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030:鉄蜘蛛ゴーレムは思い付いた。:

 ゴゴゴゴゴゴゴというボスが出現するような感じでプールから水が迫りあがってくる。


 すでにプルトンもアルトアレルも臨戦態勢をとっている。

 さすが勇者の従者!

 わたしもスパイダーモードになっている。

 うん。何も見えない。

 スパイダーモードはわたしの顔面が腹側になってしまうので見えるのは地面および後方だ。しかも逆さ。


「くるにゃ!」

 ザッパァァァァと水飛沫が大量に降ってくる。


「『メーア、プーヒ、ポーメガラン・フーラ:火焔榴乱舞:』」

 

 アルトアレルが牽制に魔法を発動する。

 炎の塊がいくつも水飛沫を蒸発させながらプールから出た敵へと殺到していく。

 蒸発した水蒸気が場を瞬時に満たした為に、更に視界が途切れる。

 

 ヒュン!

 という音をわたしの耳が捉える。

 

〈なんとぉ!〉

 瞬間、ラーラレーアが髪脚を床面に叩きつけるようにして体を宙に舞わせる。

 さらにその時にはプルトンやアルトアレルの周りにも髪糸の結界を張り巡らせて終わっていた。


「すごぉ!?」

 ラーラレーアの戦闘力が何気にすごい。

 いつの間に糸結界なんて作ったのよ?

〈スパイダーモードになった時には既に投げてましたよ。それより風切り音の正体は「糸」です〉


 風切り音をさせたのは、髪糸と同様細い線、「糸」だった。

 ラーラレーアの髪糸結界と競り合い「糸」同士がギャリギャリ音を響かせ火花すら散らす。

 とてもただの「糸」とは思えない。

 間を置かずヒュンヒュンと更に二条の糸の風切り音がする。

 ふはは無駄無駄無駄ぁ!

 ラーラレーアさんの髪糸結界の敵ではないわ!

 と高らかに心の中で叫んだわたしだったが、それは糸での攻撃では無く、先端に物体を括りつけてある打撃となって髪糸結界を強引に潰していく攻撃だった!

「にゃぁぁぁぁぁ!」

 プルトンがその打撃に自らの武器であるハンマーで迎え撃つ。

 インパクトの一瞬!

 先端の物体はガバリと開いて8本の足を持つ蜘蛛となった。

 蜘蛛は瞬時に糸を吐き出しハンマーの軌道から身を逸らす。

 空ぶったプルトンも、それを感じさせない動きで慣性を殺し瞬時にハンマーを引き寄せ再度「蜘蛛」を叩き潰さんと振り被る。


 蜘蛛?

 あ。

「ちょいストァァップ!」


 わたしの掛け声に両者ともピタリと動きを止まる。

 その蜘蛛のフォルムは見た事があった。

 ケオーネラビリンスで。いっぱい。もっと大きかったけれど。


 だんだんと晴れていく水蒸気。

 そこには果たしてサンドスパイダーゴーレムにして缶カラの腕章をした「オカン」が降参とでも言うように缶カラを付けた両前脚を天に向けていた。




「オカンも勇者リュウセー君のギフトに巻き込まれてたんだね」


 こちらの言葉を理解してても言葉は話せないのかコクコクと頷くオカン。

 実はプルトンもアルトアレルもオカンとは面識があったらしく、両者はすぐに和解し、アルトアレルは友好の証「霊銀鉱」をいただいていた。

 その顔は霊銀鉱が再び手に入った事で満面の笑みである。


 うんうん。よかったね。

 これで隠れてピチャピチャ食べないでも良くなったものね。


「それでその小さいオカンは何? 子供なの?」


 そう、先ほど質量兵器として投げて来られたのは小型のオカンであった。

 腕に名前の由来でもあった缶カラまで装備している。


 オカンは説明しようとしているのかシャーシャー言ってるが全く意図が掴めない。

 まぁただ増えただけだしどうでもいいか。


「この間は見にゃかったにゃ。どこにいたのにゃ?」

「シャーシャーシャー」


「おう全然わからないね」

 ただ、オカンの前脚はプールの奥の方を指していた。

 そっちにも何かあるのかな?

 一応そちらも覗くとそこは糸だらけでもはやオカンの巣となっていたが、その床や壁、天井も木板の嵌っている空間になっていた。

〈これは恐らく「サウナ」です。こちらも下のゴミ焼却施設が可動しれば使えるかもしれませんね〉


「ここはサウナだって」

「おー、サウニャにゃね」

「え? サウナは判るの?」

 プルトンはうんうんと頷いている。

「サウニャはリュウセーが開発した熱い所にゃ。俺は毛が濡れるので嫌いにゃが王国では結構人気があるにゃ」


「私はサウナは大好きね。冒険の疲れが癒えるもの。是非可動して貰いたいわ」

「簡易のサウナだったら魔法で出来るんじゃないの? 極論温かい水蒸気で部屋を満たすだけだし」

 ってラーラレーアが言ってる。

 確かにあれだけ水や湯をコントロール出来るのに施設が無いと出来ないのは分からないね?

「た、確かに、そうね。考えたことも無かったわ‥‥‥多分出来るわ」

 アルトアレルは少し頭の中で考えた後、呪文を唱え「サウナ」魔法を創り出した。

「こ、これがあれば旅先でもサウナに入れたじゃない。うう、あの日々はなんだったの」


 おお、これがコロンブスの卵的な事象なのか。

 ほら、悲しい時は霊銀鉱をお舐め。



「よし、じゃあ次いくにゃ」

 そうだ、プルトンが探してきた部屋はもう一つあった。

 そちらも見ておかないとね。


「オカンはどうする? わたし達に付いてくる?」


 とオカンに聞くとプールや寝床のあるここに居たいらしく子供たちと共に残るとシャーシャー言ってた。気がする。


 ということでオカンと別れ、再度探索開始である。


「次の部屋も俺には全くにゃんの部屋だか想像つかにゃかったにゃ。にゃんだかトゲトゲしたものがいっぱいで拷問部屋みたいだったにゃ。あ、拷問部屋かも知れにゃいにゃ!?」


 おおう、今思い付いたのかよ。

 まぁでも拷問部屋は無いのではないかね?

 だってゴミ焼却施設、プール、と来て拷問部屋はねぇ?

 ん? 拷問して、水に沈めたり、火で焼却したり!?

 あ、あり得るかもしれない。


 ちょっと怖くなりつつその推定拷問部屋にたどり着く。

 扉は木製で際のみ補強として鋲が打たれた片開き扉。

 ノブも若干錆びているのか赤くなっている。

 え? 血じゃないよ。多分(願望)

 若干緊張した面持ちでプルトンがその扉を開け放つ。

 瞬間、スッと鉄さびの臭いが鼻腔をくすぐる。

 まさかマジで拷問部屋!?


〈ここはどうやら機械工作室ですね〉

 きかいこうさくしつ? んん?

〈あそこにあるのは旋盤、フライス盤、プレス機に溶接機。恐らくあちらの器具庫の中には工具が揃ってるのではないでしょうか?〉


「プルトン。ここは貴方にも想像がつくはずよ。リュウセーの工房にそっくりじゃない」

「‥‥‥俺はあそこ臭くて近づいたこともないにゃ」


「ここも十分臭いでしょうに」


 呆れた視線でプルトンを見つめるアルトアレル。

 まぁ拷問部屋じゃなくてよかったよ。

 

「ここが生きていればリュウセーが色々作れそうね」

「勇者リュウセー君は器用だね」


 あのウラーナのバイクも開発したらしいしね。

 あ、バイク。わたしも欲しいな。

 今度頼んでみよう。

 いや自分で作ってみてもいいね!


「ここの確認はリュウセーがした方が良さそうね。他には部屋は無いのよね? プルトン」

「後は床無し部屋だけにゃ。一応そっちも見に行くかにゃ?」


「時間もあるしそうしましょう。オーリオールはそれでいい?」


「おーけーりょー!」


 そうしてここの床無し部屋も2つ確認してみたけれどやっぱり床は無いままだった。

 床の無い所は真っ暗で何も見通す事はできない。

 ちょっと手を潜らせても何も引っ掛かることなく宙を掻くだけだ。

 ここって落ちるとどうなるのかな?

 そういえばわたしの髪でも試した事ないな。


 あ! オカンだったら糸でロープいっぱい作れるのでは!?


 ついでに勇者リュウセー君が復活する前にあの空もロープで試してみればいいじゃなーい!

 わたし凄くない!?


 ピロン♪

 :鉄蜘蛛ゴーレムのオーリオールはピコンと閃いたポーズをした。:


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