10.優しい声はどこに!?
そういえばノアの本名書いてなかったなと思いまして…
王太子様なので、そのまま国名を取って
ノア・アークライル・エユリール です!
出てくる予定はありません!
「ノア、だと?」
「あぁ、私はこの国の王太子、そして彼女は、私の婚約者だ。」
伯爵が顔を真っ青にして、何やら口をパクパクしている。
『そんなわけ…申し訳なく…いやでも私は…知らなかったんです…なんで…』読唇術を使える私からすると、何を言いたいかなんてすぐにわかる。
なんだか聞きたくない内容だったわ… 自己保身的で私の苦手なタイプね…
「ノア様、公にしてよろしいのですか?」
「あぁ、どうせもうすぐ公開するのだ。構わない。」
「しかし…」
「こんなところで公開したくはなかったがな。」
確かに、私との婚約はまだ広められていない。
それを一番最初に伝えるのが、国民ではなくこんな貴族になるなんて…
いくら契約上のものとはいえど、少し悲しいのは事実。でも、困っている人を助けるためなら仕方ないよね。
私は少し悲しいのを隠して笑いながら『大丈夫です。仕方ないですよ』と小さく呟く。
(作り笑いは得意ですから…)
「っ…」
ノア様が口を手で覆ってそっぽ剥いてしまった。
(あぁ、あの美しい顔を見れなくなってしまったわ…)
「その、王太子殿下! 私は知らなかったのです! ですから、私に非はないはず。婚約者殿に危害を加えたことを咎めることはできないはずです。」
言い訳ばかりね…
真っ青な顔をしているのに、いまだに謝罪の言葉ひとつも出ない。
別に謝罪がほしいわけではないけれど、こんな人に支えている人や領地に住んでいる人がかわいそうに感じてしまう。
ジェイクさんも同じ気持ちなのか、いつもの飄々とした態度ではない。
レイですら、口をへの字に曲げている。
「確かに、婚約者のことを発表していなかったから、それは咎めない。だが、なぜ私の顔を見て『平民風情』と言った。自分の忠誠を捧げる相手の顔も忘れたのか?」
「そう言うわけでは!」
「伯爵位を持っていると言うのに、私の服の質もわからないのだな?」
「そんなことっ!」
「私はあまり服に値段をかけないが、それでも上質なものに変わりはない。そのくらいも見抜けずにどうする。」
ノア様のあまりに低い声に、背筋がゾクっとする。
いつもの優しい声とは比べ物にならないくらい、冷たくて、残忍そうで、威厳のある、王の声
「そういえば伯爵。その服は世界での最高級の布や宝石で作られているな?」
「は、はい! さすが殿下!」
「しかし、ベーティン伯爵家の領地は、年中疫病が流行っていて、とても収入を得られる状況ではないのでは?」
「それは…」
「それなのに高級な服を買えるなんて… 伯爵は一体何を隠しているんだ?」
背筋の凍るような声から一変、幼子をあやすような甘い声へと変わる。
でも決して優しいわけではなく、慈悲深いような声でもない。
どこか嘲笑うような、そんな声だ。
「申し訳…ありませんでした…」
それだけ言うと、伯爵は気を失ってしまった。
後ろで庇われている私でもゾワっとした感覚が恐ろしかったのだ。あの声が自分に向けられたら、私も気を失ってしまうかもしれない…
「ジェイク、村の教会に伯爵を運べ。あと、伯爵の家に騎士を送って、脱税の容疑で調べさせろ。」
「全く今帰ってきたばっかりだと言うのに… 承知いたしました…」
ジェイクさんの周りにワインレッドの光が集まり、姿が見えなくなる。
(転移魔法はかなりの魔力を消費するのに… ジェイクさんの魔力も常人離れしているのね…)
改めて、自分の嫁いだ国に驚く。
王族でもない側近が、あんなに何発も転移魔法を使えるなんてね…
一般の貴族でも、時間をあけて1日に二発がギリギリよ…
「ルーナ、怪我はないですか?」
「大丈夫です! わざわざついてきてくださってありがとうございました!」
「……別に、当たり前のことでしょう。」
ノア様がさりげなくエスコートしてくださるのを嬉しく思いつつ、ホテルに戻る。
いつのまにか隣にいたレイは、なんだかニヤニヤと笑っていた。
『なんで?』と聞こうと思ったけれど、そういえばいつものことだと思い、心の中にしまう。
戦ったり、魔法をたくさん使ったりしても、心配してくれる人はいなかった。
レイはなんだかんだで優しいし、大切な存在だけど、私の強がりな性格を知っているから、わざわざ心配するような声をかけることはない。
私が辛い時にも、涙を堪えるのを手伝ってくれるだけだった。
(心配してもらえることが、こんなに嬉しいことだなんて…)
真っ暗な夜には異質な、レイの放つぼんやりとした光が、ノア様の背中を照らす。
鼻の奥がツンとしたのは、きっと気のせい───────。
こんばんは世々原です!
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