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001:アイアンゴーレムは宝箱を開けた。:

 部屋に戻ったら宝箱があった。

 わたしは自分の好奇心に従って宝箱を開けた。


 ガチャ――バフっ!

 という音とともに宝箱から真っ黒な煙が吹き上がって、覗き込んだわたしの顔に真正面から浴びせかける。


「ぶわぁぁぁ!?」


 目の前が全く見えない。

 え? え? え? まさか、罠!?

 あれだけ開ければいいとか、ハッピーバスデーとか言っておいて罠!?

 なになになに? どういう事!?


 いや、あまりの出来事にしばし固まってしまったが、罠だとしたら状況確認が急務だ。

 頭、痛くない。と思う。

 体、特に異常ない。と思う。

 

「後は何を確認したらいい?」


 え? お前は誰かって?

 あ、わたしオーリオール、ピッチピチの0歳のアイアンゴーレム。よろしくね!


〈頭に異常が出た可能性は否めないですね〉


「知識、何か言った?」


〈いいえ〉


 何が起こったか良く分からないけれどこのままでいても平気かはわからない。

 煙から抜け出るため数歩下がる。

 するとあっさりと煙の中から出られた。


「うーん。なんでか散らないし変な煙だね」


 真っ黒な煙をじっくり見てみると、フヨフヨ、フワフワしている。

 なんだろうこれ? 煙じゃ無いの?

 つんつん突いてみても触れてるのか触れてないかわからない。

 臭いを嗅いで見てもやっぱり良く分からない。

 ここにあってここにない感じがする。

 そんな不思議な感覚。


〈テーレッテレー、これが宝箱の中身です。さぁこの魔力を吸収するのです〉


 え? 魔力?


 これは煙ではなく真っ黒に見えるまで濃縮された魔力なのだそう。

 はぁ、なんだ魔力か。それだったら大丈夫だよね。

 え? 魔力とは何か? なんだろうね? 良く分からない不思議パワーの総称だそうな。

 知識さんに聞いたのだけれどそう答えておけだって。

 わたしも魔力を核に生まれた物だけどこれが何なのかは説明できない。

 自分がどうやって動いてるかなんてわからないよ。


「あれ? 知識さん、魔力ってどうやって吸収するの?」

〈‥‥‥お口をアーンってしてみたらどうですか?〉


 なんだか知識さんも曖昧な感じである。

 もしかして魔力の吸収方法わからないのかな?

 

 知識の言うままに口をパカリと空け、再度煙にダイブする。


 するとなんということでしょう。

 およそ1m3近くあった煙がシュゴゴゴゴとわたしの口に吸われていくではありませんか。


 10を数える間もなく吸いつくした。


「う! こ、これは旨い! 味がある。魔力って美味しいの!?」


 絶妙な円やかさがサッと消えるなんとも切れの良いお味でした。

 これは星3つですね。


「御馳走様でした」

〈お粗末さまです〉


 両手を合わせてどこかへ向かって礼をする。


「ところでさ――ぐぁ」 

 

 知識に話しかけようとした瞬間、わたしの胃からゴロゴロゴロと音が鳴り響く。

 そしてピシャーン、バリバリバリと魔力が体の中を暴れまわる。


「アバッ!? アバババババッ!?」


 な! な!? ななな!??

 吸収した魔力が体の中で暴走している!?

 それは大きな塊となってわたしのお腹をドーンと突き出てくるように膨れ上がる。


「ぐぅ!?」


 とっさに体を縮めて、両手でお腹を押さえて魔力が飛び出ないようにする。

 すると今度は押さえてる箇所とは別の左の横腹をドーンされる。


「おげぇぇぇ!?」


 鼻にツンとした香りがやってきた。口をギュっと結んで吐き出しそうになるのを我慢する。

 ドーンと飛び出た横腹を左手でギュウウと抑える。

 すると今度は右の横腹がドーンされる。


「ほんぎゃあぁぁ!?」

 

 今度は口の中に酸っぱい味が広がった。

 それも我慢して抑えるがあっちを押さえたら今度はこっちとドーンドーンと魔力が暴れ狂っている。

 手が足りない。知識さんどうしよう。

 どうしたらいい!?


〈圧縮するのです。全体を万遍なく小さく小さく――そうヒッヒッフーです。この合図でやっていきましょう。さぁ〉


 なんだか使われ過ぎて擦り切れてしまっていそうな呼吸法のイメージが浮かぶ。

 とりあえず何でもいい。やってみよう!

 ヒッヒッフー! ヒッヒッフー! 小さく、小さく、小さく――なれっ!


 ギュュュュウゥゥゥゥと魔力が圧縮されていくのが感じられる。

 おお、なかなかいいぞ!


 ヒッヒッフー! ヒッヒッフー! 小さく、小さく、小さく、もっともっと小さくぅぅ――――

 あれ?


「ンガアアァァァァアァァァアアア!」


 再びピシャシャーーン、バリバリバリバリと先ほど以上に激しい衝撃が駆け巡る。

 もう色々な所がボッコンボッコンいってます。

 やばい、これ本当にやばいよ!?

 

 それでも先ほどの圧縮を繰り返して少しずつギリギリと魔力を締め付けてはギュウギュウと押しつぶす。

 なんだか、魔力の色が黒色から輝きを帯びて金色に変化しているような気がする。

 見えないから感覚でしかないけれど!

 しかし限界以上に濃縮された魔力はこれ以上は濃くなりませんとばかりに締め付けても押し潰しても変形して逃れるだけで全く圧縮できなくなってしまった。ニュルニュルしていてうなぎを掴むようだ。

 うなぎ知らんけど。

 そしてうなぎのような魔力が行きついた先は体の薄い部分――球体関節部分だ。

 球体関節に圧縮できなかった魔力がどんどん流れて球体関節が膨張する。


 やばいこれ爆裂する!

 生まれてすぐに四肢爆裂とか嫌なんだけど!?

 と思った次の瞬間ブシュゥゥゥゥ!と勢いよくわたしの球体関節から濃い金色の魔力が噴出した。


〈その魔力を表面に留めてください〉


 まじか。まじできつい。この状態で出てしまったこれをまたどうにかせよと。

 つらい、正直つらいが仕方がない。とにかくやるんだ。

 どうやるのかわからないけれど、とにかく貼り付けぇぇ――――

 

「ぐぅぅゥ、と、ど、ま、れぇぇぇぇぇ!」


 出て行った濃い金色の魔力がギュルギュルと渦を巻きだす。

 ゴォォォと音がするほど渦巻いていて嵐の中にでも居る気分だ。

 ついでにわたしも渦に巻き込まれ宙を舞う。

 あ、ダメこれ酔うわ。


 しかしその嵐はわたしが酔って吐く前にピタと止まった。

 突然静止した空間の中を金色の魔力の残滓がキラキラと宙を舞っている。

 わたしは情けなくも尻もちで着地した。


「痛っだ!?」


 落ちた衝撃でジンジンしているお尻を撫でていると、収まった魔力が光り輝きながらわたしの体にサラサラ落ちて肌に染み込んでくる。同時に体の中で暴れまわっていた魔力も余剰分を放出した為かスッと収まったようだ。

 ついでに吐き気も収まってくれたようでちょっと安心。

 

「ふぅぅ、ひどい目にあった‥‥‥」


〈ご愁傷様です〉


 その知識の態度に若干カチンと来る。


「いや、知識さん? ほんとマジでいい加減にしてくれる? さっきのもだけど、今のも相当やばいよ? ひょっとしたら体爆散してたよ? 先にもう少し説明しておこうよ。そういうのなんていうかわかる? 思いやりよ? 思いやり。もう少しこう思いやりを持ってもいいと思うの!」


〈‥‥‥鋭意努力いたします。くすん〉


 え? うわ、なんか泣いちゃったよ。

 言い過ぎたか?


「ま、まぁわたしも軽率なところがあったし? ちゃんと理由を話してくれればこんな言い方しないし? これからはホント気を付けてよね? お願いね!?」


 ちょっと知識に対して甘すぎかも知れないが、これからも頑張ってもらわないとだからね。

 知識さんに肩があったら揉んであげるような気持ちですり寄ってやった。


〈(チョロ)〉


 などと、どっかのリーマン上司部下でよく見られるような光景を再現してしまった。

 あれ? リーマンって何だろうね?

 自分のことながら所々情報が無くてわからない。


 ついでにいまさっき何が起こったかもわからない。

 こういう時は知識さんの出番だ。


「はい、知識。起こったことを羅列して」


〈まず体内の魔力の変化です。魔力が限界まで満たされています。魔力が濃縮されて魔力の質が向上しています。魔力保持可能量が拡大しています。魔力圧縮機能が追加されます。魔力操作機能が向上しています。運動能力への魔力変換機能が向上しています。運動能力への魔力変換時損耗率が低減されています〉


 お、おおう、すごい量。情報量が多過ぎて全然把握できないんだけど。


〈その他の体内変化もあります。球体関節からの魔力噴射機能を得ました。球体関節に掛る負荷の大部分を魔力に変換できる魔力回生機能を得ました。頭部に魔力操作可能なヘアー機能が追加されました。知識の裁量権が増えました〉


 こっちもなんだかわからないけれどスゴイね。


「全部確認したい所だけれど、まずは魔力噴射機能って何?」


〈魔力噴射機能は体内の魔力圧を強制排出する事でCDクールダウンを促す機能の他、噴射エネルギーを利用して急速な転回や動作のブーストを可能とする機能になります。たぶん〉


「ほほう、なんかすごそうだ」

〈(チッ、語彙力貧乏かよ)〉


「知識、今――」

〈そんな事はありませんよ?〉


 おう、なんだこいつ。本当にわたしの一部なんか?

 魔力の暴走でこいつもやられたか?


「この頭部に追加されたヘアー機能っていうのは?」

〈腕の鏡でご自分の頭部を確認してください〉


 ふんふん、頭に何か付いたって事?

 ピカピカの腕鏡を覗き込む。


「って、なんだこれ!?」


 腕は今までの鈍色ではなく金色に光り輝いていた。

 キラキラし過ぎていて鏡にならない。腕鏡機能は失われてしまったようだ。

 これをよく見ると今までの鈍色の腕に厚さ1cm程の金色の板が装甲のようにくっ付いていた。


 またそれは腕だけでなく、足、脚、腹、胸や肩など球体関節部を邪魔しない部位全てに付けられていた。

 全身金色ピカピカで綺麗だね。これは超絶目立つ。

 何これ、わたしに何か効果でも施されたの?

 ねぇ、これってさ――


〈金満装甲ですね〉

「あ、ああ金満装甲ね‥‥‥。え? 貶されてる?」

〈そんな事はありませんよ?〉



 知識とそんなウェットなやり取りをしていた時だった。


「うおおおぉぉぉぉ!」


 という叫び声とともに一人の人族が襲い掛かってきた!




ピロン♪

:アイアンゴーレムのオーリオールは奇襲を受けた。:

ピロン♪

:アイアンゴーレムのオーリオールは戦闘を開始した。:


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