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クリエーター  作者: 如月灰色
《第五章 終焉の時》
110/121

~閑話休題~とある世界の日常その3

こんにち。番外編、これで完結です。ちなみに名前がリンクしているのはお気づきでしょうか。気づいてますよね、流石に…。ガラムとか何人かは無理やりな感がありますが、日本だった場合の彼らの当て字って、結構難しいんですよ…。あと一点お詫び。閑話その1で若干嘘つきました。最後の最後、本編にはたぶん書きませんが、設定上のバレがあります。すみませんでした。

 結局デイビットさんの接待が終わったのは、日が傾いて暫く時間が経った頃だった。心ちゃんのお見舞いには行けなさそうだ。

 蓮にお詫びの電話をすると、そのまま自宅に帰った。すっかり遅くなってしまったので、洋と大は寝てしまっただろう。少し残念だ。


「ただいまー」


「おかえり、貴方。遅かったわね」


 普段着の絵里が迎えてくれた。たぶんドラマでも見ていたのであろう、リビングから音声がする。


「って特撮かよ…」


「あら、面白いのよ?『悪魔ヒーロー戦隊』。俳優も若い子ばかりで、眼福眼福」


 先日子供たちの為に録画したのであろう特撮番組が、テレビから流れていた。

 たしかに主婦層にも人気があるとかで、一度遊園地で公演があった時に洋と大を連れて行ったことがある。その時に、怪人のあまりの怖さに大泣きした洋と大を宥めるために、うっかり中入ってるのは普通のおっさんだと言ってしまい、絵里に猛説教をされた記憶がある。絵里がその後、本物が来る予定だったんだけど、急に怪人が現れて子供たちの為に戦ってるんだよと誤魔化して事なきを得た。…「じゃあ本物を見たい!」と目を輝かせた子供達をかわすのに大変苦労したけど。

 つうか、俳優が若い子って、お前も充分若いだろ…。子供を持つと一回り位精神年齢が上がるようだ。しかし…二十代前半もいいとこの絵里に、若い言われるとか一体…今の俳優さんはいくつなんだ。


「そもそも正義のヒーローが悪魔ってどういうことだ」


 絵里が温め直してくれた晩御飯を口にしながら、今の戦隊物に疑問を投げかける。いや、俺が若い頃のも昆虫との人造人間だったりしたけどさ。


「あら、いいじゃない?強いってわかりやすくて」


「なら天使とかそっちの方が…」


「いいの!子供はそんなの気にしないんだから」


 冷蔵庫からビールを二人分出すと、向かいに座っている絵里のも勧めた。


「エヘヘ…ありがと」


 何か楽しそうな絵里を一瞥し、俺も一口目をグイッと飲む。うん、労働の後の酒は旨い。


「なんかあったか?」


「今日ね、あの子達迎えに行った後心ちゃんとこお見舞いに行ってきたの」


 ほぅ。


「そしたらね、蓮さんと梨華さんと向居さんもちょうど来て」


 あいつら今日は定時で帰ったのか。羨まけしからん。


「そしたらね、来週の洋と大の誕生日の時に、パーティーしてくれるって!頑張っておもてなししなきゃ!」


 張り切って今から料理本を漁る絵里に、ため息をついた。あの野郎ども…。まぁ愛息子達を祝ってくれるなら、それはいいことだ。俺は何もしないけどな!


「それとね、心ちゃんのお爺さんも来てた」


土間さん…だっけか?前世良水産の前取締役常務で、体壊して退職したとか。そういや心ちゃんの親戚の爺さんだっけ?


「もう…病室なのにワンカップ片手に大騒ぎして大変だったんだから」


 クスクスと思い出し笑いをする絵里に、さっきとはまた別のため息をついた。


「あの爺さん、全然元気じゃん…」


 心臓病患ってったって聞いたけど、酒とか飲むなし。




 そしてあっというまの洋と大の誕生日。何故かゲストが急増した。

 元から決まっていた同期三人に加え、霧都一家…はまぁ親類だからわからんでもないけど、例のごとく接待中に馬鹿社長が孫自慢をしたので、デイビットさんまで来ることになった。まぁ向こうの人はパーティー好きだしな。

 …そして案の定集収つかない大騒ぎのカオスっぷり。明日ご近所さんから苦情が来ないことを祈る。


「あっ、こないだナンパされた外人さん!」


 デイビットさんを一目見た絵里の一言で、俺と社長が締め出そうとした一幕もあったけど。そこは寛大な心で許してやった。一応これでも、お客様だし。絵里はパッと見子持ちに見えないから、仕方ないっちゃ仕方ないんだけど。つうかお義姉さん達見たときも口説いてたな。ラテン系なのか?肌の感じもそれっぽいし。


「こないだは行けなくて悪かったな」


 みんな子供たちをチヤホヤしている間、病人で無理が出来ない心ちゃんに先日の詫びをした。


「退院したら、快気祝い持ってってやるから」


「いえ、いいんです!そんな気を使わないでください!」


 心ちゃんが大袈裟に両手を振る。そりゃもう全力で。なんか拒否されているようで若干傷つきそうなレベルで。


「こうして招いていただいて、それだけで充分嬉しいですから」


 心ちゃんが、酒も入っていないのに上気した顔で笑顔を向ける。これは素直に喜んでくれてるリアクションだな。この子、演技とかするには素直過ぎる子だし。呼んで正解だったな。


「また…誘ってくださいね?」


「あぁ」


「なぁにー?何心ちゃんとこそこそ話してんのよー?」


 酔っ払った絵里が横から抱きついてくる。霧都家が酒弱いのは、結婚式の時に重々承知したはずだったが、ここまで酔ってるのを見たのは式の時以来な気もする。雰囲気酔いもあるかもしれないが、一家全員酔っ払いだ。


「ダメらよー心ちゃん。晶さんは私のものなんらからねー!いくら心ちゃんれも、譲ってあげらいんだからー」


「そ、そんなつもりじゃないよ!絵里ちゃん!」


 更に顔を真っ赤にして否定する心ちゃん。過剰反応しすぎだろ。ほら、梨華と蓮、お義父さんまでこっちを睨んでいる。


「晶!あんた心ちゃんに手ぇ出したら承知しないんだからね!」


「お前、ウチの妹にちょっかい出そうものなら…」


「晶君!絵里というものがありながら!いくら心ちゃんが可愛いからって…!」


「あ・な・た!」


 最後の言葉で、お義父さんがお義母さんに耳を引っ張られる。うん、今のはお義父さんが悪い。

 つうか向居。お前は笑ってないで止めれ。

 

「チャラ男おつ!」


「おつ!」


「しねぇよ!浮気とかしねぇから!」


 全力で否定して心ちゃんを見ると、今度は心ちゃんが少し落ち込んでいる。あーもう!収集つかねぇ!

 その時、玄関のチャイムが鳴った。やばい、さすがに苦情が来たか?謝る準備していこう。

 絵里を引っぺがしてドアを開けると、


「なんか…盛り上がってるな。邪魔したか?」


 学生時代の同級生、黒城白夜が奥さんのヘラさんを連れて立っていた。


「いや…そんなことはない。上がってくれ」


 中の様子に一瞬ため息をつくと、二人を上げた。


「ほらチビ助ども。プレゼントだ」


 白夜が洋と大にプレゼントを投げ渡すと、一瞬にして包装紙を紙くずにして目を輝かせる。


「わー!」


「サタンレンジャーの変身セットだ!」


 …どうにかならないか、戦隊シリーズ…。


「ごめんね?高かったでしょう?」


「いや、そんなことはないわよ。洋君と大君の為だもの」


「おぉ!これはこれはクイーンズ・カンパニーのヘラ社長!今日はわざわざ来ていただいて…」


 一瞬にして仕事モードになるお義父さんは大したもんだ。


「いえいえ。ここではオフなので、そうかしこまらないでください」


 ヘラさんが綺麗な黒髪をかき上げる。正真正銘の外人さんなんだが、なんでも日本人の黒髪に強い憧れがあるらしく、綺麗なブロンドを真っ黒に染めてしまったそうな。


「あら?貴方は…」


「オゥ!ミセスヘラ!今晩は先日より綺麗だね」


 …好色外人がさっそく反応しやがった。


「えぇ。旦那と一緒ですもの」


「ヒュー!これは僕がデートに誘ったら断られるわけだ」


「ごめんね。こう見えて旦那一筋だから」


 ハリウッド女優のような妖艶な笑顔を白夜に向ける。つうかあの野郎、ヘラさんもナンパしてたのか。節操なさすぎだろ。仕事しに日本に来たんちゃうんか。真面目な時は真面目なんだけどなぁ…プラマイゼロ、むしろマイナスだ馬鹿野郎。


「なぁ晶、今ヘラなんてってんだ?」


「…お前はもう少し英語勉強したらどうだ。お前一筋だってよ、色男」


 白夜がまんざらでもなさそうにグラスのワインに口をつける。お前らはイチャつきにウチ来たんか。よろしい、帰れ。


「晶…最近さ、主夫も楽しいなって思えてきたんだ」


 白夜がしみじみ小さく言った。ヘラさんが社長をしてるので収入に問題があるわけでもなく、結構な規模の会社に発展したクイーンズ・コーポレーションの総裁を今更簡単に降りれるわけもなく…こいつは今、家庭に入っている。


「ほう。どういう風の吹き回しだ?最初あんなに揉めたのに」


「俺達にも子供が出来て、ヘラが仕事頑張ってくれてさ…最初は男が家庭に入るなんて!って思ったさ。けど、泣き止んだ子供の寝顔を見てるとさ…なんか、ようやく、家庭というものの幸せを実感してきてさ」


「そっか…」


 白夜の言葉に、プレゼントで店開いて遊びまわる子供たちを見る。無邪気な笑顔に、俺も自分の幸せを重ねる。


「ねぇ晶さん…」


 白夜との会話を聞いていたのか、絵里がポツリと漏らした。


「…晶さんの家の人も…来たら良かったのにね」


「…遠いからな」


 親父は会社経営、兄貴も子供が小学校に上がるだとかで大変な時期だ。姉貴と順子は…知らないけど。

 でも…。


「来年は、親父達も呼ぼっか」


 俺の肩に首を預ける絵里に答えた。俺の言葉にゆっくり首を持ち上げ、次の瞬間満面の笑みを浮かべてくれた。


「…うんっ!」


 今日一番の笑顔を見れたかもしれない。その笑顔の可愛らしさ、美しさに何故だか思わず涙が出そうになる。


「うーん。百万ドルの笑顔だね」


「ミスタームカイ。ワタシモソウオモイマース」


 お前…日本語話せるじゃないか。


「カワイイオヨメサンデスネ、ミスターカミヤ。シアワセモノデスネ」


 …外人はこういうときに直球だから困る。だけど、デイビットさんは本当に楽しそうだ。そして俺は今、これ以上なく幸せだ。いいや、皆見てるけど、酒のせいにすればいい。


「あぁ。最高に幸せだ」


「お父さーん」


 せっかくいいシーンだったのに、洋が目をこすって擦り寄ってくる。


「眠いー」


 大も洋に続いて歩いてきた。もうそんな時間か…。本日の主役は、怪人睡魔には勝てなかったらしい。


「よーし、寝るか」


 二人を両脇に抱えて、寝室に向かう。皆のおやすみの声に、二人は瞼を閉じかけながらも手を振って応える。

 布団に二人を下ろすと、既に爆睡していた。の○太もびっくりだ。

 二人を起こさないように布団をかけて、宴会会場に戻る。…こりゃ明日片付けが大変だ。今日が金曜日で良かった。


「遊び疲れちゃったんだね…」


「あぁ」


 一言で答えると、そのまま家主を置いてけぼりに盛り上がる座を見る。

 まぁ…こういうのも悪くないな。


ーーーシアワセデスカ?


 心の中で、デイビットさんの声が響く。


ーーーあぁ。すげぇ幸せだ。


 俺も心の中で返した。







ーーー良かったね、お父さん。


ーーー良かったね。


 天より更に遥か遠く、二人の子供の声が響いた。

 その声は、どこか息子達の声に似ていた。

こんな感じで、この物語を〆る予定でした。あと、次回作の構成もすでにある程度出来ています。クリエーター書き始めたときよりプロット出来上がっているわけですがw今回の人物が誰に該当するか、もしわからなくて知りたい方がいらっしゃいましたら感想欄にでもお書きください。それでは、本編に戻ります。

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