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022:鉄蜘蛛ゴーレムは探索を開始した。:

「わーお、クッションの上を歩いてる感じだね」

 今わたしは勇者リュウセ―君の『書斎』から出て廊下をカサカサ歩いているのだけれど、その足下がグニグニして定まらない。

 わたしの三半規管がこのグラグラに耐えられるか怪しいくらいだ。

 それでも今のわたしは鉄蜘蛛。髪を4対に分けて脚としているので2本脚に比べれば断然安定してカサカサできている。


「しかしなんというか床の素材は木貼の板床なのになんでグニグニしているのだろうね?」

〈恐らくこの空間そのものがまだ不安定なのではないですか? 先ほどの勇者リュウセ―の言葉。ギフトの成長。または壊れた。これから推測するにこの空間はまだ出来てそれほど時間が経っていないのでは無いかと思われます〉


 ふぅむなるほど。

 確かにあの『書斎』はしっかりした空間だったし、割と大きな空間だったとはいえ本からベットから食事を作る場所まであって生活する為の機能は完結していた。

 わたしは気が付かなかったけれど壁に遮られたトイレまであったそうな。

 

 本来『書斎』はあそこだけでこの廊下は最近生まれたということなのかな?。

 あれ? もしかしてわたしやっちゃいました?


〈星に刻み込まれた魔方陣を無理矢理断ち切られましたからね。何らか変化があっておかしくないでしょう〉


 弁償しろとかいわれないかな? 言われるよね。

 どうしよう。わたしが持ってるのケオーネラビリンスの王権くらいだけれどそれで足りるかな?


〈何を言ってるのですか。あれは前回の慰謝料分として既にラーラレーアに権利がありますからね。勝手に弁済に充てられては困ります〉


 わっお!? わたし文無しでした。金満装甲もなくなっちゃったし売れるものないや。ははっ。逃げるかないね。

 ごめんね。勇者リュウセ―君。


 プシュウ。


「ん? 何?」


〈突然扉が出来て開きましたね〉


 はぁ? ま、まぁ不思議な空間だからなんでも有り得るか。


「とりあえず入ってみる?」


〈どこに入るにせよ何が起こるか解らないのです。入るだけ入ってみましょう〉  


 おーけーまいふぇあれでぃ。

 ではいざお願いします!

 カチャ。

 ラーラレーアに開いて貰った扉の中に入る。


 途端ごうんごうんごうんと何かが廻っているような音が響いてきた。


「なんだろうこの音? 霧が凄くて何も見えないな」


 部屋一面が真っ白で先が見えない。


〈何の部屋でしょうか。この白い霧わたしの探知も通りませんね〉


「ちょっとでも進むとこの出口が見つからなくなりそうだ。これは諦めて引き返すしか無いかな?」


〈髪をロープのようにして編んで扉に引っかけましょう。それで迷わずに奥に進めますよ〉


「おお、スパイダーモードが早速役立つとは!」


 シュルシュルと髪の一房が伸びるとまず3つに別れ、それぞれの束を縒ってまた束ね、ロープ状に編んでいく。

 器用だね。

 異変があったら判るようになるべくロープを張りつつ進む。

 因みに誰かがこの扉からはいってきても判るように足下と腰くらいの高さに細い糸も仕込んでいる。

 勿論ラーラレーアがね。


 ゆっくり、ゆっくり進んで行くも先は見えず。

 100mほど進むも白い霧は続いていた。


〈あ、前方の魔力が乱れてますね〉


 わたしには見えないがラーラレーアは魔力が見える。


「魔力が乱れていると危険なの?」


〈そういう訳ではありませんが、乱れ方が変と言いますか、全く規則性が無いわけで無く、圧して弾かれてといいますか〉


 シュッと吸い込まれるように寄せられたと思ったらパンッと弾かれるようなイメージが流れた。これを繰り返しているらしい。


「もう少し近づいてみようか」


 と踏み込んだ前脚が宙を掻く。

 

 あれ? 床が無い。と思った瞬間に一際大きな魔力の波がファンデルワールス力をも引き千切り、わたしの体が宙を舞ってしまう。


「ひょえええぇぇぇええ!?」


〈露出した魔力で生成されている髪の毛が引き寄せられてしまっていますね。ロープ以外の髪の魔力を一時解除します。ぷつん〉


 そこである程度の引力から解放されたのか慣性の尾を引きつつ落下を始めるわたし。

 

「こわ!? 怖い! ちょ、壁にぶつかる!」


 ロープが床の切れ目を支点に円運動に移り、わたしの体(というより頭だけど)をその切り立った壁面へ突っ込ませる。


〈無問題です〉

「ぐえ」


 ラーラレーアが壁面に突っ込む寸前に再度髪に魔力を展開しペタリと衝撃を吸収し切った。

 腹面にあったわたしのちょっとお高めの鼻がプニリと若干潰れたけどね。


〈この先がどうなっているか気になる所ですが、ロープの強度的に維持がそろそろ難しいので引き返しましょうか〉


「了解。そうしよう」


 まずこの壁から上に上がらないとね。

 この壁実は垂直では無くオーバーハング気味に傾斜がついている。


〈およそ110°~120°といった所です。ボルダリングでいう薄かぶりというやつですね〉


「ぼるだりんぐ? 誰に説明しているの?」


 そういう問いについてはまるっと無視してくるラーラレーアさんだが、ロープを手繰るでも無く凹凸の無い平らな面を苦も無く登っていく。流石のスパイダーモードである。


 落ちたのは然程の長さでも無かったためすぐに壁の切れ目が現れる。

 この壁と床の頂点がギリギリ魔力を引き付ける範囲らしくまた吸われそうになった。

 そこはファンデルワールス力を強めたのか今度は引き剥がされる事なく無事地上に出る事ができたのだった。


「不思議な所だね」


〈はい。ここもまた不安定なのでしょう。これから何かが生まれる所なのかも知れません〉


 「まだ早すぎたのだ」って所かな?

 腐ってはいなかったけれど。


 ロープを手繰って入口まで戻る。

 廊下に出てまたグニグニ床を奥の方に進んでいくと、今度は割としっかりしたガラスの嵌った木扉があった。


「またちょっと雰囲気が違う所だね?」

 中に入るとそこは15m×30m程の木板の床では無く土が敷き詰められた大きな空間だった。

 ただし、土は渇いてひび割れた土だけれどね。

 廊下と違い結構しっかり踏みしめられるのは安定していてわたしの三半規管にも優しくて良い。

 天井を見上げるとトラスのフレームで組んである三角屋根がガラス張りになっていた。

 所々ガラスを区分けている枠のフレームはあるものの日が入るのを妨げない程細いフレームで結構緻密な溝が彫ってあるのが見て取れる。

 ちなみにガラスの先は真っ暗で、夜だからに暗いのか、そもそも光の無い空間なのかは判らなかった。

〈農業用ハウスというところでしょうか?〉


「農業用ハウス?」


〈植物などを生育する為に光や温度を調整する施設の事ですね〉


「ふーん。ここに種を蒔けば野菜が採れるのかな?」


 知育パッドで野菜を育てるゲームがあったのを思い出す。

 それと同時にウラーナに食べさせてもらった肉団子鍋にネギやニンニクが入っていた事が思い出される。

 あー、また食べたいな。

 考えたらお腹すいてきた。お腹無いけれど。


〈まずは土を栽培に適した状態にしなければなりませんね。水を何処かから調達して灌漑したり土壌の成分を調べて酸性かどうか等かなり手間が掛かりますが〉


「お野菜は一日にして生らずって事ね」

〈種も手に入れねばなりません。少しここの土を探して見ましょうか。何かあるかも知れません〉


 確かに。今は荒れ果ててしまっているけれど昔は何か作っていたのか所々枯れた草もあるし種があれば嬉しいね!

 そう思って辺りを探していたら農業用ハウスの隅の方に物置を見つけた。


 バコリと物置の扉を開けるとまずはスゴイ埃が辺りを舞った。

「へっきゅちゅん!」

〈またそうやって好感度稼ぎですか? はぁーやれやれ〉

 なぜクシャミで好感度が稼げるのだろうか?


 ちょっと分からない気持ちでいっぱいだけど物置の中を探った成果もいっぱいあったようだ。


 ピロン♪

:鉄蜘蛛ゴーレムのオーリオ―ルは「コーンの種」を手に入れた。:

 ピロン♪

:鉄蜘蛛ゴーレムのオーリオ―ルは「ヒヨコ豆の種」を手に入れた。:

 ピロン♪

:鉄蜘蛛ゴーレムのオーリオ―ルは「ヒマワリの種」を手に入れた。:


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