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クリエーター  作者: 如月灰色
《第五章 終焉の時》
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~第九十話~カイムVSリリス

こんばんわ。明日(今日)から二連休という幸せ…。土曜からじゃないかって?隔週とは名ばかり企業です。来月もGWで出勤日数減るから毎週出勤ですよ。土曜は犠牲になったのだ…。ゴホン!では始めます。

 アキラが駆け出すと共にチラリと目線を目の前に移す。七つの大罪ども(セヴンス・デッドリー)の中で、サタンとルシファーを抜かせば唯一ローブを纏っていなかった彼女…リリスが悠然と立っている。黒のボンテージのようなピッタリした服が、妖艶に彼女を演出する。俺はローブからそっとマナの壷を取り出した。


「準備はいいかしら?イケメン君」


 微笑を浮かべる彼女は、一つの芸術品のような佇まいだ。夜鷹が彼女の周りを旋回する。たしか彼女が従えるのは梟じゃなかったっけ?


「俺はいつでもいいよ?『夜の魔女』」


 美女にイケメンと言われて悪い気はしないけど、敢えてスルーしておこう。そういうのはそう…次のお楽しみってやつさ。アキラが作る、『次』の世界に…。


「随分と余裕そうね、『守人』。私じゃ役不足かしら?」


 背中に生えた小さな羽がジェット気流(ウラヴェリアの城に赴く時に、アキラに教えてもらったのさ)を生み、俺目掛けて突進してくる。冷静に見極め、ぶつかる寸前でかわす。気流に巻き込まれてふらついてしまったのは、ご愛嬌さ。


「そんなに熱烈に向かって来られたら、思わず受け止めたくなるじゃないか」


 あくまで余裕に…そう、余裕でかわすことに意味がある。こっちのカードは、まだ一切出していない。そして、彼女の性質をしっかり見極めるんだ。力が互角の勝負では、相手を知ることが勝利に繋がる。じっと睨む。睨んで、観察する。水属性はあくまでクレバーに…そう、イメージさ!


「なら、これなら受け止めてくれるかしら?」


 暗雲が頭上に立ち込め、ただでさえ良いとは言えなかった天候が一気に荒れる。…まぁ、局所的なんだろうけどね。

 自分で言っちゃうけど、俺らレベルの戦闘は、同じ空間であってないようなもんだし。時空の力場の影響で、風船が幾つもあるような感じ。風船が力場で、中でいくら動こうとも、周りの風船の中に影響がないように…。たまに無視するような輩もいるけど。ま、それは本当に『アキラレベル』の化け物ぐらいだけど。後は本当に力を持った邪神の渾身の一撃くらいかな。過去に何回あったっけかな?そういうの。

 まっ、それはいいとして…。


「グッ!」


 今度はまともに食らってしまった。俺の『感覚』では同じに感じる突進だけど、かわす寸前に地面を揺らしてくれたよ、この子。

 そう、彼女は…。


「…忘れてたよ、『大地母神』」


 マウントポジションを取り、俺を組み敷いた彼女はいたく嬉しそうに笑った。それは邪悪な笑みではなく、本当に嬉しそう笑顔だったことを追記しておく。


「私の二つ名を二つも覚えているなんて…貴方、いい子ね」


「二つ名だけに二つって?上手くないよ?」


 笑ってあげるけど、実は結構やばかったりする。大地母神は文字通り豊穣の女神。そして…土の属性を行使した彼女は、凄く重い。全く動きがとれない。


「ふふ。積極的な女は嫌い?」


 俺の皮肉もあっさりスルーされて、少し残念。それどころか、なんかやけに嬉しそうだ。こんなことしてる場合じゃないんだけど…。


「個人的には嫌いじゃないかな?でも、貴女の前の旦那さんはそうでもなかったみたいだけどね」


 前の旦那…アダムの事を口に出した瞬間、サッと彼女の顔色が変わる。土気色というかなんというか…つまり、少し怒ってる?


「あのヒトの事は言わないで!」


 両手を握り、俺の胸にストンプする。衝撃を受けた瞬間から、軽く力が抜けた感覚がする。やば、同じ土属性のアキラが使わないから忘れてた。土属性の本当の恐ろしさ…。


吸収ドレイン…!」


 咄嗟に俺もこの体勢から脱する為に水砲を放つ。…放った場所が下腹部だったのは、アレだよ?彼女がそこに跨ってたからだよ?下品な感じになっちゃったけど、他意はないよ?

 重心から俺に吹き飛ばされた瞬間、雷撃を食らわせてった彼女が、少し向こう側の地面に叩きつけられる。

 い…痛い…。俺らの体は、属性の影響を少なからず受ける。グレンは火に耐性があったり、アキラは回復が早かったり、シーリカは身軽だったり…。

 そして俺は勿論、雷が効き易かったり。しかも喰らった場所が悪かった。心臓直に高圧流された。呼吸が止まり、痙攣する体を必死で血液の圧力で無理やり正す。

 たぶん一瞬、本当に死んでたと思う。俺が流体を操れなければ、そのまま戦線離脱してたかもしれない。というより、練度が浅い術者なら間違いなく御陀仏してた。自分のレベルに感謝。


「シーリカにアキラに…この雷はデンゼル君以上かな?ちょっと反則じゃない?キミ」


「ゲホッ!クッ…貴方に言われたくないわ。何よ今の水圧…。この世界…いえ、外なる世界を探してもこんな水力見たことないわよ…」


 土属性をかけて重くなった体を簡単に吹き飛ばした俺の攻撃に、彼女が苦渋の表情を浮かべる。ただ、その表情は俺も同じなわけで…。


「!?…これは…」


 力の異常な抜けに、片膝をつく。眩暈に似た症状に陥った俺に対し、彼女はもう二本の足で立っている。…正確に言えば、彼女の後ろから巨大な蛇が彼女を支えているようにも見えたけど。…今はそんな冷静に分析してる場合じゃないかな?如何せん、この脱力をなんとかしないと…。

 ふと下がった視界に、気になるものが一つ映る。さっき雷撃を喰らったところに二つ、黒い翼に似た紋様が浮かんでいる。焦げているようにも見えるけど、呪いの類いだとしたら…少し面倒かな。


「ほら!まだまだイクわよ!」


 いつの間にかすっかり回復した彼女が、連撃を放つ。後ろの大蛇が波打ち、俺に迫る。かわすことがやっとな俺を彼女自身の徒手空拳が穿つ。


「ガハッ!」


 自分の口から血煙が浮かぶのが見え、


咬撃バイト!!」


 大蛇が俺の全身を噛み付く。高速で噛まれた俺は、大蛇の口が離れたと同時に崩れ落ちた。

 仰向けに倒れた俺の頭上を、彼女が跨る。本来なら、絶景なんだろうな…。っと危ない。何千年何万年と生きてきた俺が現実逃避とは、これ如何に。


「さぁて、ゆっくり楽しもうかね、最上級の魔力を…。直接、全力で搾り取ってあげるわ」


 迫ってくる唇を、すんででかわす。でもただ転がるだけだ。少し間合いを空けることに成功した俺は、なんとか立ち上がろうとするが、今度は全身から力が抜ける。そしてそれを見逃すほど、彼女はマヌケではないらしい。ちょ…まだ体勢が…。


「まだ足りないの!?」


 大蛇の一撃をなんとかかわす俺に、今度は彼女の一撃が振り下ろされる。腹に当たったその衝撃に、今度は声も出ない。一瞬意識が遠のく瞬間、ようやく理解した。


「わか…った…キミの能力ドレインは…」


 口の中の血溜まりを飲み込み、言い切った。種を見抜いたところで状況は変わらないけど、俺のプライドに懸けて解き明かしてやった。


「そう?わかったの。まぁいいわ。答え合わせしてあげる。私の吸収ドレインは、私に直接打撃を受けたことによって聖刻ステイグマを刻まれることによって発動するの。そして全身に刻まれた貴方はもう…逃れられない」


 俺が言う前に明かしちゃったよ、この子。

 まぁ今はそれどころじゃない。本当は彼女を倒してアキラとダービー(?)は大丈夫だとして、ヘラとビャクヤに加勢する予定だったけど、そうも言ってられない。全力をもって、彼女をぶっ殺す。


「…。…。…。」


「なに?聞こえないわ?」


 この立ち位置が好きなのか、彼女はまだ俺の上に跨っている。さっきの宣言で勝利を確信している彼女が聞き取れないよう、小さく詠唱する。…普段通り詠唱する力が無いとも言うけど。


「つ…れ…。…せよ…」


「っ!?貴方っ!」


 俺の中の魔力の流れに気づいたか、彼女はその手を振りかざす。

 …が、もう遅い。この魔法のネックは、一人で合体魔法と同じ効果を生み出せるが、同じ詠唱を三度行わなければいけない。だから一対一には圧倒的に向かない呪文なんだけど、勝利を確信し、油断した彼女はそれに気づかない!形勢逆転…かな?


「天を穿つ流れ。繋がれ、我と偉大なる魔力の海よ。蹂躙し、侵蝕せよ!」


 多大な魔力の奔流に、彼女は為すすべもなく弾かれる。そして言い放つ最初のピース。


「八岐之大蛇!!」


 マナの壷が光を放ち、膨大な水の魔力が流れ込む。自身に強制的に魔力を回復させて、彼女の追撃を受け止める。


「明鏡止水」


 俺を貫いた大蛇をそのままに、彼女の時間が止まる。彼女の感覚が、俺を貫いたところで止まっているのかはわからない。なんせ、この技を使ったのは今まで幾度と繰り返された神代の戦いの時で、その戦いに敵の生存者はいなかったから。そしてマナの壷に多大な負荷をかける上に、強制的に黄金の微睡みゴールデン・スランバーに陥ってしまうのでおいそれと使う技ではなかったから。…この最終戦争まで使う機会をとっておいたとも言うけど。

 この『明鏡止水』は、アキラの時魔法のようにちゃんとした魔力体系を背後に持つ魔法ではないから、敵を止められるのは一瞬だ。その一瞬で、止めの呪文を言い放たなきゃいけない。この魔法最後のピース…。


「九頭龍!!」


 マナの壷が共鳴し、旧支配者の分体と言うべき御姿を晒す。

 無数の竜がトグロを巻き、それ自体が一体の竜のような姿のそれは、全てを破壊する水の息吹ブレスを放つ。先ほど回復したばかりの魔力を根こそぎ消費する波動が、彼女を飲み込んだ。




 まだ九頭龍が解けない内に、彼女…リリスだったものは姿を現した。その姿はさっきの絶世の美女とはかけ離れた、一本の肋骨を杖代わりにヨボヨボ立つ老梟だった。


「聞いてないわ…こんな…若造に…」


「若造とは失敬だね。こう見えて俺はキミの数百倍じゃきかない位長い時を過ごしてきたんだから。」


「減らず口を…っ!?」


「!?」


 俺と彼女が振り向いたのは、同時だった。

気づけば、閑話、解説を含めて百話を超えてました…。ここまで続くとは、正直毛ほども思ってませんでした。ホント、この作品を応援してくださっている皆さんのおかげです。いや、マジで。反応が楽しくて頑張ってこれましたもん。感想をいただく度、お気に入りに追加していただく度、早く次話を書きたいってモチベーションに繋げてここまで書いてきました。…途中期間が空いてしまったり、更新ペースが下がったりしましたがorz。本当に、応援ありがとうございます。では改めて…ご意見、ご感想、ご指摘、お待ちしております!

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