第2節 剣技
名門大貴族に生まれ変わった俺はスキルレベル0ということで親からは見下され、お荷物扱いされていたのであった。兄も親の影響を受けて俺を見下していた。
兄の名前はリチャード・フォン・アシュラーである。確かに俺がスキルレベル0だが、それに対して兄はスキルレベル5の最高位クラスであった。
確かに名門大貴族の家系で今まで高いレベルのスキルをもっていたのは間違えない。それを考えると必然的に俺はひどい扱いを受けていたのである。
しかし、俺には前世から引き継いだ力と剣技をもっている。それはまさに力に満ち溢れていた。スキルレベルでは到底計れないほどの力を持っていたのであった。
「なぁ、エルニクスお前スキルレベル0なんだからせめて剣くらいはまともに扱えるようにならないといけないといけないだろ?俺が稽古つけてやるよ。」
突然兄のいうことに俺は戸惑いを感じていた。なにせ本気を出せば力のことがばれてしまうし、この屋敷をこっぱみじんにしてしまうかもしれないからであった。
前世では本気で剣をふるえば山の一つくらいは吹き飛ばせるほどの腕を持っていたからである。俺は内心焦っていた。
(どうしよ。本気だしたら本当に殺しかねない。)
俺は言い訳をしてみた。
「兄貴に稽古をつけてもらうだなんてもったいないよ。それに俺に稽古つけてる暇あったら兄貴は一つでも魔法を習得したほうがいいよ。」
俺を見下してる兄は俺の言い訳が気に食わなかったのであろう。俺に対して反抗してきた。
「あぁ?お前に選択する権利なんてねぇんだよ?お前、立場わかって言ってるのか?」
俺は仕方なく兄の申し出を受けることにした。
(なんとか慎重にばれないように手を抜こう。怪我の1つや2つくらいは覚悟しておいたほうがいいだろうな?)
俺は覚悟を決めて剣の稽古場である道場に兄と来たのであった。そこには親がいたのであった。
「俺がお前より剣も格上であることを教えるためにセッティングしたんだぜ?感謝しろよな?」
そこには俺の幼馴染のエリザ・ローイ・フォン・シュナイザー、エリザもいたのであった。兄はこのエリザを好きであり、いいところを見せるために呼んでいたのである。
エリザも名門の貴族であり、スキルレベルは兄と並ぶ5であった。しかも特別なスキルを持っていた。それは勇者のみに与えられた「神の威光」と呼ばれるスキルであった。
そのせいか俺の隠しておいた剣技に疑問を抱いていたのであった。
「エル~がんばれ~!」
声援は兄ではなく俺に向けられていた。そのことが気に入らなかったようである提案をしてきたのである。
「なあエルニクス。どちらかが勝ったらエリザの婚約者になるっていうのはどうだ?エリザも文句ないよな?」
「うん別にかまわないけど本当にそんな約束していいの?」
「何を言ってるんだエリザ。俺がこいつに負けるわけないだろ?」
「わからないよ?エルは剣の稽古いっぱいしてたからもしかしたらっていうこともあり得るかもね。」
エリザの視線は俺の力を見抜いていたかのような目をしていたのであった。さすが勇者だけのことはある。今回は隠せそうにもない。
俺は兄が死なない程度に加減をして勝つことにした。
審判は俺たちに剣を教えてくれている家臣がすることになった。
「では、リチャード様。エルニクス様。準備はよろしいですね?」
「ああいつでもいいぞ。そうだ手加減してやるから先に攻撃してこいよ。」
「いいの?兄貴が負けるかもしれないよ?」
俺はちょっと挑発してみた。そのことに腹をたてたのか。兄は本気で俺のことをつぶしにかかってくることが予想できた。
「いうじゃねえか。エルニクス。でもまあおまえみたいな素人同然の剣技なんてたかがしれてるだろうからこのハンディは取り消さないでやるよ。ありがたく思えよ?」
俺はこれはチャンスだと思った。兄は油断していたという言い訳が立つからである。少し本気でいこうと思った。
「じゃあ遠慮なく本気でいかせてもらうよ。」
「ああどうぞ。ご自由にお前の最初の一撃なんて軽くかわしてやるからよ。」
俺は審判の合図とともに兄の1番隙の多い箇所をねらったのである。勝負は一瞬だった。神速で俺は打ち込み兄を唖然とさせてなにがおこったかわからないまま試合は終わった。
「うそだろ?俺がエルニクスに負けるとかありえねえだろ?でもまああれだちょっと油断してただけだ。なにせハンディをやったんだからな。」
エリザは喜んでいた。俺と婚約できることに嬉しさを感じていたのであった。
「やった~エルの勝ちだね。シュナイザー約束通り私エルと結婚するからよろしくね。」
兄は怒りをあらわにしていた。
「なに言ってんだエリザお前は俺のものだ!だれにも渡すわけねえだろ?!」
「結果はどうであれ勝ったのはエルだし約束通りでいいよね?それとも私と戦う?本気だすよ?」
兄は勇者のエリザの言葉にぐうのねもでなかったのである。
「それに私本当はシュナイザーよりエルの方が好きだったからちょうどいいわね。油断したというか剣技の格の違いを見せつけられたって感じじゃない?エル本気出してなかったよ?」
「なんだと?!エルニクスお前本当に手を抜いていたのか?!」
ここまできたら後には引けない。俺は覚悟した。
「その通りだよ。兄貴隙だらけだった。あれじゃあどこでも打ち込んでください。って言ってるようなもんだった。」
兄は激怒し、捨て台詞をはいてその場を去ったのであった。親の前でボロ負けさせた俺はあとで親からこっぴどく叱られたのであった。それはまさに理不尽とも言っていいほどの
内容であった。
しかし、親に言葉で攻められていたことを慰めてくれるエリザであった。この日はなんとかエリザの慰めで元気が出たのであった。