~第八十八話~対峙
こんにちわ。今日は胃炎の検査で胃カメラ飲んできました。先生から今日は安静って言われたけど、胃以外は健康だから更新します。会社は休みました。一応、お医者さんの指示なんで…。
轟音が鳴り響き、背後の森から鳥類の大群がどこかに飛び立った気配がする。そして眼前の煙が晴れると、中から十人の人影が見える。人ではないけど。
「全く…人間はドアの開け方も知らないのか」
「知っとるわ」
「野蛮だね、人間って…。僕があの時神に背いたのもわかるだろう?」
一人の男がヤレヤレと肩を竦め、その隣のやせ型の優男が俺のツッコミをスルーした。
「…で、お前はラスボスなんじゃないのか?なんでここに出向いてる?…サタン。それとお前は…ルシファーか」
「まぁ残念ながら君がラスボスを最後の出てくる者のことを指すというなら、それは私ではないというのが事実だな」
「つまりお前はラスボスの器じゃねぇっつうことだな」
俺の煽りに全く動揺を見せないサタン。こいつ憤怒の化身なら簡単にノってくれると思ったんだけど…。
「キーランス。君に一つ教えよう。憤怒の権化たる私、怒りこそ力の源と言っていい…。しかし、短気とソレは違うのだよ。コントロールしてこそ、力足りえるんだよ」
「そっか…ありがたいお話ありがと…よっ!」
「「っ!?」」
一瞬で間合いを詰め、列をなす奴らの中程の…見覚えのある連中を横薙に両断した。そいつらは勿論…。
「ほおぅ…彼らを一瞬で屠るか」
「へぇ…人間って意外とやるもんだね」
俺が斬ったのは『強欲』のベヒモスとマモン。ありがたいことに、やつらは俺がキーランス時代の最期に垣間見た記憶からその姿を変えていなかったらしい。
「ある…じ?」
「なぁダービー…。早速過去の因縁、文字通り断ち切ってやったぜ?しかし…」
全く列を乱していない連中を一睨みする。
「おお怖い怖い」
「…解せんな」
仲間が瞬殺されたというのに、やつら顔色一つ変えない。それどころか、うすら笑いすら浮かべている。
「まぁ…人数が多すぎたし、このままだと君たちが可哀想だもんね。気が晴れた?人間。」
元は白かったのであろう、白い絹が灰色にくすんでいるルシファーが尊大に笑っている。傲慢の名が示す通り、あくまでも上から目線だ。
「ひい、ふう、みい…向こうは八人か。どうする?」
ザッと元の立ち位置に戻り、やつらを見渡す。ベルゼバブ、ベルフェゴール、アスモデウスを先だっての戦いで倒し、ベヒモスとマモンを削って残り八人。それでもこちらの人数より多い。出来ればこいつらレベルはなるべくタイマン制にしたいところだけど…。
「まっ、なるようになるだろ!」
グレンが一振り、レーヴァテインから最大出量に近い炎をぶちかます。視界からやつらが消えた刹那、個々散開するのが見えた。
炎を放ったグレン当人には『嫉妬』のレヴィヤタンが。
カイムには『怠惰』のリリス。
もう一方の『怠惰』、アスタロトはガラムへ。
シーリカには『暴食』のモロク。
そして…。
「お前らがツーマンとか卑怯だろ…」
「誰も一斉にかかるとは言ってないぞ?まぁ一対一とも言ってないがな」
白夜、ヘラのペアに『傲慢』のベリアルと何故か『憤怒』のアラストル。その結果どうなるかというと…今の俺の発言に繋がる。サタンとルシファーが俺んとこに来やがった。
「あのさぁ…確かにヘラも地獄をもたらす者って見方すると装備品なんだけどさ、あいつはきちんと人型なれんだよ。結果二対二なんだよ。ダービーは…」
「主、忘れておろう?少し…借りるぞ?」
指から気配が離れ、頭にこいつの背中を感じる。まぁ…エリクサーで魔力は完全回復したしな。十二神召喚した後だけど、気にする程でもない。それに、最終決戦なんだから、出し惜しみはするべきではないしな。
「汝の相手は我がいたそう、ルシファー!」
「君がねぇ…混沌。それも悪くなかもねぇ」
こちらを振り向いて言い放ったダービー…もとい、ナイ親父…さらにもとい、ナイアルラトホテップ。だらしなくスーツの胸元を開け、しかし葉巻を取り出せばクールに決まりそうな紳士然とした、ダービーの人型形態だ。
「ではお互いに対戦相手が決まったところで…始めようか。おっ、そうそう」
サタンがさっきまで城のエントランスだったもの…階段に視線を移し、指を鳴らした。すると頭上の城の最上階から爆発音とまばゆい光が見えた。ゲートのような気配の、しかしもっと明るい、光の渦のようなものが窓から見える。窓、あの爆発音でも無事割れてないんだな…。
「私たちを見事打ち倒したなら、ご褒美をやろう。あの光の先は神…創造主が座するセフィラ、『思考と創造』のケテルだ」
「…なんでお前が通じてるんだよ」
「なぁに、簡単な事さ。私が全ての次元、世界において創造主に最も近いからさ。尤も、私では相克が作用する為に彼を滅ぼす事が出来ないがね。口惜しい事に」
「それは…自分が一番強いって言いたいのか?…俺より」
「無論」
「言ってろよ!」
俺が駆け出しサタンに輝くトラペゾヘドロンを叩きつけ、最後の戦いが幕を開けた。
強欲チームがあっさりとやられたのは、単純に晶の力量が上がっているだけです。決してバトルが思い浮かばなかったということではないです。決して。