012:金満ゴーレムは「最奥の決戦」を始めた。:
わたしは金満ゴーレムのオーリオール。
ちょっと今、世の無常を嘆いています。
折角助けにきたのに捨てられました。
くすん。
〈等とやってる場合ではありませんが、あの勇者やっぱり勇者()でしたね〉
おおお、ラーラレーアさんが怒りに燃えている!?
「勇者()」の所にものすげー何か行間とか呪いとかそういうのを感じたよ!?
怖ぁぁ。
まぁ今はとりあえず目の前にいるドラゴンを相手にしなきゃか。
よし、がんばろう!
ドラゴンは羽根を持ったトカゲだ。
んートカゲというよりワニか。
ブレスが効かないとわかった奴は次に何をしてくるか?
答えは噛み付きor尻尾攻撃だ! っ!?
「突っ込みもあるよねぇぇぇ!?」
ドラゴンはホバリングからイキナリ消えたと思うような突進を行ってきた。
結果?
ええ、はい、吹っ飛ばされました。
「ぐへぇぇぇっ!?」
メキョ! っていう音はわたしの体か、鉄の壁か、両方か?
そしてそこに続くは、爆炎の嵐。
数百の火球が目の前に見えるなーと遠い目をしても結果変わらず見事に丸焦げだ。
「げっほげっほ、おえ。肉団子鍋が逆流しそう」
手で黒煙を払うと鋼鉄で出来たはずの壁材が融解しており、チーズのように蕩けているのが見える。
え? この壁材50cmくらいあるんだけど?
これ拉げさせるってどれだけよ‥‥‥。
いや、それで平気なわたしもどんだけだって話だね。
なんて考えていれば再度、ヒィィィィィィィィィンなんて音と共ににドラゴンが突っ込んでくる。
音と同時に突っ込んできてなんでわかるかって?
もう奴が突っ込んできた後だからだよ!!
「あ、あぶねぇぇぇ!」
何かキランと反射したので咄嗟に避けたのだった。
その衝突音は凄まじくどう表現したらいいものか分からないほどの爆音が鳴り響く。
「ギャオォォォォン!」
「ばぁかめ! 脳味噌が足りんな!」
ドラゴンは壁に足から突っ込みめり込んでいる。
〈頭! がら空きですよ!〉
「ああ、解ってる! ボディが! がら空きダッ! ゼッ!!」
〈おい〉
めり込んでいるドラゴンに対し、わたしのボディーブロー、ミドルキック、クルリと回転してのパーンチ! が炸裂する。
「ギャァァァァァァン!」
「おお、ちゃんと効くじゃないか!」
ドラゴンは一度叫び声を上げてから、ゆっくりと頭が傾いでいき、そのまま垂れて沈黙する。
「いや、こいつもゴーレムなら頭はまずいかなってさ」
ラーラレーアが言うように頭を割ったら殺しちゃうかもでしょ?
わたしと同じゴーレムの同胞ならばと気を使ったのだ。
沈黙したドラゴンをよくよく観察してみれば球体関節が所々に存在していた。
やっぱりね!
「ふう、なんとかなって良かったよ」
〈あー、オーリオールそれアウトォォ〉
「ん?」
ラーラレーアが言わんとする事がわかったのは次の瞬間だ。
これはあれだ。
フラグという奴だ。
ピーンと来たね!
「アバッバッバッババババババッバ!?」
ピーンじゃなくてビリビリだったけれど。
見ればわたしの足の球体関節に細い線が突き刺さっていてその先は人族の上半身に蜘蛛の下半身な恐らくあれだ。
アラクネーという奴だ。アラクネーがいた。アババババ。
そいつから多分凄まじい毒が体内に流されているのだろう。細い線が途中ボコンボコンと盛り上がり何かを注入しているのが見える。
それに反応するように体がわたしの意思に反してビクンビクンと跳ねあがる。
これはあれだ。
宝箱の魔力を吸った時の状態に似ている!
体の中で魔力が暴れたように毒が暴れて体を刺激してるのだ。
そう判断したわたしはあの時と同じように流れてくる毒を体内の魔力でギュウギュウ圧縮していく。
ヒッヒッフー! 小さく、小さく、小さく―――なれっ! 小さく、もっと小さくぅぅぅ!
するとその毒は魔力で構成されていたのかドロッと毒の成分が崩れて魔力に変質すると、わたしの魔力と溶けあい体内にスッと入ってきた。
「うへぇぇぇ、気持ち悪い・・・・・・」
急激な魔力増加に少々胃が凭れた様だ。
胃をさすさすしてみる。
獲物が獲れたと安心して近くに寄ってきていたアラクネーはこれにビックリすると再度毒を注入しようと慌てて細い線に流し始める。
「いや、ここまできたら直接の方が流石に早いよ?」
プツンと足に刺さった線を取り除き、シュッと動いてアラクネーの背面へ。アラクネーの背に飛び乗り様に蜘蛛の腹部に足刀を突き刺す。
そして悲鳴が上がる前に人体部分と蜘蛛のつなぎ目を足刀でチュインして刎ね飛ばす。
魔力塊が人体部分にあるのか蜘蛛部分にあるのか分からないので一先ず切り分けたのだ。
お、多分蜘蛛部分の方に魔力塊があるな。
人体部分は急激に萎んでヨボヨボになってしまう。
ちょっと可哀そう。
で二度ある事は三度ありますというか、今度は何あれ?
〈うーん。恐らくギガンテス。ファイアジャイアント。イフリートとかそういうのなんじゃないですかね?〉
「でかいの3体かぁ。うわこれいつまで続くのだろ」
〈なんかラスボス前の中ボス連戦みたいで燃えますね!〉
「物理的に今燃えてるしね?」
ちなみに溶岩にどっぷり浸かっている。
イフリートの魔法だろうか?
イフリートの両手の腕輪に魔法陣が浮き出て輝きを放つと溶岩が水鉄砲のように直線で襲ってきた。
ちょうどアラクネーも射線に入ってしまったので「うぼぉぁ!?」となりながら受け止めたので燃えているのだ。
「うわ、あっちゃあっちゃちゃ!?」
ドラゴンのブレスや火球では感じなかった熱が伝わってきて非常に暑い!
うーん。ある程度以上の熱さは感じないのだけれど暑さは感じるというか?
解る?
「遠距離攻撃には遠距離攻撃じゃぁぁぁらぁしゃあぁぁ!」
手頃なサイズのドラゴンが埋まってたので、引き抜いてイフリートに投げつける。
「ギャオンッッッッッッ!?」
沈黙していたはずなのに何故か驚くような悲鳴が尾を引きながらイフリートとパッカーンした。
あ、ついでにファイアジャイアントも巻き込んでくれたわ。
ギガンテスも巻き込んでくれたらスプリットだったのにね。
残念。
次に投げる物はアラクネーだなと思ってアラクネーを見ると何故か瞳×8がウルウル潤んでたのでそっと目を背ける。
でも投げるけれどね?
「よいしょぉ!」
ちょっと気合を入れてギガンテスに向かって投げ飛ばす!
ギガンテスは一本足で構えると持っていた棍棒を水平に振りぬきなんとアラクネーを弾き返してきた!
「なんてスラッガーだ!?」
弾き返されたアラクネーは壁に突っ込むと50cmはあるはずの鉄板を突き破っていった。
あ、ピクピクしてる。大丈夫かな?
余所見してたらパッカーンされたファイアジャイアントが復帰してきてその大きな手でわたしを包み込んで握りつぶそうとしてきた。
わたしはさせてなる物かとファイアジャイアントの掌に向かってパンチをするとズボォォっと埋まってしまう。
あ、意外に柔らかい。
しかしそれはファイアジャイアントの作戦だったのか、そのまま手を引き寄せお口の方へ。
おう、わたしの頭、齧られる!?
「食べられてたまるかぁぁ!」
埋まったところを支点にバク宙の要領でサマーソルトキックをファイアジャイアントの顎に浴びせかける。
やはりここも柔らかいのかガボッ!という音とともに消し飛んだ。
あ、やべ。やっちった?
〈顎だけ消し飛んだお陰で頭頂の方には影響なさそうです。安心してください〉
「そりゃ重畳」
〈ですが――〉
「うわ、うっそ」
そこには、続々と集結しつつある怪獣軍団があった。
ピロン♪
:金満ゴーレムのオーリオ―ルは「最奥の決戦」に勝利した。:
ピロン♪
:「ケオーネラビリンス」がクリアされた。:
ピロン♪
:クリアタイム″136‘04‘22‘″:
ピロン♪
:金満ゴーレムのオーリオールに「ケオーネラビリンス」ファーストクリアボーナスが付与された。:
ピロン♪
:金満ゴーレムのオーリオ―ルは「玄室の鍵」を手に入れた。:
ピロン♪
:金満ゴーレムのオーリオ―ルは「星の鍵杜」の称号を手に入れた。: