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クリエーター  作者: 如月灰色
《第五章 終焉の時》
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~閑話休題~とある世界の日常その1

シリアスばかりで疲れてしまったので(どういうことだよ)、本当はエンディング後に持ってこようと思っていた話を書きます。少し早いですが、最終話後の番外編として読んでください。ちなみにこの話の内容に、完結関連のネタバレは無しなのでご安心してください。ではほのぼのをお楽しみください。(だって今の章、ギャグとか入れれねぇんだもん…。ネタは軽くはさんでるけど)

「…という夢を見たんだ」


「夢オチ!?」


 リビングでスーツのジャケットに袖を通す俺のしょうもない話に、エプロン姿の絵里は正しいリアクションを返してくれた。仕事用のセカンドバッグを持ち、出勤する準備が終わる。


「洋、大!お前らも幼稚園の支度しろよ」


「「はーい」」


 テーブルに仲良く座り、子供向け番組を楽しむ双子の愛息子たちに声を掛ける。長男の洋は快活に椅子を飛び降り、次男の大はだらだらと物臭に下りた。


「…誰に似たんだろうな」


 正反対の二人を見て、俺は小さくため息をつく。


「あら、間違いなく、洋は私、大は貴方似よ?」


 既に親族から何度も聞いた答えを、絵里が楽しそうに話す。

 だよねぇ…。洋の絵里に似て色素が薄いところも、大の眠そうな目も間違いなく俺たちの子供だ。


「まっ、そんなところも可愛いんだけどね」


「親バカおつ!」


「おつ!」


 隣の部屋から、洋と大の大きな声が聞こえる。子供らしい高い声から、子供に口にして欲しくないフレーズが聞こえた。乙のあたり。


「絵里!まぁたお前ネットとか見せてんのか!まだ早いってこないだ…」


「ほらほら、もう出ないと電車、間に合わないわよ?」


 時計を見上げると、なかなかにデンジャーな時刻を刻んでいた。これは…いつもより一本遅い、満員すし詰め確定の電車に乗らなくてはいけないではないか。

 はぁ…子供が居る家庭の朝は、戦場だ。俺のバッグを放って遊んでいる無邪気な子供たちから仕事道具を略奪して、玄関に向かって靴を履く。今からダッシュすればなんとか間に合う…。少なくとも出社には。


「貴方」 


 玄関についてきた絵里に、いってきますのキスをする。新婚ラブラブにしていた習慣が、止めるタイミングを逸しただけだ。何も言うな!


「リア充おつ!」


「おつ!」


 制服を上だけ来てついて来た愛…バカ息子達が、戦隊モノのポーズを決めて子供らしからぬ言葉を叫ぶ。


「お前らズボンも履け!風邪ひくぞ!」


 キャッキャ楽しそうに下半身パンツで駆ける息子たちを尻目に、改めて…。


「…いってくる」


「はい、いってらっしゃい」


 絵里に笑顔で見送られて神谷家の表札を抜けると、その瞬間猛ダッシュする。

 駆けろ俺!風より疾く!そして願わくば、時を超えて!

 



 …残念ながら時を超えることなんて出来ることなく、俺はなんとか滑り込みで遅刻せずに済んだ。オフィス街は駅近くに発展してるから、便利なもんだ。


「交通に便利なんだから、当たり前でしょ」


 斜向かいのデスクに座る、同期の梨華が呆れ顔でこっちを見ている。


「何故俺の心がわかる!まさか、読心術の…」


「晶の場合、バレバレなんだって」


 隣りに座る向居が、いつもの笑顔を変えず突っ込む。この男は、何が楽しくていつもそんな笑ってられんだ。…まぁ、大事だわな、営業マンには。


「よーし、朝礼を始めるぞー!」


 我が社のトップ、霧都(ツヨシ)社長が、こちらも相変わらず大きな声で号令をかける。親交が深まると凄くフランクな人なんだけど、実は現場からの叩き上げで、若い頃の苦労から身に付いたカリスマ性がパネェ人だ。

 …俺の場合はまた勝手が違うんだけど。


「晶!ちゃんと絵里とはセッ○スしてるか!?」


「ブッフォ!朝から何言ってんスか、社長!」


「お義父さんと呼べと言ったろう」


「会社じゃ逆だ!」


 まぁその…なんだ、俺の嫁、絵里の実父なんだ。俺と絵里は社内恋愛のやっちゃった婚…もといスピード婚だったんだけど、まさか社長の娘さんに手を出していたとは思わなかった。や、珍しい苗字だし、まさかと思ったことはあったけどさ…。現実から逃げてもいいことはないらしい。いや、順番を無視した俺らも悪いし、社長がお義父さんで悪いこともないんだけどさ。

 ちなみに田舎の俺の親父も社長なんかしているので、両親同士の挨拶の時は無駄に話が盛り上がったりしていたのもいい思い出だ。


「晶、今日のスケジュールは?」


「はい、午前は平木商事の村賀さんと、北区の土地開発についての打ち合わせが入っております」


「村賀さんて、あの村賀か?」


「あぁ、あの何故か無駄に偉そうな村賀さんだよ」


 向居と逆隣の蓮が、嫌そうに俺に小声で話しかける。別にお前が会うわけではないだろうに。


「俺、あの人苦手なんだよなぁ…ご愁傷様」


「まぁ…直情的なお前には合わないだろうな。俺も正直苦手だけど、仕事だから割り切るしかないさ」


「晶、蓮!まだ途中だぞ!」


「あっ、すいません。午後からは…」


「あぁ、午後からだが、一つ頼んでいいか?」


 デスクに置いた資料を持て余すのをやめ、社長の次の句を待つ。…蓮が隣でメモ帳に描いた落書きから必死に目を逸らして。俺を通り越して向居がそれを見て笑っているが、この二人は後でお説教かな?俺が巻き込まれない事を祈る。


「なんでしょう?」


「今日クリエイト・ファクトリーのデイビット・ヘヴンズさんが日本に来るらしい。午前はクイーンズ・カンパニーに顔を出してくるらしいから、午後から迎えに行ってくれ、そしてその後は、私と一緒にデイビットさんの接待だ」


「わかりました」


「ということで向居、午後からの世良水産の交渉はお前一人に頼みたいんだが…」


「構いませんよ?晶の午後の業務は私のサポートだったので、あとは一人でやれます」


「頼んだぞ」


 そして着々と朝礼が終わり、午前の業務が無事に終わった。

 …やっぱり村賀さんの相手は疲れたので、平木商事からの帰りにコンビニでジャ○プを読んでから帰ったのは内緒だ。


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