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023:鉄蜘蛛ゴーレムは幌ソリを発見した。:

 いくつかの種を手に入れたわたし達は、農業用ハウスを後にした。

 今の畑の状態では種を蒔けないし、畑を手入れするにせよ水の確保が必要だからだ。

 あれだけ広い農業用ハウスだったが物置は一つしかなかった。

 物置の中はほとんどが草取り用の鎌や土堀の道具らしきものがあるだけで下に落ちていた種が数種類あったのみ。

 日が昇るか等、検証しようかとも思ったが、水などの確保もあるので探索を続行しようとラーラレーアと決めたのだ。


 またグニグニ廊下を進む事しばらく。次の扉が見えてきた。

 今度の扉は両開きドアになっており幅3m以上ある大きな扉だ。

 結構重く、今のわたしの体重(頭部のみ)ではドアを開ける事ができなそうに思う。


〈ふ〉


 と何やらイケメン風な溜息をついたラーラレーアが髪ロープの端を扉の取っ手と床にペチョリと投げつけ魔力を流すと髪ロープが縮んでドアを開け放った。

 そこに何かイケメン要素は必要だったのだろうか?

 推定ドヤ顔して見せたラーラレーアに半眼で応え先に進むよう促す。


〈そうやって会話も無く「目で応えたよ」とかやってると段々すれ違っていって最後にはオーリオールが刺されるのですよ?〉

「え? 何がどうなってわたし刺されるわけ?」

〈それが不変の理だからです〉

「お、お約束という奴ですか?」

〈あいどぅ〉

「刺すのラーラレーア!?」


〈とはいえ会話には会話で、目には目を。報いる事は大事です〉

「いや、それだったらちゃんと目で返したじゃないか〉


〈ラーラレーアは毎回ちゃんとパチパチパチと心の中で拍手を送っていますから等価では無いですね〉


 わたしにラーラレーアの心は読めないからね!? パチパチ聞いたこと無いよ。

 その等価レートおかしない?


 などと言い合いながら扉をくぐると、そこは先ほど寄った農業用ハウスよりも更に大きな空間だった。

 横幅はおよそ30m、奥行はおよそ50m、天井高さ15m程もある巨大な空間だ。

 奥には垂幕に袖幕と舞台のような高台となった場所。

 2階程の高さに張り出した鉄の柵がグルリと廻っている。

 そのお鉄の柵のところどころに丸い輪の付いたボードは知育パッドのゲームで見たような気がする。

 そのゲームは『バスケット』だったと思う。

 あの丸い輪にボールを投げ込むと得点になる奴だ。


〈体育館?〉


 「ここも異世界の施設なの?」


〈そうですね。ここは異世界で主に運動を行う場所です。他にも校長という人族が怪電波を発して子供がパタパタ倒れたり、卒業式という催しでは老若男女問わず涙を流す行事が行われたりしますね〉


「怪っ!? 怖いな校長!? 運動をするのが主なのに何でそんな涙なしで語れなそうな場所になるわけ?」


 異世界人分けわからないな?

 しかし覚えたぞ? 校長の怪電波はキケンだ!



「あれ? あそこにあるのウラーナの幌ソリじゃない?」


 高台にはわたしも乗った事があるウラーナの幌ソリが鎮座していた。


 あれも勇者リュウセー君が回収したのだろうか?


「もしかしてウラーナも中にいたりして? ラーラレーア早くあそこ見てみよう」


 そう思うと居てもたっても居られず、ラーラレーアを急かしてしまう。

 ラーラレーアは何も言わず急いでくれた。

「感謝ー!」


 ちゃんとお礼は言わないとね?

 果たして幌ソリに近づくと、そこではゴソゴソと何かをしている物音がしている。

 あ、本当に誰かいる! ウラーナであってくれ!


 ピチャピチャピチャピチャ。


「ひっ!?」

 中を確認しようとしたがその前に中から異様な音がした。

 怖いけれど、怖いもの見たさでソッと中の様子を見る。

 するとそこにはフードを被った魔術師、人族のアルトアレルが霊銀鉱を舐めまわしているではありませんか!


 ピチャピチャピチャピチャ。

「おいひぃ」


 ――見たわ。見たわよ。見てしまったわ。

 どこかの家政婦の如く「見た」の三段活用ではないを駆使してしまった。

 ここは「ごめんくださいませぇ~」と出ていくべきか?

 

 わたしが悶々と考えている間にもピチャピチャ霊銀鉱を舐めるのを辞めない犯人。アルトアレル。

 わたしは「エツコ」で行くべき? 「リョウコ」で行くべきか? それとも「ゾノ」であろうか?

 

「見たぞぉ! アルトアレェル! 逮捕だぁぁぁ!」


 答え「トッツアン」でした。


 その叫びにビクッと固まるアルトアレル。その隙にラーラレーアは投げ縄髪を投擲。

 見事投げ縄髪はアルトアレルの口元へ、叫び出さないようにお口にテープをさせてもらう。

 ついでにクルクル体にも引っ付けてミノムシ状態に。

 あばよトッツァァァンと言って抜け出れぬよう粘着性も持たせているので安心である。

 「トッツアン」よ。ラーラレーアを見習うのだ。

 

 とか良く分からない事が頭の中を駆け抜けたけれども気にしない。

 どこからが良く分からないって? 大丈夫。わたしもわからないから気にしないで。


「くっくっく。良い様だな。アルトアレル君」


「モガ!? モガモガモガ!」


「君は既に我が手中。いいね? 君が素直にわたしの要望を聞いてくれれば手荒な真似はしない。ちゃんと聞けるかな?」


〈今度はどこのキャラ設定でしょうか?〉


 いや、仕様も設定も無いが?

 お、ちゃんと理解したみたいだ。神妙な顔をしてコクリと頷くアルトアレル君。

 あれ? よく見るとアルトアレル「ちゃん」だね。

 じゃあフジコ枠?


 お口のテープをちょっと取ってあげる。


「くっ、殺せぇぇ!」


 はーい! なんかいただいちゃいましたぁ。クッコロ枠でした。でも要りません。


「ちゃんとわたしの要望を聞いてくれれば手荒な真似しないってば。聞いて?」


「そんな甘言に騙されるか! 人語を解するバケ蜘蛛の要望など何も聞く気はない! 私の魔法で焼き尽くしてやる!」


 そのまま、うにょうにょ動きどうやら魔力を練り出し始めたアルトアレル。

 おおう、まぁそうだよねぇ。


〈はぁ、この手は面倒なので余りやりたくないのですが〉


 するとラーラレーアは今まで腹ばいになっていたわたしの顔をアルトアレルが見れるように立ち上がる。

「え!? なんて甘々なフェイス!」

 といって顔をキラキラさせて魔力を霧散していくアルトアレル。

 え? え? え? 生首状態だけれどいいの?

 ウラーナもだけど人族大丈夫だろうか?


「や、やぁ。これならちゃんと聞いてくれるかな?」


 さっきと同じボイスのはずなのにうっとり顔でコクリと頷くアルトアレル。

 おい、まじでいいのか?


「それじゃあ、よろしくね。わたしはオーリオール。今は首だけになってしまったけれど元々はアイアンゴーレムだ。ここまで良い?」


 そこまで言うとアルトアレルがハッとした顔をして言ってくる。


「あなたが姉御の言っていたオーリオール殿でしたか! よかった。生きておられたのですね!」

「あ、姉御?」


「ウラーナ・エーマラマ卿です。我々の救出に尽力して下さっていたとか。そんな御恩を受けながらあのバカ。リュウセーからは首を獲ったと聞かされて。本当に大変申し訳ございませんでした」


 そこまで言うと、目に涙を浮かべ謝罪の言葉を紡ぐアルトアレル。

 姉御はウラーナだったのね。

 おおう、ここまで言われてこの仕打ち、逆に悪い気がしてきたよ。

 もう解いてあげない?


〈そういう手かも知れませんが?〉

 まぁそうなったらそうなったでいいよ。


「だったら解いて大丈夫そうだね。お願いだから豹変するのは勘弁してよ?」


 そうアルトアレルに告げ、ラーラレーアに戒めを解いてもらう。

 アルトアレルは体の自由を取り戻すとまず膝と手をついて頭を垂れる。


「信用いただき感謝いたします。オーリオール殿」

「い、いやいや。こちらも突然襲ってごめんね? ちょっとしたお茶目のつもりだったんだ」

「いえ、当然でございましょうとも。そのようなお姿になられて尚、人族の私へお気遣いいただくそのお顔に怒りなど微塵もございませぬ」

 アルトアレルはそういうと頭を上げ、真摯な瞳でこちらを見てくる。

 うん。これは大丈夫そうだ。よかった。お茶目で許して貰えて。

 え? 顔? まぁどっちでもいいや。


「では先ほど聞いてもらおうと思ってたわたしの要望を伝えるよ? 勇者リュウセー君にギフトを壊してしまった謝罪をしたいので、一緒に行って仲を取り持ってもらえないかな?」


 ピロン♪

 :鉄蜘蛛ゴーレムのオーリオールは人族のアルトアレルとパーティを組んだ。:


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