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届け!響け!歓喜の声!

「あーあ、何か面白いことは起きないのかなー?」


 そういう主人公ナオトはベットで横たわりながらスマホをいじっていた。


「でも、何も起きないのもまた一興というかなんというかなー」


 怠惰に過ごすことをモットーにしていたナオトは『何か』がしたい思いと揺れ動いていた。


「異世界転生とかさ、夢があるけどそれが起こったら起こったで親にも会えないし友達とも会えないから普通に嫌なんだよなー」


 スマホを触りながらぶつぶつと呟く。


「あ、そうだ。帰って来たくなったら帰れて旅がしたくなったら旅をするみたいな異世界転生はどうや。それが一番いいやん!!!」


 ゲームをしていたスマホが顔に落ちる 。


「あいた!」


 ナオトはベットで蹲り顔を抑える。


「ったく。これが世界で一番痛いことや……ろ……ってえ? ここ、どこ?」


 ナオトは急に全く違う部屋のベットで座っていた。


 コンコン。


「あの、お目覚めになりましたか?」


 ドアの外から金髪のお姉さんが入ってきた。


「あ、は、はい。か、かわいいな……ってそんなことじゃなくてここはどこ! 私はだれ! あなたもだれ!」


 混乱するナオトを側に、


「え? 昨日この宿に泊まりに来ましたよね?」


「へ? 昨日?」


「はい。あなたが昨日この宿に訪れて……」


「いや、その時の俺は俺の姿でしたか!?」


「うーん。違うといえば違うかも……ごめんなさい。昨日あなたを見たのは一瞬でしたから」


「ま、まあ。俺の顔は普通だからな。オーラもないし」


「あと質問を返さないようで申し訳ないですけど、これを」


「ん? これって封筒?」


 ナオトは一通の封筒をもらった。そしてその中には手紙が入っていた。


「はい、昨日あなたがあなた宛てに『目覚めたら、渡すように』ともらい受けていたものです。」


「は、はあ、仕方ないけど見てみるか」


『急に送り込んじゃってごめんね~。 ナオト君、君を世界を救う勇者として異世界へと召喚しちゃいました~。許してちょ♡ 可愛い女神プリティより♡』


「な、なんじゃこりゃ……なんじゃこりゃあああああああああ!!!」


 ナオトは封筒の中の手紙を投げ捨てた。


「何が異世界召喚じゃ!!! いやいや、俺これからどうすんの!?!? 俺、ただの高校生だぞ! しかもどういう召喚の仕方やねん! スマホを顔に落として召喚て。もっとかっこいい召喚の仕方があったやろ! いや、そこに怒っとる場合でもないし!」


「あ、あの。盛り上がっているところすみませんが、その手紙裏もあるみたいですよ」


「え、本当に?」


 ナオトは手紙を拾い上げた。


『異世界召喚のプレゼントとして神具の装備一式とチートスキルをあげちゃうよ♡ これでこの世界の魔王を倒して平和を手に入れてね♡ 倒さないと元の世界には帰れないからよろしく~ あと私も女神クビになるからよろしく~ 可愛い女神プリティより♡』


「ふむふむ、なるほどね。ちょー強い武器やスキル上げるから魔王たおしてねーってことね。この世界の地理や情報もないのにがんばってねーってことね。一旦この不細工女神ぶすてぃをぶん殴っていいか?」


「あ、あと。昨日あなたがチェストを私たちに預けていたんです。それがこれです」


 ナオトは目の前にチェストを出された。


「なるほどね、この中に最強の装備が入ってあるってことや。そうと決まったらとっとと魔王をしばいて元の世界に帰るぞ!」


 ナオトはチェストを思いっきり開いた。


「ん? 見た感じ全部サビてんだけど」


 チェストの中身はすべてサビていてにおいも臭いものだらけであった。


「いやいや、まだ早いよな。こういった物が逆に最強であることって多いから。ゲームでもそういう展開あるから」


「いやあ、これすごいサビてますね。これじゃ使い物になりませんよ」


「はい? 今なんと?」


「これ使い物にならないと。私、スキル『鑑定』を持っているんですけどただのサビている装備一式ですよ。言い方が悪くなりますがごみですよ」


「そそそそそそんな訳ないじゃないですか。今に着てみれば進化が発揮されて……」


 ナオトはそう言いながら胸のチェストプレートを持ち上げた。


「うぎゃあ! これ粉々に壊れたぞ! こっちも壊れた!! ていうか全部壊れたんだけど!!!」


「だから言いましたのに。使い物になりませんと」


「いやいや、そんなわけ、この手紙に書いてあるんですよ。最強の装備がもらえるって……ん? 米印で小さく書いてあんだけど」


『※異世界召喚にはバグが発生するので正しく召喚できなかったり、神具やチートスキルを送ることができないことがあります』


 ナオトは床に膝から崩れ落ちた。


「そんなことが起きていいわけないだろ……」


「あ、あの。大丈夫ですか?」


「あ、そうや! まだチートスキルが判明してないやん!! まだ希望はあるやん!!」


 ナオトは立ち上がり金髪の女性に近寄った。


「すみません! ステータス判定とか能力値確認とかの道具はありますか! あったら今すぐに使わせてください!」


「は、はい! それだったらエントランスに置いてあります」


「じゃあ、行きましょう! すぐに行こう!」


 ナオトと金髪の女性は部屋を出てエントランスへと向かった。

 

「こちらがステータス判定機です。この球の上に手をかざしてください。そうすればあなたのステータスやスキルが判明します」


「ここからが俺の物語のスタートよ。 さて、世界でも救いますかね」


 ナオトは手を球の上に置きかざした。


『見てみて! まま!! 僕のステータス攻撃力が13もあったよ!!』


『あらあら、本当ね。 とっても強いわ』


「ふ、可愛い子供が喜んでいるよ。だけど俺はすました顔で別に驚きもしないよ。なんたってチートスキルがもらえてるはずだから。そんでもってみんなからちやほやされたりして……ぐへへへ」


「はい、出ました。あなたのスキルが『適応』ですね」


「あ、あれ? マナ無限とかバリアとかその類だと思ったのに。それってどういう効果ですか?」


「えっと、ジョブチェンジの際にスキルポイントを使わなくてもいい効果ですね……うふ」


「え、今笑った?」


「ただ、ジョブチェンジは1スキルポイントを使うだけなので……ふふふ。ま、まあ、あったら便利だなってスキルですね!」


「やっぱり笑ってるよね」


「ステータスはも、もっとすごい、で、ですよ。攻撃力がさ、3しかない。うぐううううう!!」


「さ、3?? あ、あれえ、さっきの子供より低いの俺? もう、冷静沈着だったお姉さん腹抱えて笑っちゃってるよ」


『ねえ、まま? 攻撃力が3ってどんなけなの?』


『うーんとね、その辺のワンちゃんかそれ以下だよ』


『えー、あのお兄ちゃんワンちゃんより弱いの?』


『しー かわいそうだからしーだよ』


「あ、そうなんだ。俺って野良犬といい勝負なんだ。なんだったら野良犬より弱いんだ」


 ナオトの方にごつい手がポンと乗った。


「なあ、兄ちゃん。大丈夫だぜ、野良犬とほぼ同じステータスしてても。俺にいつでも頼れよ」


「あ、なんだろう。こわもてのお兄さんが同情してくれちゃったよ。僕のステータスを見て。目の前のお姉さんは腹抱えて笑ってるし、ていうかチートスキルは?」


 お母さん、お父さん。僕ナオトは初めて涙を流します。

 ナオトは再び膝から崩れ落ち涙した。

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