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召喚者とは?

「あ、あの。大丈夫ですか?」


 ドアを開きながら金髪の女性が顔を覗かしてくる。


「はい、ある程度は落ち着きました」


 俺は、あの場で泣き倒れてこわもてのお兄さんに肩を持たれながらこの部屋に戻ってきた。ベットでくるまり自分の置かれた状況を再確認した。

 俺は異世界召喚でバグが発生して何ももらえなかった。

 というかそらそうやろ、スマホが顔に当たって異世界召喚って。そらバグが起きるわ。


「とりあえずはお金はもらっているので何日かはいてもらっても大丈夫ですからね」


「あ、そこの部分はちゃんと設備してくれたんだな。あのくそ女神。それはそうとしてあなたの名前はなんて言うんですか? 俺何も知らなくて」


「そうなんですか。じゃあ、この街について軽く説明も加えますね。まず、私の名前はミハエル・テーゼといいます。ミハエルと呼んでもらえれば大丈夫です。次にこの街はファストステップ。さまざまな冒険者がダンジョンなどを攻略して生計を立てている街です。そして、この場所は冒険者ギルドで、クエストを受注したり、仲間を集めたり募集したりする場です。たまに緊急クエストなども発表されるのでお見逃しなくというわけです」


「なるほどね、つまりは仲間を集めてダンジョンレッツゴーていうこと」


 なんだ、ちょっとわくわくしてきやがったぞ。一回でいいからこういう冒険をしてみたかったんだよなー


「軽い説明は以上ですけど、何か質問とかはありますか?」


「あー、ダンジョンに行くときとかは防具とかもらえるんですかね?」


「はい、支給品として渡しますよ」


「回復薬とかも?」


「はい、もちろんです」


 ナオトはベットから立ち上がった。


「さあ、ダンジョン攻略の時間だ。ミハエルさん支給品を僕に渡してはくれないかな」


「え、きも……は、はい。今すぐ準備しますね。それではエントランスでお持ちになってください」


「今、きもって言った?」


 ナオトはミハエルさとともにエントランスへと向かった。


「今こうしてみれば、いろんな冒険者がいるなあ。そりゃ冒険者ギルドだからあたりまえっちゃあたりまえだけど」


 ナオトはエントランスの椅子に座りながら周りを俯瞰していた。ガチムチのお兄さんもいれば魔法使い、妖艶なお姉さん、戦闘員みたいな人もいた。


「よお、兄ちゃん。大丈夫か?」


「あー、たしか俺を部屋まで送り届けてくれた」


「そうそう、兄ちゃんがあんまりだからよ。心配になっちまって。俺の名前はヒデキっていうんだ。よろしくな」


「ああ、よろしくな。ヒデキ。俺はナオトだ」


 ナオトとヒデキは熱い握手を交わした。


「じゃあ、俺はもう行くからよ。また会おうぜ、ナオト」


 ヒデキはそういうと仲間とともに冒険者ギルドから出ていった。


「いやあ、俺もとうとうここの住民の仲間入りか~ 握手まで交わしちゃったよ。手が馬鹿でかかったけど。ていうかヒデキって日本人の名前だよな。じゃあ、あいつも日本人なのか?」


 ナオトがヒデキ達の出ていった扉を見るために振り返ると


「お持たせしました~ これが冒険者の支給品セットです! 中には防具や武器、いろいろなポーションも入っていてファストステップギルドの一押しの品ばかりです!」


「あ、ありがとうございます」


 ナオトはもらい受けたチェストを開いた。


「そうそう、これこれ~ これを待ってたんだよ。よっこらせ! ……あれ?重くない? この装備と武器全般。こんなんつけてたら動けないんですけど。というかこのヘルメットなんてつけたら首折れるぞ」


「あー、っと一応これらが初級ダンジョン用でこれより軽いものはなくて」


「すぅー、つまりは俺この装備つけれないってこと?」


「そういうことになっちゃいますね」


「つまりは敵の攻撃を体で受け放題ってこと?」


「はい、ですね」


 終わった。俺、絶対に死ぬやつですやん。ていうかそもそも論、俺普通の高校生ですねん。別に体も鍛えてない帰宅部の高校生ですねん。それにチートが入ってトントンやねん。それもバグでもらえてないねん。なにこれですねん。


「ま、まあでも、初級ダンジョンなら装備がいらないところもありますし。そこで経験を積んで強くなればいつかは装備がつけれる状態になりますから」


「そ、そうですよね」


 気楽に楽観的に生きるのも俺のモットーだ。いつかは大丈夫になるときがくる。そん時がくるまでは一旦待ちや

 ミハエルは手元の用紙も俺に向けた。


「それじゃあ、これらのダンジョンから選んでください。

『迷える森の捜索』 『亡者の洞窟』 『廃れた塔の調査』」


「えっと、これら全部初級ダンジョンなんですよね?」


「はい、全部初級ダンジョンですね」


「じゃ、じゃあ、『亡者の洞窟』でお願いします」


「はい、それじゃあ、『亡者の洞窟』ですね。分かりました」


 ミハエルはナオトのステータスの乗ったプレイヤーカードに何やら書き込んでいく。


「それじゃあ、ナオトさんのプレイヤーカードに『亡者の洞窟』を登録しました。クリア条件は洞窟奥深くの白骨化した亡者を倒すことです。倒したらプレイヤーカードの『亡者の洞窟』の隣に丸が書かれます」


「ど、洞窟の奥深くですか?」


「はい、なので松明を特別にプレゼントしちゃいます。ナオトさんの成功を祈っています」


 ミハエルは頭を下げて、ナオトも反射で頭を下げ返した。

 ナオトはその後支給品をリュックにしまい、背負って冒険者ギルドから出ていき洞窟を目指した。


「いや、ダンジョン変えたほうがよかったかな? 洞窟って暗いしだったら森とかのほうがよかったかな? はあ、こわくなってきたなぁ」


 そうぶつくさ言っていると、ナオトは目的地の洞窟についた。


「ここが、洞窟なのか。結構でかいけど」


 その洞窟は奥が全く見えず、真っ暗であった。あと少し臭い。


「もう、後戻りもできないしいくしかないよな。松明つけてっと」


 ナオトは松明を左手に持ち、剣を右手に持った。


「そ、それじゃあ、おじゃましまーす」


 ナオトは洞窟に入っていった。

 周りでは変な音が鳴り響いており、水がぴちゃぴちゃとしたたり落ちている。

 コウモリも飛んでおり不気味さが増している。


「嫌だあ、こわいよぉ。絶対に奥まで行ける気がしないし倒せる気もしないよぉ。敵モンスターが来るとしてもスライムとかにしてよー」


 ナオトは小さい歩幅ながらもどんどん奥へ進んでいった。


『ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃー!!!』


「で、でたあああああああああああ!!!! す、スケルトンだあああああ!!!」


 ナオトは震える右手につかんだ剣をスケルトンへと向けた。


「お、おっけー。まずは逃げる準備だ。勝てないと悟ったらそっこー逃げるんや。命が大切や。避難の三文字おかしだ」


 スケルトンが大きく振りかぶる。


『ぐぎゃぎゃあああ!』


「うお! 危ない!!」


『がしゃああああん!』


 構えを取っていたナオトは少し下がり攻撃をかわした。


「あ、あんなのくらったら一瞬でお陀仏だぞ」


 スケルトンは引き続き攻撃を繰り返す。


「ふっ!!、はぁ!!、っしゃ!!!」


 逃げることを第一にしているナオトはスケルトンの攻撃をすべてよけている。というのも、


「いや、ちょっと待てよ。スケルトンの攻撃が短すぎてそもそも俺に届いていなくないか?」


 ナオトは逆に止まって見せた。

 すると、スケルトンの攻撃は短すぎて当たらず、1メートルほど離れていれば大丈夫であることが判明した。というかスケルトンは剣を地面にぶつけているだけだった。


「まだ油断するな。HPが多くて持久戦で負けるなんてことは多くある。ゲームでもたくさんあった。スケルトンが剣を地面にぶつけて持ち上げる時が一番の隙だ。その瞬間にこの剣で…...」


『ぐっぎゃぎゃあああ!!!』


『かしゃあああああん!!!』


「今だあああああ!!!」


 ナオトはスケルトンの隙を見計らって横一線をスケルトンの頭に叩き込んだ。


『ぐうううううう』


 スケルトンは剣を手放しその場に倒れこんだ。


「やった。やったぞおおおおおお!!! た、倒したんだ! この俺が! 異世界のモンスターを!」


 興奮したナオトは何度もガッツポーズを繰り返していた。


「いやあ、俺って才能があふれかえってるのかも。 あの横一線は流石のスケルトンでも反応できないよな。 そうだ、そうだ。剥ぎ取りとかアイテムを探らないとな」


 ナオトはスケルトンを漁った。


「お? これは高そうじゃない?胸の部分に青色の宝石があったぞ」


 ナオトは青色の宝石を手に入れた。


「うーん。これしか見当たらないな。とりあえずはもういいかな」


 ナオトはその場を後にして、軽くなった足取りで洞窟の奥へと進んでいった。


「よく見てみたり聞いてみてりすると、洞窟の中からへんな音とかコウモリはいるけどモンスターはあんまりいないもんだな。初級ダンジョンだし、あんまりビビる必要もなかったかもな…...ってえ?」


 ナオトの目の前にミミックに上半身をかまれている人を発見した。


「もう!!! 出しなさいよ!!! ふんぬ!!!!」


 その人は外側からミミックに向かってパンチを繰り返していた。


「な、なんなんこれ? もしかしたら罠の可能性だってある。......これは見て見ぬふりのほうがよくないか」

 

 ナオトはその場を静かに通りすぎようとした。

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