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9/21

9.煽るのは得意ですわよ

* * *





「夜ご飯おいしかったです!」

「ほんとそれ! まさか旅行なのに野宿じゃないとは驚きだよ〜」

レイが魔素の説明をした日の夜、私たちはノア様に夕食をいただいて上機嫌だった。

しかも野宿ではなく、王家御用達の大きなホテルを1フロア丸々借りてくれたらしい。

規模が大きくて怖い


「今までの旅行はは野宿だったのですか?」

ギクゥッ

「シ、自然と触れ合ウコトデ、ヨリ聖女としての力を高められルソウデス…」


うーん。演技は苦手とはいえ、流石にバレたかもしれない。

聖女教育(そういえば王妃教育も)がどれだけスパルタでサバイバル精神を鍛えられるものなのかを。


「聖女修行はなんでもするんですね…」

「はいっ!」


ノアが訝しげに呟く。

ルーナはおそらく、『よかったぁ! バレてない!』とか思っているが、いくらなんでも公爵令嬢が野宿しているというのはおかしな話だ。しかも未来の王太子妃と言う肩書きまであったと言うのに。


「美味しいものもたくさん食べられて、素敵なホテルに泊まれるなんて、今日はとっても幸せな1日ですね!」


ルーナが満面の笑みで呟くと、ノアが目を見開く。

(あれ、今の独り言聞こえていたのかしら。)


「そうですか…」

「…?」

ノアはゆったりとルーナに微笑みかけ、満足げに返事をした。

それはルーナには聞こえないくらい、小さな声だった。

(急に微笑みかけられると、顔面の美しさで思考力がどこかに行ってしまうからやめてほしいです…!)




* * *




「…!」

今、どこかで人を殴る音がした…!


「ルーナ? なんかあったの?」

「今、どこかで喧嘩が起きてるかもしれない!」


レイにそう言って私は走り出す。


「おっけ! 王子様行くぞ!」

「は、はい!」


微かな音と、魔素の動きの乱れから、すぐに場所は見つかった。

さっきレイに魔素のことを教えてもらってよかったわ。

いつもみたいに音と気配を辿るより、よっぽどわかりやすいから…!


辿り着いた先は、一つの家だった。

特別裕福なわけではないけれど、よく手入れされていて、素朴な感じが可愛らしい。

その家の前に、跪いている男性と、それを見下ろしている美しい女性がいた。


「触らないでください!」

「リンダ。そんなこと言わないで、一緒にお茶しようじゃないか。」

「私はあなたとお茶したくありません。早く帰ってください!」


さっきの殴る音は、リンダと呼ばれた女性が男性を叩いた音だろう。

殴られたと言うよりもビンタされたものなのか、うっすらと手の形に赤くなっているようにも見える。


「このお茶は、特別なルートを通して手に入れた、本当に貴重なものなんだ。」

「でしたら尚更、自分自身で飲まれた方がよろしいのではないですか?」

「私はどうしても、リンダに飲んで欲しくて!」


男性は今にもリンダさんにつかみかかりそうな勢いで立ち上がる。

(あっ、これは危ない!)


レイとノア様が動く前に、私はその間に駆け出す。

(令嬢が走るなと言われようと、実際私はただの冒険者みたいなものなんだから、別に良いわよね!)


「それ以上は近づかないでくださいね。」


私は敵とみなした男性の、リンダさんに伸ばした手をパシッと掴む。

男性はパッと私の方を見ると、せっかく一瞬だけ静かになったと言うのに、再び怒鳴り始めた。


「俺はリンダに話しかけているのだ! 関係ないやつは引っ込んでろ!」

「そう言うわけにはいきません。このままだと、リンダさんに危害を加えかねないので。」

「貴様! 私に楯突くとは、どういうことかわかっているのか!」


リンダさんに伸ばした手を引っ込め、今度は私に殴りかかる。

それを体の重心をずらしてヒラリとかわすと、男性は驚いたように体を震わせる。


レイとノア様が飛び出しそうになったのを目配せで止めると、それでも出てきそうなノア様をレイが止めてくれた。

一国の王太子様を、喧嘩の仲裁に出させるわけにはいかないじゃない。

(レイ、こういう時は優秀でありがたいわね)


「おまえ、リンダの護衛か…? リンダ!なんで護衛なんて雇ったんだ!」

「私は知らないわよ!」

「はい、私はリンダさんの護衛ではありませんから、リンダさんを責めないであげてくださいね!」


にっこりと笑って声をかける。

相手が怒っている時は、にっこりと笑うことで、より怒りをヒートアップさせることができるのだ。

(怒りが限界まで達している方が、頭で考えられなくなって弱くなるからね)


「貴様! 私はエユリール王国のベーティン伯爵家の当主だ! 平民風情が私に楯突くということが、どういう意味かわかっているのか!」


ベーティン伯爵は狂ったように捲し立てる。

(あぁなるほど。ベーティン伯爵は美しいリンダさんに恋をしたけど、こんな性格の伯爵には嫁ぎたくないと言うわけね)


「平民風情というなら、そこのリンダさんも平民ですよ?」

「リンダは私の妻となる女だ! だから伯爵夫人だ!」

「リンダさんは嫌がっているみたいですけど?」

「ふざけるな!」


もう一度拳を握ると、今度は下から殴ってくる。

それもぴょいと避けると、伯爵は剣に手を伸ばした。


「もう良い。生意気な小娘は、エユリール王国には要らないよなぁ。」


目が座っている。本気で私を殺すつもりだ。

ちょっと煽りすぎたかしら。

流石に剣相手に丸腰はきついわね… でも、魔法を使うのは卑怯よね…


「そこまでだ。」


ノア様が私の横に立つ。対戦する気満々だった私の肩の手をかけると、私をぐいっと引き寄せた。

「ひゃぁ!」


「なんだ貴様!」

「私の婚約者に手を出したのですから、それなりの報いは受けてもらわなければ。」


ノア様は私を庇うように前に立つと、伯爵に告げた。

(婚約者…)

耳が赤くなるのを感じると同時に、ノア様の手が私の頭に置かれる。

華奢な見た目をしているけれど、ては大きくて少しゴツゴツしていて、男性の手だということがよくわかる。


「そのクソガキが婚約者って言うんなら、もっと教育しとけ! 貴族には楯突くなとな!」


(クソガキ…)

私は18歳だ。もう成人しているし、子供ではないのに…


「確かにあなたは貴族だが、逆に私に怒鳴るということがどういうことかわかっているのか?」

「あぁ! んだそれ! 平民風情が何様のつもりだ!」


えっ、ノア様が平民…?

比較的装飾が少なくて動きやすい服の私はともかく、めちゃくちゃ上等な服着てますよ、彼。


その時、私たちの近くにワインレッド色の光が集まった。

「ノア様。手配完了いたしました。3日後には届くようです。」


ジェイクさんがニコニコしながら転移魔法で登場する。

『あれ、出てくるタイミング間違えました?』って顔してるわね…

何せ、仕事の報告をしたら、こんな修羅場に遭遇しているのだ。


「ジェイク、タイミングはぴったりだ。よくやった。」

(ジェイクさん、そんな露骨に『安心したぁ』って顔をしなくても…)


「ノア、だと?」

「あぁ、私はこの国の王太子、そして彼女は、私の婚約者だ。」

こんにちは世々原です!朝からたくさんの人に見ていただけているようで驚きました!

ありがとうございます!

実は今まで、ブックマークしていただけている数とか、評価をどこで見れば良いのか分からなかったのですが、たまたま見つけて、想像以上の方に見ていただけているのがとっても嬉しかったです!

私は極度の機械音痴ですので、何か良い機能で私が知らなそうなやつがあったら、教えてほしいです!


ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!

いいねだけでいいので、押してくれると喜びます!


(欲を言うなら、これからも頑張りますので、よろしければ下の


☆☆☆☆☆を★★★★★

にしていただけるとさらに喜びます!)

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