015:金満ゴーレムは金Gとなった。:
深層から中層に戻ってきた。
まどか様の空間からはいつの間にか出ていた。
不思議である。
また心の中の鍵を使えばあの場に行けるのだろうか?
それはまた後で検証してみよう。
そういえば実はかなり省いたけれど深層に行く前の中層でいくつか観察実験を行っていた。
まず1つはアイアンゴーレム達の性能だ。
彼等は中層の奥の奥のまで見てもやはり3種類のタイプで構成されていた。「醤油」「ソース」「芋」の3種類だ。
でその性能もおおよそ3タイプで共通だった。
「醤油」は遠距離メインで弓矢を利用してきたが、その弓矢は中々な威力と精度だった。
具体的にはタンクである「芋」の体を貫通するくらいの威力があった。
鉄板50cmを余裕で通すという感じである。
因みにわざとフレンドリーファイアを起こさせたのだけれど打たれた「芋」の振り向き様の無表情は「え? おまえマジ本気マジ?」と語っていたとかいないとか。
「ソース」は剣か槍を利用しているのが多かった。中には鎚や斧などもいて器用な感じだ。特に秀逸なのが連係攻撃だったかな? 正直威力は低いが手数で火力が高い感じ。
10組くらいの「ソース」に絡まれたときは止むことの無い刃の嵐の中にいるようだった。具体的にはわたしの金満装甲に引っ掻き傷作るほど。作った奴は粛正しておいたがね。
「芋」に関してはタンクなので当然だがその体格から生まれる一撃が重い感じだった。鈍重なので単純な威力や火力は「醤油」「ソース」には及ばないモノのその真価は「芋」が集まってスクラム組んで突進してきた時だった。面制圧性能が高く何より突破力が非常に高かった。逃げ場の無い鋼鉄の肉壁はちょっと恐怖だった。しかもゴーレムなのに汗臭かったのがそれを余計に恐怖を煽ってたね。
さっきの「ソース」への粛正は頭を「芋」の背中に括りつける刑に処しておいた。
あまりの残虐さに実はわたし魔王なんじゃないかと思ったものだ。
「彼は、元気にしているだろうか?」
〈その郷愁は間違っていますね〉
次にアイアンゴーレム達がどの程度居るのか。
これ一見30kmに30m間隔で両側に部屋があって中には6体いるので6000体くらいと思うでしょ?
これ部屋5m間隔で実はあるみたい。
なんでも開口が閉まってるのは修理メンテとか回復中、誕生中、待機中だったりで常時空いてるのは30m間隔とのこと。で緊急時に左右全部開くとざっと100万体くらいになるのかな。
え? 部屋は左右じゃなく全部で8箇所ある? 部屋ごとグルグル回転するの? リボルバー式? なにそれカッコいい。
ま、そうすると800万体だって。
わぁおとんだ大所帯だ。
無限湧きスポットって奴らしい。
同じゴーレムだったから通してくれたものの、あの勇者リュウセー君はどうやって通ったのだろうね?
はぁ? 隠れる能力の想定はしていなかったと?
深層は隠れるだけじゃどうにもならないだろうから『まぁ良かろ。めんどい』とか言ってたそうな。
まどか様も大概だよね。勇者絶殺ダンジョンの名が泣くよ?
その次はアイアンゴーレム達の意思の確認だ。
最初に会った「醤油」「ソース」「芋」にしろあまりにも感情や意思の動きが少なかった。
わたしはまぁちょっと、ありとー、めいびー特殊な様だから除外するにしてもね。
でも確かに意思の存在は確認できた。
「無い」ではなく「薄い」だけだ。
理由はずっとここまでの侵入者が居なくて待機中だったからとのこと。
おい可哀想かよ。
実験に「芋」が反応したのも割と若い個体だったのかもね?
表層のサンドゴーレム達は割と侵入者の相手をしてたので割と表情とか感情が豊かなのかもだ。
これはちょっと何とかしてあげたい状態ではあるね。
で、そんな彼等が今何をしてるかっていうと何故か長蛇の列を作って通路に並んでいた。ナニコレ?
「ねえ、何してるの?」
と聞いても無反応。
これでも王になる権利は持ってるのだけどね。
ちょっと悲しい。
でも彼等は整然と並んでまるで意思を統一して何かをしている様。
え? これわたし仲間はずれ?
裸の王様ってやつ?
〈まさしくですね〉
「金満装甲という装甲は着てるじゃないか!」
〈見えたふり、しなくて良いのですよ? もう〉
「え? え? え? 本当に? 皆には見えてないの? 全てはわたしの勘違い?」
〈ウラーナも怪しい目で見てましたしね。そこ〉
「ひっ!?」
まじで!? いや、そこはわたしツルンツルンで何もない。いや履いてなくはない!
ほら、見て、見てよちゃんとローウェストの短パンのような装甲はあるよ?
安心してください! どんとうぉーりー! 履いてますよ!
〈いや、どこ見てるのですか?〉
「謀ったな! ラーラレーア!」
あっちにフラフラ、コッチにふらふら。
3mの通路にずらりとアイアンゴーレムが犇めいているので実に通りづらい。
「ちょっと押さないでください。わぷっ、って臭ぁ!?」
ちょうど「芋」の背中に鼻を押しつけられてツーンとした臭いにやられてしまう。
いかん。このままでは鼻が逝かれてしまう。
これを30kmもやっていられないので空いている空間である天井に手足をめり込ませてへばりつく。
まるでGのように。
う、金Gとか言われないだろうな。
〈まぁ略せばそうですしね?〉
「やめろやめろ! 何故かそれを認めると何処かに刻まれている気がするんだ」
〈これはまた異な事を仰る。もう遅いですよ?〉
え? 遅い?
くっ、背に腹は代えられない。わたしは急ぐのだ。
仕方なくシャカシャカ手足を動かし天井を進む。
う、案外これ移動しやすい。
天性の天井走りの才能があるのかも知れない。
そして実は手足をめり込ませなくても手足を全体的に触れるだけで引っ付いてられることが判明した。
〈ファンデルワールス力? 流石()ですね〉
流石の後の行間が気になりファンなんとかは覚えられなかった。
何とでも言えば良いさ。ひーん(泣)。
ともかく楽に進めるのだから問題ない。シャカシャカ。
途中階段の所まで残り5km付近まで来ると様相が変わってきた。
何やら損壊して頭だけになった個体が階段がある方からリレー形式で運ばれて適当な部屋に投げ入れられていたのだ。しかも複数。
「戦闘が起こってる?」
〈アイアンゴーレムがこれだけ出ていて倒せない存在ですか? 考えつくのは一匹いますが〉
「泣かない。だって男の子だもん!」
〈なんでこんなに長くスクラム組んでいるのでしょう?〉
「何かに向かって突進してる?」
〈あの名作が過ります〉
ラーラレーアがそのイメージを投影してくる。
うんうん。こんな感じ。蟲がいっぱいな感じ。
ズゴゴゴと突進しては引き返しまた突進を繰り返していた。
「うわ、腕が」
突進して引いてを繰り返しているためかボロボロとアイアンゴーレムの各パーツらしき残骸が奥からバラバラと掻き出されるように出てくるようになった。
ここから無事な頭パーツがあれば後ろに投げているらしい。無事でない頭パーツもちらほら見かける。
少し進んだ先は拉げたり折れた各部パーツや武器が散乱し、辺り一面足の踏み場もないほど鈍色で埋め尽くされていた。
そして途中からはスクラムどころか、組合い入り交じって最早一匹の蛇、いや百足のようにそれらは蠢き何かに突進しているようだった。
「ようやく階段だ」
そこまで着けばもう何をしてるのか明白だった。
階段の上の方、先日、遠目に見た立方体型をした魔方陣が光っているのが見える。
アイアンゴーレムの百足はそこに向かって突進を繰り返していたのだ。
勇者リュウセー君のギフト。その『絶対領域』に向かって。
ピロン♪
:金Gのオーリオ―ルは異世界勇者のリュウセ―のギフト『書斎』の前に降り立った。: