27歳、独身女、ニート
いつもと変わらない朝。いつもと変わらない景色。そして、毎日少しずつ老けていく私。
中西あや、27歳。引きこもるようになって早5年。外出することはめったになく、衣食住はすべて親に任せっきりだ。学生時代、周りにならって大学に進学し、周りと同じように就職活動をした。しかし、私だけがうまくいかず、ひとり取り残されてしまった。その差はいったいなんだったのだろう。この5年で散々自問自答してきた。そのうち考えることもやめた。どうせ考えたってわからないのだから。悲しくなるだけだ。
「あや、ごはん出来たから下に降りてきなさい」
夕飯の時間だ。スマホの時計を確認して部屋を出る。一日中カーテンを閉めきっている私の部屋は、朝なのか夜なのか、まるでわからない。
下に降りると、いつものように父が大音量でテレビを見ていた。父の好きなクイズ番組がやっている。今日は水曜日のようだ。テレビの音は、家の気まずい雰囲気を多少緩和してくれるので、ありがたい。
「何か届いてたわよ、病院から。この間の人間ドックかしら」
ああ、そんなものを受けていたなと思いながら青い封筒を受け取った。我が家では人間ドックが毎年の恒例行事になっている。健康志向の母の勧めだ。
「あらやだ、お父さんコレステロールの値がよくないってよ。お酒ひかえたほうがいいんじゃない?」
「そうか。ひかえるほど酒は飲んでないと思っていたがな。年齢には抗えんな」
両親の会話を適当に聞き流しながら、黙々と箸をすすめる。
「私は再検査っぽい。来週にでも行ってくるわ。」
少し心配そうな顔をした母をよそに、夕飯をさっさと済ませた私は再び自室へと戻った。
再検査だなんて本当に面倒だ。どうせ、いつものように異常なしでした、良かったねで終わるんだ。
そのために服を探して顔を洗って、外に出なければいけない。ああ、本当に面倒くさい、憂鬱だ。