余命3カ月
再検査当日。母に病院まで送ってもらった。
「じゃ、お母さん行くね」
そういって私に手を振り、母は仕事に向かった。
風が冷たい。もっとあたたかい恰好をするんだった。
フードを深くかぶり、うつむきながら速足で病院に入る。
「・・・余命は3カ月ほどかと」
「…… は?」
何を言われたのか、自分がどんな顔をしていたのか、よく思い出せない。
ただ、これだけはわかった。私はあと3か月で死ぬ。
帰宅した私は、何時間も部屋の天井を眺めていた。何を考えるでもなく、ただただ時計の針の音を聞いていた。
「あや、いるの?いるなら電気つけなさいよ。こんなに真っ暗で何してるの!再検査はどうだったの?」
仕事から帰ってきた母の声で目を覚ました。どうやら眠ってしまっていたらしい。
「大丈夫だったよ」
とっさに口からでた言葉だった。隠そうと思っていたわけではない。ただ、母の顔を見て、これ以上私のせいで傷ついてほしくないと思ったのだ。
「そう、ならよかった。ごはんできたら呼ぶからね」
母が部屋をでたあと、私は涙が止まらなかった。
別に生きたかったわけではない。これまでにも何度か首を吊ろうと思ったことがある。
それでも、3カ月はないだろう。いくら何でも。
夜な夜な自分の診断名を検索しては、生存率をみて絶望した。
手術をすることも、治療をすることもできない。
終わりの見えない引きこもり生活に、突然あらわれた終わり。
私は、この終わりを待つことしかできない。