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011:異世界勇者は「深層」を覗き込んだ。:

「くそ、くそ、くそ、くそ」

「なぁにが最凶最悪絶対無敵勇者絶対滅殺だ! その通りじゃねぇかくそったれ!!」


 ふふふ、そう喚くな流星。

 彼は天翔流星。もう31になるかの?

 異世界よりラーハーイ王国に勇者召喚された時には15才で可愛げもあったが今じゃただのおっさん勇者じゃ。

 トレードマークだったぴょんと跳ねた可愛ゆいアホ毛を短髪にして失ってしまった大馬鹿者でもあるな。

 彼は今ダンジョン「ケオーネラビリンス」を攻略中じゃ。

 何故に? まぁ魔王を倒す為の手段でも探しているんじゃろ。


「なんだよこの数。ざっとここまで30kmだろ? ここまでで30m間隔の両部屋に6体のゴーレムてこた6000体? あほか」


「んで? どうせここも50kmでわぁいちょうど10000体てか? 糞阿保だろ!」


「くそ、インビジブルがレプリカでなきゃ何とかなったってのに。あの金色ゴーレムがぁ、クソ!」


 クソが口癖になるのはいただけんのう。

 字面が汚い。

 ま、金色ゴーレムあれは正直意外じゃったな。

 儂もどうせ経験値の多いかたーいスライムくらいのイメージでいたからの。

 ラーハーイ王国の宝剣「シャイニングブレード」と宝鎧「インビジブル」がいとも簡単に壊されるとは儂も思わんかったよ。

 まぁ、あの時の流星の顔と言葉。

 あの傑作さ加減の方が意外で面白かったがの。

 「バカな!?」とか普通言わんじゃろ? ふふふ、今思い返しても笑ってしまうわい。


「う、また」


 ふんふん、今度は何じゃ?

 あー、なるほどレプリカインビジブルの魔力が足らんのじゃな?

 持ってきた魔石が持つのかのぉ? 心配じゃなぁ。

 

「は、はやくあっち向けよ。気付くんじゃねぇぞ。せっかくここまで来たのに無駄にしてたまるか」


 まぁのう、流星のセーブ魔法は再びセーブ魔法を唱えねば記憶から何から全部吹っ飛んでしまうからの。

 儂も二度見は詰まらんし何とかならんかのう?

 どきどき。

 お? ゴーレムが向こうを向いたぞ? 今じゃ魔石交換! おー上手くいったのう。良き良き。

 

「はぁ、危険でも走っていくか。持ってくれよ」


 で、悲壮な顔してひた走ると、勇者じゃなぁ。

 でもそれだけじゃ面白くないぞ。

 ほれ、何か起これ!

 ゴーレムが気付くでも、宝箱があるでもいいから何かワクワクさせんか!


「はぁ! はぁ! はぁ! はぁ! うぐ、はぁ! はぁ!」


 だめー、全然面白くない。

 なんじゃ最凶最悪絶対無敵勇者絶対滅殺ダンジョン。拍子抜けじゃ。

 隠れる能力にまったく無力ではないか。

 どこら辺が絶対無敵なのかちゃんと説明せんか!



「はぁ! はぁ! はぁ! あ!?」


 おお? なんじゃ敵か? んーいや階段か。って事は中層ここまで?

 かー、なんじゃホントあの前看板消した方がいいじゃろ。

 深層に乞うご期待! ってか? えー嫌じゃ嫌じゃ。

 この中層。流星の顔しか面白味無いとか打ち切り待ったなしじゃよ?

 流星もごくりとか妙に神妙な顔しなくていいぞ?

 どうせこの後やっつけのボス戦じゃ。

 ほー、なになに? 妙に熱いと?

 こういうの大体パターンよな?

 どうせ火竜とかイフリート魔神ゴーレムとかそんな感じじゃろ。

 うん。激戦の予感に汗を拭うのは良いが開発したクーラー魔法とやらは使わんの? どうなの?


「そうだ、クーラー魔法を。 キノ、マ、アアーリ、ポーロレイレイ:冷感拾伍度:」


 だわな。使わん訳がないよな。鉄板鉄板。


 お? 層が変わるから壁の素材が変わったの?

 て、てて、鉄板じゃぁぁぁ! 儂、天才?

 これはカコイチじゃろ!? は、いやまさかこれを読んで?

 ここまでの詰まらなさをこれで払拭しようとはなかなかやるのう。

 グッジョブじゃ。


「く、どこまで降りるんだ」


 あ、インビジブルは切っておるか? 魔石忘れておったりせんか?

 以前も似たような事やらかしたからのぅ。

 あ、ちゃんと切っておる。やるようになったのう、流星。良き良き。

 して、この次はどうなるんじゃ?

 ボスはまだかの?


「やっと出口、はぁ!?」


 おう、なんじゃボス戦じゃないのか?

 はーん? 見渡す限りの溶岩て。溶岩ステージで進ませないから絶対無敵?

 え、本気? 本気と書いてマジかの?

 確かにこれは渡れそうも無いが、こんな無理ゲーでお茶を濁そうとは浅はかじゃのう。

 

 んー、何じゃな? 溶岩地帯を見て呆然としていた流星が急にギラギラした顔になってきたの?

 ふむふむ、ええぞ、ええぞ。こういう時の流星は面白い事を思い付くんじゃ!

 この辺りがトミ子との違いでいいんじゃよ!

 

「上層およそ40km、幅2km、高さ20mの半径4km螺旋状。中層およそ30km、幅3m、高さ3mの細い管。下層の広さは、分からないな。上の層の1辺から考えて16km2くらいか? 高さはおよそ100mの空間――ね」


「じゃあ上層に水を貯め、中層のゴーレムを押し流し、下層の溶岩を消し潰す。でどうだ?」


「うん。大丈夫、行ける行ける! 100万トンも水があれば行けるはずだ」


「100万トンの水なら王宮に死蔵されていた宝球だ! 伝承では枯れた大きな湖を満たしたとあるから、魔力を満タンにすればなんとでもなるはず」


 おお! 乗りに乗ってるの! これは期待できそうじゃ!


「このくそダンジョンを崩壊させてやる!」


 ええの、ええのぅ。こういう啖呵は儂好みじゃ。

 あ? なんじゃ、あ、まずい流星早く逃げぃ! ドラゴンが来とる! ありゃまずいぞ!

 儂もまずい! 語彙不足じゃ!

 

「くそ! ここで死んでたまるかよ!」


 いやいや! 迎え撃つんじゃないわ! はよ逃げいて!

 あー、ほらブレスが! あー吹き飛んでしまったじゃないか。

 ん? お? おおお? これは熱い! 熱い展開じゃあぁぁぁ!


「な、なんだお前」


「えーと、勇者リュウセー君で合ってる?」


 何故かあの金色ゴーレムが助けに来よった!

 ブレスを受けても涼しげな顔!

 ちょっと儂には甘すぎて胸やけするフェイスじゃがナイスじゃよ!?

 

「勇者リュウセー君を救出に――あ」


 あー! 何も聞かずに行くんじゃない! 戻れ流星ぇぇぇ!

 話せるよ! あいつ話せるからあぁぁぁ!

 

 むぅ、やってしまったものは仕様が無いの。

 しかし、なんじゃな。あの金色ゴーレムも面白そうじゃな。普通に会話してたし。

 話していたら面白い展開になりそうじゃったのに。

 かーまっことこの世は儘ならぬものじゃて!


 あれ、欲しいのう。

 なんとか手に入れてくれんかのぉ。

 あれをオモチャにしたら面白そうじゃ。

 流星、頼んだぞ?


 

 とと、だいぶ見逃したわい。

 お、なんじゃもう中層の階段か?

 

「はぁ、はぁ、はぁ、ここまで来れば、安心、だ」


「ここで水を堰き止める。『時空を書き留めよ!星に刻め!僕の居場所はここだ!:セーブポイント:』」


 あー、なるほど。ここに魔法陣設置するのじゃね?

 このポイント設置に結構時間掛かるのじゃ。あー暇じゃ。


「『今あるままの姿を書き留めよ:セーブ:』」


「はぁ、これで良し」


 うむうむ、セーブできれば深層の記憶も残るからの。

 良かったの。流星。


「『開け、:『書斎』:』」


「リュウセー! 無事だったかにゃ!?」

「おかえりなさい」

「「おかえりなさいませ。ご主人様」」


 そういえばプルトンやアルトアレル、双子奴隷姉妹も『書斎』にいたのじゃったな。

 

「ああ、ありがとう。俺はちょっとメモを残す。書斎の食料も残り少ないし、攻略の目途がついた。一度王宮に戻るぞ!」

「流石リュウセーにゃ! ‥‥‥いつも通り何があったかは教えてくれにゃいにゃ?」

「ああ、ここには死んで戻るつもりだ。もう今の会話すら覚えて無いんだ。わかってくれ」

「少しは信用してくれてもいいのににゃ‥‥‥」

「ん? 何か言ったか?」


 あーこういうとこちゃんとしないとダメダメじゃよー流星。

 仲間は大切に! これ基本! 儂との約束じゃぞ? 






 ってああ!? 何をしてるんじゃ流星! それはやってはいかん!

 折角救出に来てくれた人になにして!?

 あああ!?


 ピロン♪

 :異世界勇者のリュウセーは「シュバルツバルドクローゼン」を手に入れた。:

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