~第十五話~帰還、その後
ども、白カカオっす。まず、前話があまりにも酷い上に今日は夜勤前で短めっていう体たらく…申し訳ないです。ホントすません。煙草は吸います。…頭働かない。なんとか皆さんが楽しめるレベルを保てるように書きます。
どうやら、また僕は気絶していたらしい。なんか戦闘の度に倒れるって、どうよ、この虚弱っぷり。もっと魔力が欲しい。もしくは周囲の魔力を効率良く内部変換できる機能。
ーーー何を言っておる主。はっきり言ってあの神に近い古代竜を倒すために、ダメージのフィードバックに耐え、ほぼ無休でレオに魔力を送り続けた主ははっきり言って規格外だぞ?我も正直驚いてる。
って言ってもなぁ…。
ーーーなに、国に帰れば主は英雄だ。上手いもの食って、美女を侍らせて存分に気分転換できるだろうに。それまでの辛抱だ。言うであろう?遠足はお家に帰るまでが遠足だと。
こんな遠足は全力でご遠慮願いたい。そしてお前、前から思ってたけど発想が俗物過ぎる。別に今は美女侍らすつもりもないし、そんなことしたら休めないだろう。
ーーー休めないとは…主の絶倫っぷりならきっと大丈夫だ。
見たことないだろ!僕のそういうの!いや見せるつもりもないけど。それに…
「何が英雄だよ。僕ら、負けたんだぞ…」
そう、これは敗走なのだ。緑竜の森を無事に抜け、さらに討伐までしてしまったから錯覚もやむなしなのだが、バリアスでは完全に負けたのだ。集落は占拠され、バリアスは敵軍の新たな拠点と化してしまった。こっちの本命の戦果は、ドワーフの保護、それだけだ。
ーーードワーフの保護だけ…充分ではないか。民は生き延びておる。生きているなら、またやり直せる。奪われたなら、奪い返せばよい。戦いに、一度に多くは望めんよ。主にはまだわからないかもしれんが…それに、主は瓦礫の中からドワーフを救い出した。重傷のドワーフを助け出した。主がいなかったら、あのドワーフ達も今を生きていなかった。主の成したことは、充分胸を張るに値することだと思うぞ。
そうか…とりあえず、ありがとうダービー。次は…絶対勝つ。ただ今は、負けたことが悔しい。これは個人的な感情だけど、やっぱり負けるのは嫌だ。
ーーー主、意外と負けず嫌いなのだな。覚えておけ、主。女の子はそういう『おとこのこ』な部分に
あー、いらん講釈ありがとう。ブンさん。今それ、いらない。
ーーー主…ブンさんはやめてくれ…。我が悪かった。
「そろそろ着くわよ、アキラ。目、覚ましたら?」
隣にはシーリカとカイムが付き添ってくれている。僕はあの後、またもおっさんに担がれ、何故かその場に残っていたこの二人に介抱されて今に至る。緑竜との戦いで精根尽き果てた僕に、馬の手配もしてくれた。…なんであの場にいたか聞いてみたら、
『そんなの、アキラが心配だからに決まってるじゃん』
とカイムは言っていたが、絶対嘘だろ。おっさんと一緒にいたところから、もしかしたらこの二人もおっさんの竜狩りに加担していたのかもしれない。なんか、何て言ったらいいかわからないけど、この二人雰囲気が変わった気がする。
ーーーそれはきっとデキておるのではないか?この二人。
…お前はそういうフィルター通さないと人間関係を見れないのか。シーリカ、彼氏いるだろうが。
ーーーなに、略奪愛とか、三角関係とか、男女がいればどんな愛憎劇が背景あるかわからんだろう。もしかしたらカイムがシーリカに横恋慕している可能性もあるやもしれん。シーリカは美しく、よく出来た女傑だ。
…お前のせいで人間不信になりそうだからやめれ。修羅場とか嫌いなんだ、僕は。元の世界に戻っても、お前には絶対昼ドラは見せん。
「いてっ!」
騎乗でだれてる僕をシーリカが頭を叩いた。
「アンタが起きないからよ。ほら、もう国着くわよ。馬から下りて、シャンとして。アンタ、竜殺しの英雄なんだから」
お前はかーちゃんか。わかったよ起きるよ。ただお前と、ダービーにも言っておきたい。
「僕の竜殺しは英雄なんかじゃない。平和に生きていた老竜の命を奪った、ただの殺人者だ」
「アンタまだそんなこと言ってるの?」
「そうだ主。あの竜は、最後に主に感謝していた。その者にそのようないじけた態度なぞ、愚弄だぞ。今は無事に帰還出来た喜びでよいではないか。あの竜も主を恨んでなどおらん」
「おっ、指輪の聖霊!貴方も良いこと言うじゃない」
「ではシーリカ、我に褒美としてそなたのおっぱ
「黙れ色情霊。被害を受けるのは僕だ」
隣でやりとりを傍観していたカイムが笑う。普段は胡散臭い笑顔だと思っていたが、今は何故か救われた気がした。つい、僕からも笑みがこぼれた。
「アキラ、今なんか失礼なこと思ってなかった?」
「なに、気のせいだよ」
「「ぷっ…アハハハハハ」」
「…なに?あの二人」
「さぁ…我も偶に、主がわからなくなる時がある」
今は、ダービーの言う通り命があることを喜ぼう。無事に帰って、約束を守れた自分を誇ろう。だって、ほら。
「アキラーーーー!!!」
開門して僕が見えた途端、エリーが抱きついてきた。
「ただいま、エリー」
「おかえりっ!アキラ!」
頭を撫でてやると、僕の胸に頭を擦り付けてくる。お前は猫か。
「エリー、ごめんな。せっかくの手料理、食べれなくて」
「いいの。料理はまた作れるから。だから今晩はアキラが無事帰って来たお祝いと、入団のお祝いにいっぱい作るね!」
「いや、今日はまず休みたいかな…。明日、明日な?」
「ぶーーー」
「それと…公衆の面前だから、やめような?こういうの」
なんか、視線が痛い。民衆の僕の付近の人達は王女のこの姿に、唖然としている。
「あと、アレン王子にもちゃんと、おかえり言おうな?」
ハッとして周囲を見回すエリー。そして実兄なのにスルーされたアレン王子。なんか…すいません。
「では…大儀であった。魔術師アキラ」
「はっ。ありがたきお言葉」
赤い顔を隠して取り繕うエリー。本人的には大真面目なのだろうが、さっきの今では茶番以外の何ものでもない。リーナス姫がこんなガキンチョってのが、周知になったな。
「おかえりなさいませ、お兄様」
「あっ、あぁ…」
視覚効果でアレン王子の顔に汗とか見える気がする。なんとも複雑そうな顔を浮かべる王子。当事者の僕としては非常に気まずい。
「ちょっと、何よさっきのアレ」
シーリカがわき腹を小突いてきた。
「アレがお城の中の、ガキンチョなお姫様だよ」
「…デキてんの?」
「ブッ!!」
口にしかけた水が霧になった。人間、本当に噴くんだな。たしかに普段からお茶吹いたとか、コーヒー返せとか書き込んでるけど。
「…んなわけあるか。よくわからんけど、ただ懐かれてるだけだ」
「ふーん…私にはそうは見えなかったけどね…」
「僕はただの愉快なお客さんのオジサンだよ。…年齢、負けてるけど」
「私にはお姫様、完全に乙女モードに見えたけど…まぁアンタがわからないならいいや」
「なんだよ一体…」
ーーー言ったであろう?主。主は鈍感な主人公体質だと。
「だからお前までわけわからないこと言うな。ほら、グレン。行くぞ」
「なんでアキラばっかり…ブツブツ」
ほら、意味分からないことで固まってないでさっさと歩け。…んっ?
『魔術師初の竜殺し『アキラ様』ご帰還!!討伐したのはあの『緑竜』!!』
…なんで広まってるんだよ。足元の号外を拾い、溜息をつく。
「…なぁ、ダービー」
ーーーなんだ?主。
「落ち着いたらさ…魔法のこと、お前のこと、あと、僕自身のことも、教えてくれよ。僕はもっと、もっと強くなりたい。僕のせいで…僕の為に命を散らせてしまったあの緑竜の為にも。もうすれ違いで、あんな戦いしたくないよ。すれ違いがあんな不幸を生むなら、それをねじ伏せる力が欲しい。あの時だって…僕にそんな力があったら、緑竜も死なずにすんだかもしれない」
「主、それは驕りとというものだ。人は全ては救えない」
「でも!」
「しかし、主がそんな無茶を言うようになったことは、正直嬉しく思っている。だから、我は手を貸そう。我の力の全てを主に託そう。主なら、きっと誰も到達出来なかった高みに辿り着けるやもしれん。主が主のような人間で、我は嬉しいぞ」
「ダービー!!」
嬉しくて、色んな感情の昂りで泣き笑いになってしまう。
「ほれ主。主のお姫様がこっちに手を振っておるぞ。応えてやってはどうだ?」
「…だから公衆の面前でそういう誤解を生む表現はやめれ」
一瞬で体の力が抜けるようなことを言うが、相棒がこいつで良かったと思う。調子こくから絶対聞かせないけど。…伝わってんだろうなぁ。本当に不便な機能だ。内心で溜息をつき、笑顔で大手を振っているエリーに応える。アイツ、慎んだんじゃないのか?まぁいいや。今は、このキュートスの日常を楽しもう。
慌てて書いたんで、なんかまとまりのない回になってしまいました。…いつか、納得いく話を書けるときが来るのでしょうか。…もうそろ時間がやばいんで、それでは皆さん、また次回で。