~第十四話~才能(ちから)の片鱗、それぞれの心
こんち!白カカオDeath!改めて前の話見てみると、誤字とか表現とか酷いなぁ…少しずつ直していきます。ご指摘あったら是非教えてください。あと前話のお詫び。アレン王子も晶グループです。騎士団にいたこと忘れてた…。それでは、本日のお話、どーぞ!
「なぁ…これ、本当にこないだ入った、しかも魔術のマの字も知らなかった人間の戦闘だよな…」
グレンが遠巻きに木々の間から激震地を眺めている。
「うん…戦ってるの、アキラ君だよね…後衛のハズの」
同じ火の魔術師のココがぽつりと返事する。二人とも、開いた口が塞がらない。
「本当に、何者なんだ。君は…」
更に遠巻きにアレン王子が険しい顔で見つめる。あれは本当に、我が城で毎食父上とエリーと漫才を繰り広げている、あのアキラ君なのか…?
何故騎士団の王子が傍観を決め込んでいるかというと、目の前の非現実的な光景に理由がある。
一つ、緑竜とアキラの戦闘は明らかに人外の領域だ。たかだか一般人に毛が生えた位の騎士が参戦したところで、晶の足手まといになって状況を悪くすれど、何の利にもならない。
一つ、彼の上役である『竜殺し』マドラ団長は、その少し離れたところで騒ぎで集まってきたワイバーンを無双中である。それも嬉々として。ちなみに緑竜に近づいたワイバーンは、戦いの余波に巻き込まれ何体か無残な亡骸を晒している。こっちも、とても普通の騎士が挟み込む余地はない。
したがって、アレン王子やグレン、ココを含めた他の騎士は何もすることが無いのである。
「…私たちは、セラトリウス団長の所にドワーフの人たち送ってこようか。どうせ、隣のルートだし、周りのワイバーンや竜、ここに集まってるし。向こうの方が逆に平和だろうから。シーリカ君、セラトリウス団長に伝令を」
「はっ、はい」
アレン王子の提案に、目の前の現実のせいで表情が半ば抜け落ちたシーリカが気もそぞろに返事する。
「アレン王子、向こうは承諾したとのことです。…行きましょうか」
「ごめん、シーリカは俺と一緒にここに残ってくれる?」
微笑の形から全くぶれないカイムがシーリカに声をかけた。
「伝令役がいないと、戦いが終わった二人を、誰が出口まで先導するの?」
「よくもまぁいけしゃあしゃあと…」
シーリカが苦々しい眼差しでカイムを見るが、それも尤もな事なのでしかたなくカイムの話を飲む。
「…ということですみません、王子。私はカイムとここに残ります」
「そうか…お気をつけて。主にとばっちり食わないように」
「はい…」
アレン王子はシーリカに同情の視線を送ると、他の一行を従えセラトリウス団長のところへ向かう。背後に轟音のBGMを聞きながら。
「…で、私を残した本当の理由は何?」
アレン王子ご一行の背中が見えなくなり、シーリカがカイムに振り返る。カイムの笑顔の中身が変わる。
「特にないよ?ただ、君には今後の為に見て貰った方がいいかなってなんとなく思っただけだから。ねぇ、『隠者』?」
「やめてよ。その二つ名が嫌いで、身を落としてここにいるんだから」
「ふふふ、ほらまた形勢が変わった」
カイムが楽しそうに晶の方に向き変わる。悠久の時を魂に刻んだ青年は、人智を超えた戦いを目に、ただ笑っていた。
「アキラ…君はやっぱり素晴らしい」
「があああぁぁぁぁ!!」
幾本もの木々が、倒れる。
「ぬうぅぅ!!」
地面が土煙を上げ、抉れる。
「グルルルルァァァァァ!!!」
衝撃で、爆風が生まれる。
緑竜とアキラの戦いは、森の被害を拡大させながら、尚も一向に治まる気配が無い。召喚された『獅子宮』レオが、緑竜を組み敷く。負けじと緑竜も息吹で応戦する。アキラは目一杯の精神力を使い、レオを援護する。その場に、普通の人間は存在しなかった。
「レオっ!!」
何度目になるかもわからない魔力供給をレオにする。
「アキラ!我はまだ大丈夫だ!休んでるがよい!」
「へっ!左手なくなってんやつがよく言うよ」
つい今しがた、組み合っていたレオに緑竜が、離せと言わんばかりの息吹をかけた。緑竜を突き飛ばしその勢いで体を半転させかわしたレオだが、このとき余計な欲目を出しやがって…一撃引っかこうとした矢先にその毒の息吹の残滓に触れてしまい、緑竜に浅い創傷と引き換えに左手の掌半分を失う結果になった。召喚した神のダメージは使役者にもダメージを与える。神の召喚は、レベルが高い魔術師ほど自分と神を切り離し、個として独立させ顕現出来る。逆にレベルが低い者ほど双方の干渉が強く、ダメージが連動し易い。つまりエ○ァの逆パターンか。シンクロ率は低い方が良いという。僕が疲れたり痛いと、レオも疲れたり痛い。逆も然り。…ということでレオがダメージを受ける度に、僕の体がボロボロになる。左手、すっげぇいてぇ。どうなってるのかわからないけど。手の状態を確認するより、ダメージを回復させた方が賢明だ。見たところで痛みが治まるわけでもないし、ならさっさと治して、僕もレオもすっきり回復!!としたほうが二人の為だ。
「ならば回復したら体を休めよ」
「そうしたいんだけどねっ!」
ちなみに回復魔法は僕自身にかけて、レオには魔力供給というのが今のスタイルだ。完全な肉体を持たない魔力で構成されたレオにとって、魔力がたんぱく質であって、エネルギーなのだ。つまりこっちが魔力を送れば、勝手にレオが肉体の再構築をしてくれる。ただ、すげぇ疲れるんだよ、僕が。そして魔力を使って自分の疲労とかを回復させるというスパイラル。そしてガリガリ削られて行く精神。ダービーを介して魔力を送っているおかげで増幅されてはいるが、ジリ貧なことには変わりない。たぶん、今僕を支えているのは守るべき者の姿と、戦いの中で自身が研ぎ澄まされていく感覚。更にダービーの干渉を強く受けている分、ダービーの今までの記憶による戦いの経験が体感して吸収できる。僕は精神力をコストに膨大な経験値を手に入れた!
「おっと!」
レオの攻撃の余波がこっちまで襲ってきた。レオの、インファイトとヒットアンドアウェイを使い分けた巧みな戦術で創傷がだんだん大きくなっていく緑竜に比べ、僕からガンガン魔力を吸い取って回復するレオ。慌てて属性魔法で周りの土から質量を頂戴し、吹き飛ばされないように重心を低くする。ほら、おっさん。ワイバーン二体そっちに吹っ飛んでったぞ。頼んだ。
また暴風が俺の体に叩きつけられる。小僧と緑竜の戦いは、依然落ち着く様子を見せない。あいつらの騒ぎに誘き寄せられて、次々とワイバーンどもがこっちに来る。屠った数は、三十を越えた辺りから数えるのを止めた。これは近くのやつらが軒並み集結してきてるな。ご主人様を守る為にーってか。ケッ!大層なこった。
アイツらの戦いに参戦できないのだけが残念だが…ありゃヒトの戦いじゃねぇ。まぁ、文字通り竜と神サマが戦ってんだからそうなんだろうけどよ。こっちはこっちで楽しませてもらうわ。俺様に傷一つつけられねぇ三下のゴブリンやオークどもの相手はもう飽きた。そろそろ下位の竜どもも来るだろう。久しぶりの竜狩りだ。やっぱり強いヤツと戦うのは気分がいい。そいつらを倒して最後に立っているのが俺だから気持ちいいんだ。目の前のアイツら?あぁ、あれはもう地上の戦いじゃねぇから駄目だ。それにアレはアイツの獲物だ。人の手つきの獲物を横取りしてまで勝ちたくねぇ。
そういやあの小僧、さっきワイバーン二体吹っ飛んで来た時…笑ってやがった。前に戦った時はただの面白いガキかと思ったら、あっという間にこっち側に来やがった。なんというか、アイツには才能があるんだろうな。戦いに身を置くものの才能ってのが。大したもんだ。やっぱりウチの団に欲しかったな。騎士として、戦士としても立派にやれるだろう。実は俺はアイツが将来どんな傑物になるか楽しみなんだが、あの小僧調子こきそうだからな。ぜってぇ言ってやらねぇ。アイツはまだ小僧で充分だ。
おっ?!来やがったな?竜どもが。って二匹同時かよ。こりゃ骨が折れるな…。おっ、なんだ。まだ二人残ってるじゃねぇか。一匹くれてやるよ!お前らもボケッとしてねぇで手伝え。
「ちょっと!バレたじゃない!」
「そだね。じゃ、しょうがないから行くか」
団長がこっちに気づいた。あの人も只者じゃないなぁ…。あの人もヒトの領域から逸脱しかけてるのかな?しょうがない。あまりチカラ見せたくないんだけど…まぁどうせ相手は下級の竜だし。適当に苦戦して、さっさとアキラの観戦に戻りたいなぁ。
「カイム、あんた真面目にやりなさいよ!相手は竜よ!?」
シーリカ…彼女はいつまで道化を貫くつもりなんだろう?彼女だって、神器戦争の担い手の一人なのに。俺を騙しているつもりなのだろうか?もしかしたらそれすら計算なのかもしれない。だとしたら隠者の二つ名は錆びてないようだ。あまり知られてはいないだろうけど、要人には変わりない。
「…わかったよ」
とりあえず、やれやれをしておくか。さて、俺の目下の興味は君だよ、アキラ君。早く、もっと、俺を楽しませてくれ。
カイムは侮れない。自分の役目に疲れて、今の世になって力を隠し普通に生きるつもりだったけど…どうやらそれも無理なようだ。カイムのせいで。天国への扉、ヘブンズ・ゲート。アレが真の力を手に入れようとしてる今、どうやら私と同じように役目を担った方たちも、ちらほら集まってきているみたいだし。カイム以外はまだ気づいてないみたいだけど。
私は…私だ。他の誰からも影響されない。誰にも私の邪魔はさせない。ただ…アキラ、何故か彼だけが妙に気にかかる。彼は私にとって希望をもたらす者なのだろうか?それとも疫病神なのだろうか?
「ぬおああああぁぁぁぁ!!!」
レオが乾坤一擲の一撃を放つ。竜が苦悶の表情を浮かべる。そろそろ僕の魔力も枯渇しそうだ。つうか、ここまで持っているのが奇跡的だ。しかし、ようやく…本当に、ここまで来た。レオはまだ、ギリギリだが余裕がある。そして回復の術を持たない竜は、息も絶え絶えになっている。その証拠に、自分自身の毒に抗えていない。ところどころ末端が腐食し始めている。
「……ニン、ゲン…」
緑竜が訊ねてきた。明らかに人間としての僕を意識している。
「…なんだ?」
「お前…が新しいその指輪の主か…」
「…!?何故ダービーの事を知っている!?」
「遥か昔…その指環を持った若者が、お前と同じように我らを狩りに来たことがあったのでな…。もっとも、そのときはお前程指環を使いこなせてはいなかったし、この世界の何世代か前だったがな」
「ダービー!お前こいつのこと知ってるのか!?」
「あぁ…確かに昔、竜にボロ負けしたことがあったのう。その時の主は、主ほど気のいい者ではなかったし、故に我も今ほど力を貸したわけではなかったのでな。そうか…グーラスを屠ったのはお前だったか…」
「昔話さ…して、天国への扉を持つお前は、この世界に何を求める…」
「天国への扉?なんだその漫画家のスタ○ドみたいなやつは」
「主…」
「天国への扉、ヘブンズ・ゲート…お前がしているその指環の、名前だ」
「ダービー…」
「すまぬ主…決して隠していたわけではないが、言い出すタイミングがなかったのだ…」
「いや、別に気にしてないさ。じゃあお前、今日からブンさんだな」
「…いや、今まで通りダービーと呼んでたもれ」
「…二人よ、続きをいいか?」
「あぁ、ごめんごめん」
今の今まで命がけで戦っていた相手とは思えないアキラの態度と、神器の精との掛け合いに、年老いた竜は思わず笑いを漏らす。
「ふっ…よい…主を見つけたのだな、指環よ…」
「あぁ。古の竜よ。我が主は、ニンゲンそのものだ。人を思い、人を憎み、狡賢く、愚かで、神がヒトを作った時に与えた『自由』の全てを謳歌せんとする…そんな主が気に入ったから、我は主と認めたのだ」
「あぁー…緑竜さ、いいか?」
「なんだ、指環の主よ」
「さっきの質問の答えと、お前がしてる誤解について。僕がこの世界に求めるのは、僕が大切に思う人達の平和。それだけ。正直、今の自分に力が足りないのはわかってる。でも、僕が戦うことで大切に思う人達が、その人達がさらにまた大切に思う人達が、平和に暮らせるなら頑張れる。僕が思うのは、それだけだよ」
「ふん…大層な心がけだ。皆の為か」
「いや、言葉が足りなかった。結局自分の為さ。僕が、周りの人の悲しむ顔を見たくないからこうしてるだけ。あと誤解についてな。別に僕らは狩りに来たわけじゃないぞ?敵に襲われて、ここしか逃げるルートがなかったんだ」
「なんと…そうか…悪いことをしたな」
「いや、こっちこそ。寧ろ、こっちがお前の仲間大量虐殺しちゃってるし。あのおっさんとか。それに…お前だって守る為に戦ったんだろ?お前と、仲間が暮らすこの森の秩序を」
「ふっ…なら指環の主よ、もし我の家族を殺したことを悪いと思うなら最後に一つ、頼みを聞いてくれないか?」
お前、ここで家族とか言うなよ。良心が痛むじゃねぇか。
「…なんだ?」
「我の命は、もう残り少ない。ただ…このまま死ぬのは忍びない。最後の勝負をしようじゃないか。竜の…古代竜と呼ばれる我の血が、滾っているうちに」
「あぁ…いいぜ…」
「…感謝する。最後の相手が、お前で良かった。我の命をかけた竜魔法を受けて、立っていればお前の勝ちだ。では…いくぞ」
年老いた竜は感謝した。自分より少し位の上の、神に。アキラと言ったか…不思議な男だ。思えば、こやつの声は妙に心地よい。今までの、ただ名声の為、復讐の為に我を狙ってきた人間とは違う。全くの自然体なのだ。人間というモノを、最後に理解出来て良かった。そのくせ、この男は何故か手を合わせたくなる気質を持っている。悠久ともいえる時間を過ごしてきた我も、このような男は見たことはなかった。竜の血が言っている、誇り高き竜が、人間に負けてなるものかと。だから、最後に一撃を見舞いたかった。もっとも…我はその勝負の結末を知っているがな。では…行くぞ、新たなる指環の主よ!
「タンマ!ストップ!」
いきなり制止され思わず気合だけ前にぶっ倒れる。おのれ、無駄な体力使わせよって…。
「なんだ?いきなり。やっぱりやめだとか抜かすのではなかろうな?」
「違う違う。男の最期の頼みを無下に断るほど非道じゃないよ。じゃなくて、言葉!お前の言葉はこの世界の言葉でも、日本語でもなかった。なんで僕に理解出来るんだ?」
何かと思ったがそんなことか。最後まで調子を狂わせる男だ。だが、冥土の土産に教えてやってもいいか。
「その指環の精に聞けばよかろう?まぁいい。この世界の全ての記録と知識の結晶にして、それこそが神、アカシックレコード。それすらも従えるのが、お前の指環だ。それに、我は男でも女でもない。性など、必要なかったのでな」
「お前!何で言わねぇんだよ!」
「だから主、タイミングが…」
「だって、苦労して覚えた意味ねぇじゃん!こっちの言葉!つうか、緑竜!お前、男じゃねぇの!?」
「主!フタナリ!フタナリ!」
「お前は黙ってろ変態!!」
「ふっ…アキラ、行くぞ…!」
「んっ…サンキューな、緑竜」
なんとも、最後まで愉快な連中よ。アキラ、もう少し、早くお前と会いたかったぞ…。しかし永かった…本当に、永い生涯であった。我の生にも、何か意味はあったのだろうか…もしかしたら、この男を覚醒させるために、神よ、そなたは我に永い生を授けたのか…?
そんなことを考えながら最後の力で、魂の爆発と共に己の宿命である、毒を放った。
「戻れ!レオ!皆を守れ!アクアリウス!!」
レオを強制的に下げつつ、宝瓶宮のアクアリウスを召喚する。
「承知!アキラさん!」
アクアリウスが叫ぶと、水瓶から大量の水の膜を作り、僕と、近くにいるおっさんとカイム、シーリカを保護する。そういや、なんで二人はここにいるんだ?まぁ、いっか…。
しばらくして辺りを覆っていた毒が引くと、周囲は緑竜の毒に地面まで溶かされ、沼地と化していた。おっさんが大量虐殺した、緑竜の家族と共に。
「なぁ、ダービー」
「なんだ?主よ」
「なんか、悪いことしたのかなぁ…こいつらは、ただここで生活してただけなのに」
「主は悪くはないぞ。主だって、守るべき者の為に戦ったのであろう?」
「まぁ…な。でもさ」
「なんだ?」
「あいつ、みんな連れて逝ったんだ。そこで寝てた、家族。寂しく、ないよな?」
何を馬鹿なことをと、自分でも思う。でも、そう思わずにいれなかった。緑竜は悪いやつじゃなかった。でも、戦わなくちゃいけなかった。戦わなきゃ、僕が守れなかった。たとえ原因が、すれ違いだとしても。
「そうだと…良いな、主よ」
そうか、こんな戦いもあるんだな…。とりあえず、意識を失う最後に思ったのは、これでエリーの料理食べれそうだな…なんてことだった。
最後までお読みいただいてありがとうです。やっぱり書くときは集中して書かないと駄目ですね。あれもこれもで逆に疲れた…。その上こんなペラい内容でだらだら続いて申し訳ないです。それと最近のエピソードを一つ。ここ数日、左手がやけに疼いて寝れません。邪気眼ではありません。念の為。蕁麻疹がやっと落ち着いたと思ったらこれだよ…