普通のプロローグ
普通のプロローグ
何の変哲もない毎日だけが過ぎるこの世の中で、どれだけの人がどうしようもない非現実を体験しているのだろうか?
異世界に飛ばされたり、急に超能力に目覚めたり、じつはドラゴンの子孫だったり、まぁ多々あるとは思うけれども。
そんなくっだらない非日常もこの僕、雨海表裏も現在進行形で巻き込まれているのです。
ppppp。
そんな下手くそなナレーターの真似をしている僕のポケットから、何の面白みもないメロディが流れる、僕はポケットから携帯電話を取り出した、これもなんてことの無い盗聴防止用のカスタムが施された携帯である。
「もしもし?」
「五秒後! その通路から出な! 例の奴が来るから! ミスったら殺す!」
息切れを起こした女性の爆発音並みにでかい声が僕の鼓膜に突き刺さる、僕は少し携帯から耳を離して返答する。
「了解、です」
今のドスの聞いた声主は狒荒紅葉さん、彼女も僕と同じようななんてことのない非日常の中にいる人物である。
5
僕は携帯をきってビルとビルの間に身を潜めた、今は暗闇が跋扈する危ない普通の裏の世界。
4
僕は昼夜問わず、そう言った仕事を押し付けられている。
3
しまった、尺を伸ばしすぎて説明するものが残っていない・・・あ、そうだ。
2
どんな仕事かって言うと。
1
なんてことの無い非日常の人間を
0
捕まえること、かな?
0と同時に僕は飛び出していた、ここは都会の裏道、明かりなどはビルに住んでいる人がでる玄関の光しかなく、それも点々と点在しているだけ、目が慣れていると入っても輪郭程度しか把握できない。
僕は目を細めながら聞こえる駆け足に耳を傾ける。
狒荒さんが言ったとおり・・・十秒後に足跡の主は表れる。
日本人なのに似合わぬ金髪をした不良っぽいにーちゃんだ、そのにーちゃんの手にはバッグが一つ握られている。
僕はそのにーちゃんの前に立って、手を振ってあげた。
「はい、そのバックこっちによこして今すぐに、そうすれば今ここであったことはぜんぶ忘れてあげますから、あ、はっきり言うけどこれ以上譲歩する気はさらさらありませんよ、考える時間は二秒です」
「な、なんだてめぇ!? お、お前もあれか? さっきの化け物女の仲間か!?」
どうやら相当狒荒さんに恐怖を植え付けられたようだ、僕が仲間だと悟ったのか顔にはえもいえぬ恐怖に彩られている。
「残念です、タイムアップ、さぁどうします?」
僕は彼の言葉をスルーして、何かを貰うように手をにーちゃんの方へと突き出した、彼との距離はちょうど大また三歩分。
「だ、誰が・・・わたすかぁあああああ!!!」
にーちゃんが叫び声を上げて僕に向かって突っ込んできた、そしてバックを持っていないほうの手にはこの薄暗い道を照らす、炎がユラユラとゆれている。
そして、にーちゃんはまるでボールを投げるように振りかぶって腕を振るった、にーちゃんの手から放たれ独立した炎はまるで爆発した業火のように僕に向かって突っ込んできた、よくできた火炎放射器だ。
僕は手近の壁に立てかけてあるトタンの板を掴み取ると火炎の盾にするよう立てて、その後ろに隠れた、次に来たのは衝撃と頬を撫でる熱波。
何とか炭人間にはならずにすんだかな? と僕がホッとしていると声が飛ぶ。
「は、ははははっ! どうだよ俺の能力! スゲーだろ!? この能力使えば金儲けなんていくらでもできるんだぜ、実際近くの組織を襲って金かっぱらって来たんだからなほらこんなだ!」
片手で火の玉をポンポンと弄しながら、にーちゃんはバッグの中身を広げてみせる、中には札束がギッシリと詰まっていた、あれなら僕たち高校生にとって欲しいものなら何でも買えるだろう。
けれど。
僕はトタン板から出ると、眠くなり始めて出たあくびをかみ殺さないで思う存分して見せた。
「くだらね」
そして僕はため息をつく。
「なんだと?」
「あなたの頭にも軽量スプーンの小さじ一杯程度の脳みそは入ってるんでしょう? だったら、そんな能力を持ってる人がごろごろいるのに、それが起こらないのはなぜか考えなかったんですか?」
「なに?」
「やれやれ、脳みそはミジンコ以下ですか、じゃー教えてあげますよ、そういった馬鹿な輩はですね・・・僕たちみたいなどーでもいい人達が沈静してるからなんですよ」
その言葉と同時に僕はトタン板をにーちゃんに向かって思いっきり投げそれと同時に僕も走り出す。
「くっ・・・この!」
バックによって片手を塞がれている彼はどちらかにしか火の玉を投げられない、僕に投げればトタン板が顔面直撃気絶は必至、あとを追ってきてるであろう化け物女こと狒荒さんが彼を捕まえるだろう、逆にトタン板に投げつけたら僕が彼を捕まえるといった具合である。
と思ったんだけれども。
なんとにーちゃんは顔面スレスレでトタン板を避けやがった。
ということは残る標的は僕一人・・・。
にーちゃんの顔がどうだとでも言うようにニヤリと笑っている。
僕がしまったと思うより先ににーちゃんの手に平にある火の玉を僕に向かって投げつける、この距離なら巻き添えを食らうのではと思ったが、何の抵抗も無いまま投げてきたのだからそれは無いのであろう。
まぁ、僕もそんなところではやられないことがわかってるからここまで来たのだけれど。
火の玉が爆発する前に、僕は体の向きを九十度ずらす、ちょうど目の前はビルの壁である、僕はそこに向かって思いっきり地面を踏み込んだ。
一見そのままであれば自爆確定なのだが、そうはならない。
僕は皆に平等にかかるある現象を掌握できるからである。
そして。
「よいしょ!」
ドゴガ!
僕の拳がにーちゃんの顔面に突き刺さる、結構力を入れたから痛いだろうな。
にーちゃんが後ろにぶっ倒れ気絶したのを確認した僕は、動けないように手首を縄で括りバックを回収。
あー疲れたし眠い。
僕は路地裏にしゃがみこんだまま、都市の煙にまかれて月しか見えない夜闇を見上げている・・・それにしても狒荒さん遅いな? どうしてるんだろう?
かれこれ十分以上ここで未だ目を覚まさないにーちゃんを見張っている、狒荒さんは時間に厳しいからこんなに遅いのは普通ではありえない、僕は携帯を取り出すと狒荒紅葉と電話帳に登録されている電話番号にかけてみる。
三度目のコールで狒荒さんが出た。
「あ、狒荒さん? 仕事が片付いたんですけ―――」
「あぁ!? 今違う仕事が入っちまったんだよ! そっちに牢獄送ったからお前は今から、煤原地区の3―158に今すぐ来い! 五分以内に来なかったら殺す!」
「・・・人使いの荒い」
「なんか言ったか!?」
「いえ・・・なんでも、すぐ行きます」
少し耳から話した携帯を切ると僕はGPSで先ほど狒荒さんのいった場所を検索・・・ここから五キロほど離れているんですけど・・・どうやって五分で向かえっていうんですかあの化け物女。
僕はため息と欠伸を同時にしながら首をコキコキと鳴らす。
今日は眠れそう見ないな・・・。
代わりに誰かやってくれないかな?
ん?
ああ、ちょうどいい画面の前の君・・・暇なんでしょ?
「能力者クラブに入りませんか?」




