮っていたッ…!敗北ッ…これは必然の敗北ッ!!」


 ぐにゃあああ。


「勝ったッ…!あのッ!難攻不落と言われたッ…!アキラにッ!ついにッ…!私は…ッ!」


「………何やってんのよ、アンタ達。色々混ざりすぎて元ネタがさっぱりですわ」


 ディーン王女の冷静なツッコミに、思わず言葉につまる僕とエリー。エリーは結構頑張ってたのか、相当恥ずかしそうだ。


ーーー主に合わせて必死に覚えたんであろうな…実に健気だ。主の姉君のあけすけなお姉さんキャラや、シーリカのような姉御肌キャラもいいが…エリーのような元気っ子が見せる健気な可愛らしさもやはり捨てがたい…。


 お前は何のルート選択をしてるんだ。キャラとか言うな。実体を持たないお前にそのチャンスは永遠に来ないから安心しろ。


ーーー口惜しや…。我も体さえあれば…。


 …こいつこれ以上実体がないことでいじれば、そのうち本当に実体マテリアル化しそうで怖い。いつの世界も、性欲エロの力は時としてとんでもない行動力を発揮するからなぁ。主に駄目な方向で。

 しかし…


「本当に美味い」


 食材は基本的に肉、魚、野菜とパンだが、味のバランスが本当に素晴らしい。魚料理を敢えて大味にし、意外にも肉料理であっさりとした繊細な味付けにする。スープも何時間煮込んだのだろうか、野菜の出汁と肉のこってりとしたエキスが、存分に存在感を発揮している。本当に作ったエリーの気持ちが伝わってくる、いい料理だと思う。朝早くからバタバタ慌しい気配がしてはいたが、本当に僕の為に時間をかけて作ってくれたものだ。悔しいけど感激してしまう。それだけではなく、初めての料理でシェフの指導にここまで応えれるのもなかなかの才能だと思う。これなら、将来どこに出しても立派なお嫁さんになるだろう。王女が料理をするのかどうかは知らんが。


「ありがとな、エリー」


 隣で僕が咀嚼する様を嬉しそうに眺めるエリーの頭を、わしゃわしゃと撫でる。目を細めて、実に気持ち良さそうだ。だからお前は猫か。


「これでどこに嫁いでもやっていけるな」


 さっき思ったことを口に出してみるが、瞬間エリーの顔に翳が差した気がした。


「……そっか…。ありがと、アキラ」


「んっ?どうした?」


「ううん、何でもない。アキラは…」


「んっ?」


「料理が出来る女の子って、好き?」


 なんか上目遣いで、値踏みするように僕を見る。…どうした?


「あぁ。奥さんの美味い料理が待ってるってだけで、浮気もせずに真っ直ぐ家にも帰れるってもんだ」


 …実際浮気出来るような甲斐性もねぇけどよ!ケッ!


「そっか…なら、もっと頑張る」


「おぅ!頑張れ!」


 エリーの顔に、幾らか光が戻ったようだ。ホント…なんなんだ?


「アキラ様のアレ、天然なのかしら…?」


 セリーヌが傍で食べる国王と王妃に訊ねる。


「うーん…アキラ様ってたしかにこういう空気って読めなさそうですわね」


 苦笑する王妃と、思案顔の国王。国王はたぶん父親として、晶の友人として悩んでいるのだろう。


「あそこまでいけば、最後までしてしまえばいいのに、エリー…」


 セリーヌが先ほどの光景を思い出しながら、どちらに言うでもなく呟いた。


ーーーなぁダービー。何この和やかだけど微妙に緊張感ある空気。


ーーー主…頼むから色々気づいてくれ。我の方が気が気でない。


 もう…何なんだ。


 エリーの手料理で振舞われた晩餐会は、一応成功という形に治まった。




 人間、腹が膨れれば眠くなるもんだ。ベッドへダイブする。


「ダービー。さっきの続きなんだけどさ」


「さっきと言うと?」


「バリアスの話」


「ほぅ」


「忘れてたくせに偉そうにほうとか言うなこのヘッポコ指輪」


「主、主。話を進めてくれんか?」


「あぁ、悪い。でだ。ガラリオン山脈の抑えも東の森も当てにならなくなった今、せめて西だけはせめてこっちで確保したい」


「にしても主、勝算はあるのか?相手は生還率ほぼゼロの迷いの森だぞ?」


「まぁ…なんとかなるさ」


「主…それは見切り発車というものでは」


「でも…やらなきゃいけないだろ?あそこらへん一帯がギランに落とされると、一気に向こうに流れが傾く」


「むぅ…」


「まっ、最後に勝つ為には今少しでも無理は必要かなってとこだ。早いうち、団長に掛け合ってみるか。なんなら単独で行ってもいいし」


 この先のことを方針が決まったら、急に眠気が襲ってきた。明日はそろそろ軍の方に顔を出さないとなぁ…。



やっと、晩餐会書けました。だんだん外堀が埋まってきた感じになってます。ここでい○ご100%みたいにどんでん返しも面白いかなぁとか考えてみたり。それではまた明日!

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