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042:鉄錆ゴーレムはキラキラに輝いた。:

 100を超える龍達が作り出した竜巻ドームは一片の隙間もなく厚く覆われ、この陽の出た天空において全く光が射すことの無い暗闇が作り出される。

 暗闇の真下ではウゾウゾと蠱毒の壺の中のように龍達が所狭しとひしめき合っていて気持ち悪い。

 そんな中を龍達にすれば一匹のハエ程度の大きさのわたしが駆け抜ける。

 龍達はハエを払うが如くその尻尾や顎や腕を振り回すが如何せんこちらの反応速度と加速度はハエと人間以上にあるようだ。

 数十のハエ叩きが同時に襲ってくるが時に側面バーニア、時にはマフラーマントを凧のように使い躱し、隙あらばハエ叩きを突き破ったり、折在れば如意宝珠を叩き割る。

〈ふははははぁぁあ! オーリオール見て下さい。龍がゴミのように落ちていきますよ!〉

「あばばばっぱぱっ!?」

〈あっはっはぁぁ! それでも戦士か!? その筋肉は飾りですかぁぁぁ!?〉

「ぷはっ!? でぃ、まっ! ずがっ!?」

〈ほらほらほらぁぁぁ! 落ちろ落ちろ! 火蜻蛉がぁぁぁぁ!!〉

「じぃっ!? ろぁ!? っがごぁぁぁぁ!?」


 ちょ!? ラーラレーアさん!? 激しい!? 急制動旋回が厳しいですぅぅぅ!


 0.5秒前方に急加速したと思ったらそのスピードを維持したまま3Rのヘアピンカーブからの前方バーニアをフカシてのバック走、さらにさらにそこからフィギアスケートの如くルッツ、ダブルトゥループ、トリプルサルコウと華麗にスピンを決めていく。

 因みに全部空中でやっているただのスピンなので、上記のはただのイメージであるが。

 そして、マフラーマントをはためかせて急制動を掛けると今度は後方バーニアを全開にして突っ込む。

 正面には龍の顎が迫っていたがその顎の先端に乗り上げてジャンプ台のようにすると跳ねあがるようなトリプルコークを決めやがる。しかも3回。

 いや、このトリプルコークは素晴らしいわ。96.00点あげちゃう。

 全部空中なんで(ry

 もはやここはゲレンデ。とんだドラゴンパークゲレンデでトリックし放題である。



 そうやってダッシュアンドGO&スピンを繰り返す事数十回。

 龍の戦士達はその数を50以下まで減らしている。

 対してこちらはわたしの悲鳴くらいしか損失していない。

 何故スピンを入れるかは謎である。

 謎であるが強い。

 ラーラレーア無双が過ぎる。

 逆にマフラーマントがその間も魔力を回収しており体にパンパンに魔力が詰まってきている。

 は、吐きそう。漏れそう。もう口からエクトなんちゃらが半分はみ出ている気さえする。

 あ、やばい、わたしの尊厳が損失されるかも知れない。

 すでにわたしは最早変な悲鳴を上げるだけの魔力圧縮機に過ぎなくなっている。

 勇者リュウセー君の気持ちが少し判る。

 いやまてよ? 意識が無い分、勇者リュウセー君の方が幸せまであるか!?


「アンギャァァァァ!」


 また1匹、龍の戦士が悲鳴を上げて落ちていく。

 最早如意宝珠には興味の欠片も無いのかラーラレーアは無造作に砕いている。

〈そうだ、いい事を思い付きました。折角魔力が有り余っているのです。全体攻撃技を開発するのも悪く無いですね。オーリオール少々操作を任せます。事故らないでくださいね〉


 というと操作を明け渡される。

 え? これどうしろと?

 わたしさっきまで魔力圧縮してゴーゴー言ってただけなんだけれど?

 ほらほら、急に止まるから龍達もこちらを伺っているけれど、そろそろ「あ? これエネルギー切れ? ここチャンス?」的に目がギラギラしてきておりますよぉぉぉぉ?

「ま、またなトッツァァァン!!」

 三十六計逃げるに如かず。

 全力で魔力噴射を行い一直線に上空目指してロケット砲の如く飛び出す。

 バビュゥゥンとひとっ飛びだぜぇぇぇ!


「お、おうのう!? 竜巻の檻が!?」

 バヒュゥゥンしたはいいがその先には龍達が作り出した分厚い竜巻の檻。

 ラーラレーアの補助の無い今のわたしの突撃では檻を突き抜けられず敢え無く飲まれてグルグル刑に処されてしまう。

 グルグルグルあー気持ち悪い。機体もミシミシいっています。

 やべぇ事故ってしまいましたよラーラレーアさん!

 たっけて、たっけて!

 たっけてウラーナさぁぁぁん!


〈お待たせしました。はぁ、たった5秒でなぜこの状況まで持っていけるのでしょう? 最早才能ですね〉


 えへ! 褒められちゃった!


「それよりどうしよう!? 機体がミシミシしているんだけれど!?」

〈こんなもの引き千切れば良いのです。このメテオローラはそう簡単にやられはしないのです!〉


 そういうとラーラレーアは操作権を強奪する。

〈オーリオールはマフラーマントを持って”トライデントモード”へ!〉

「アイアイキャプテン! マフラーマント”トライデントモード”変形!」

 わたしはマフラーマントを両手で首元から掴み取るとマフラーマントを一振りして魔力をさらに詰め込みながらビィィィンと伸ばす。

 魔力を極限まで圧縮したマフラーマントは金満装甲を思いださせる黄金の輝きを放ちギュルギュルと渦巻を巻きながらその存在を発現した。

 その二振りの突撃槍を両手に持って前に構えれば、ガンチャリオットの先端の大振りの槍と合わせてその威容は三股のトライデントとなる。

 これが”トライデントモード”だね。


〈オーリオール両手を突き出して構えてください。先ほどを超えるスピンが掛かります。耐えてくださいね? ププ〉

「あいあーい‥‥‥」


 わたしの消極的な了解の意を受け、ラーラレーアがメテオローラの全方向のバーニアを渦を描くように方向調整する。

〈ふぁいあぁぁぁぁぁ!〉


「オロオロオロオロロロロロロォォォォ」


 何かをキラキラとまき散らしながら龍達の作ったいくつもの黒い竜巻とは逆方向に渦巻いた一条の金色した竜巻が喰い裂いていく。

 厚い竜巻の作った黒色に塗られた空がその蒼穹を取り戻す。

 わたし達はそのままその蒼穹を突き進んで天空城付近まで駆け上がる。


〈勇者リュウセーもとい小オカンは無事天空城へ着いた模様ですね〉

 見ればわたしの奮闘を見もせずに、プルトンもアルトアレルも大オカン達やアイアンゴーレムでさえ龍の尻尾を前に小躍りしてるではないか。

 おいおい君達、それ先に食べるとか無いよね?

 わたしの事ちゃんと待つよね?

 おいぃぃぃぃ! プルトン! 何鱗剥いでるんだ! まだだからな!

 くそ、こうなったら直ぐにでも下を片づけてあそこに駆けつけなければ。


〈さぁ! さぁ! さぁ! ここで先ほどラーラレーアが考えました広範囲殲滅魔法のお披露目ですよぉぉ!〉


「いえーい、ラーラレーアさんやっちゃえー!」


 そういうとラーラレーアはわたしの髪を操り8つの髪房に縒り分ける。

 分かれた髪房の先端は龍の顎のようにガパリと開くとその口内に三角の魔法陣を作りだす。


〈これがインドラの矢というものだ〉

 何かに浸ってる臭いラーラレーアがそう呟くとその髪房の喉奥から極太の金色の杭が現れた。

 その杭は口内に張られた三角形の魔法陣を通ると瞬時に加速し、8条の矢となって放たれる。


 インドラの矢は龍達の目からどう見えた事だろう?

 きっと何かが光った程度にしか見えなかった事だろう。

 そう思う程に龍達の如意宝珠がただただ割られていき、また8体の龍がその姿を雲海の中に消していた。


 後はこれを繰り返すのみ。

〈次弾装填完了、行け『:インドラの矢:』〉


 ラーラレーアの無慈悲な言葉で、次も8条の矢が降り注ぐ。


 またも次々と龍達の如意宝珠が割られていく。


 が。


 ひとつのインドラの矢がその光の軌跡をねじ曲げあらぬ方向に消えていく。


 そこには碧翠色の中で今まで埋もれていたのか1つだけ異なる色を持つ龍がいた。

 

 体躯の色は夕日と見間違わんばかりの茜の鱗。

 鹿の角を持ち、他の龍に比べその面は幾分ホッソリとしており女性的な印象を受ける。

 何か姫って感じだ。

 

 特徴的なのはその瞳だ。


 体躯よりも紅い、朱い、紅蓮のような赫い色をした瞳。


 その赫き瞳がこちらを覗いていた。


 ピロン♪

 :鉄錆ゴーレムのオーリオールは龍の姫と戦闘を開始した。:

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