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010:金満ゴーレムは奥に進んだ。:

 遊びは終了。いい加減進まないとウラーナの目的が達成できないし。

 ちょっと飽きてきただけ。もう終わりにしよう。

 わたしは冒険や探検で目新しい事、ドキドキする事を求めているんだ。

 それなりにこのダンジョンの事は解ってきたため、そろそろ次に移りたいんだ。


〈そんな風に強がらないで〉

 

 いや、――うん。そうだね。

 ウラーナとのやり取りは愉しいし、今まですごく愉しかった。できれば別れたくはない。

 でもわたしはゴーレム。いずれはバレる。

 多分勇者や勇者のパーティがわたしを見ればバレてしまうだろう。

 そこが終わりだ。それで終わりだ。

 なるべく伸ばしてみようと努力してみたけれど、そろそろ終わりにしなければいけないよね。


〈ふ、出会いあれば別れあり。僕は君のそばを離れないよ〉


 ねえ、なんかちょいちょいイケメン風なあれがついてあれなのだけど?

 

〈いやー、一度やってはみたかったのですが中々癖になりそうです。一人称僕どうでしたか?〉


 茶化してくれて有難うよ。僕表現はとても良かったよ。今後もそれで行けばいいんじゃないかな? 後あれのあれで語彙力がーってテンドンはしないのかい?


〈おおう、なにやら金満が大人の階段昇ったみたいな。Dの者が粋がるんじゃないですよ。ぷぷぷ〉


 おーけーおーけー戦争だな? お前今核ボタン押したぞ?





「あのー、なんだか後方から土煙が上がっているんですが?」


 ラーラレーアとの漫才を強制終了させてきたのはウラーナだ。


「うん? 何? 土煙?」

「おそらく蟻塚や蜂巣から出てきたサンドアントやサンドビーじゃないでしょうか?」


 おうしっと! 遊び過ぎた!?


「そいつはまじぃな。ウラーナ逃げるぞ! あばよぉぉとっつぁぁぁん! まーたなー!」

「あーん、待ってよオーリオールどのぉぉ!」


 と逃げ台詞を吐きつつバビュンとダッシュで逃げ出したのだった。


 ‥‥‥が、どうにも変だ。

 土煙はさっきまでわたし達が居たあたりでピタと収まっていた。

 

 あ、そうか霊銀鉱=甘いだ。奴等も好物なんじゃなかろうか?

 残してきた霊銀鉱に喰いついたのかもしれない。

 なら急いで逃げる必要もないか?

 

 等と立ち止まって考えていると、土煙が掃けるところをウラーナがジッと見ていた。


「オーリオール殿、あれはサンドアントやサンドビーなんでしょうか? わたしには‥‥‥人のように見えます」


「はいぃぃ?」


 エスパーなんちゃらのような返事をするわたしだったが、わたしにも確かに見える。

 いや普通のサンドアントやサンドビーも居る。霊銀鉱を互いに奪い合っている。

 しかしその中には明らかに人型の蟻や蜂が混じっていた。


〈サンドアントゴーレムとサンドビーゴーレムの人型ということなのでしょうか?〉


 「え、蟲型ゴーレムって進化するの?」

 

 すると中からサンドアント人型とサンドビー人型が1体ずつ、わたし達のところへやってきた。

 ちょっと身構えたけれど敵意が無いのはその挙げた両手から理解できたので、こちらも構えを解く。


 彼我の距離が10mといった所で彼らは跪いた。

 まるで王様にでも謁見するように。

 そして若干ぎこちない発音ながら、わたし達と同じ言語で話しかけてきた。


「オ、王ヨ。我等ノ住処ヲ破壊サレタトキニハ、驚破何事カト思イマシガ、魔力ガ足リズ数ノ減リ始メタ我等へコノヨウナ施コシヲ下サル貴方ハ何ヲオ望ミナノデショウカ?」


 おおお、たどたどしいながら、なかなか仰々しい物言い。

 知識レベルはわたしより高いんじゃなかろうか?


「ん? 王?」


「ハイ、ソノ武威、ソノ威容、ソノ魔力。何ヨリ我等ノ本能ガ貴方ヲ我等ゴーレムノ王ト認メテオリマスノデ」

 

「わーお、予想外の所からバレましたぁぁ」


「ええ!? そうなんですか? オーリオール殿!?」


 あー、もうこれは仕様が無いか。

 どうせすぐバレるのだし、ここらが潮時か。


「うん。そうだね。わたしはゴーレムなんだ。黙っててごめんよ?」

「そのお砂糖のような甘いお顔でゴーレムなんですか!?」


 ん?


「う、うん。そうだね。ほらここ球体関節あるでしょ?」

「ほ、本当だ! はわー、綺麗! わたしゴーレム推せます! 大丈夫!!」


 鎧被っているので推定だけど、キラキラした瞳でそんな事を言ってくるウラーナ。

 え? マジで?


〈うっわ、あざと!? この娘絶対気付いてたわ!〉


 おおう、マジかぁ。誕生したてとは経験値が違いました。

 やっぱり掌コロリンコロリンでしたわ。


「ソノ娘ハ人族デスカ?」

「囲イノ女、妾ガ王ニ気安イデスナ」


「いや、嫁いないしぃぃぃ! 囲ってなぁぁぁい!!」


〈Dの者にそのような事できようはずもございませんもの〉


 うるせぇ! ラーラレーア!


「あら? 囲っていただけるんですか?」


 照れ照れモジモジしながら推定上目遣いでそんな事を言うウラーナ。


 うっわ、これはわたしにもわかる。

 おうのう、最悪だ。黒歴史だ。

 これは首を括れってことか?

 何この状況!?

 どうせいちゅうんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「シテ、王ハ何ガ御望ナノデショウ?」

「我等カラモ生娘ガ御入用デスカ?」


 「エ?」って感じで向こうの方で振り返るサンドアント人型(恐らく生娘)とサンドビー人型(恐らく生娘)がチラホラ。


 くっそ、居た堪れない。非常に居た堪れないぞ!

 よし、逃げよう。

 どこに?

 別の世界がいいかな?


 と現実逃避をしていたがハッと気が付く。


「あれ? 別に人族いても、わー敵だーってならないの?」

「王ガ敵対シナイノデアレバ我等ハ特ニ何モシマセンナ」

「少シ前ニ来タ人族ニ対シテモ攻撃サレテモ我等は逃ゲルノミデスナ」

「このダンジョンの攻略中やものを持ち帰ると襲ってくるって聞いたけれど?」

「アァ、霊銀鉱ヲ持ッテイタ時ニハ無我夢中デ襲ッテシマウ者モイルカモ知レマセンナ」

「あー、ここまでこれる人族がいなかったもので完璧に情報不足ですね。要は食糧や霊銀鉱さえ持って無ければ大丈夫な訳ですか」

「出口付近はゴーレムじゃないからって事かな。最初の方は食料などの良い匂いがしちゃうからかもね」


 なかなか安易な攻略方法があったもんだ。

 まぁここまで長大なダンジョンで食糧とか無しで来ようと思う事がそもそも無いか。


「なるほど、じゃあちょっとお願いがあるんだ。実はこの前きた人族を助けたいんだ。帰る時は無事通してやって欲しい」

「ハイ、王ノ仰セノママニ」


 まぁGのエリアや最初の方の生物エリアは気を付けなきゃだろうけれど、そこは抜けてこれたんだから大丈夫だろう。


「ところで魔力が足りないから数が減っているのだっけ? やっぱり君達だとサンドスパイダーやサンドマンティスを倒すのは厳しいのかな?」


「ソノ通リデス。昔ハ狩レタトサレテイマシタガ、ソノ方法ハ随分前ノ村長達ガ伝エヌママ死ンデシマイマシタ」

「今ノ我等ハ全体的ニ体ガ小サク、アノ様ナ大キナ獲物ナド狩ルコトガデキマセン」


 なるほど、じゃあ少し手伝ってあげようか。

 解決方法も思い付くしね。


「じゃあいい事教えてあげる。霊銀鉱はサンドゴーレム達の腹部に宿る。頭を潰さなければ腹部を癒してまた復活できるんだって。だから多分、以前は彼らの中でも弱い個体を選んで活かさず殺さずで遣り繰りしてたんじゃないかな?」

「先ほど腹部を貰った「オタマ」「オナベ」「オカン」であればなんとかなりそうですものね」

「そうそう、回復の為に一時的に結構弱くなると思うからさ」


 弱肉強食の対象にされるのは不憫に思うけれど頑張れ、生きろ「オタマ」「オナベ」「オカン」。


「有難ウゴザイマス。元気ニナッタ個体ヲ集メテ挑ンデミマス」


「うん、ダメだったら言ってよ。そのくらいだったら手伝うからさ」


 あーあとこの村長っぽいのも名前決めておくか。アントとビー、AとBね。

 うん。AとBならこれでどうかな?


「君たちの名前決めておこう。サンドアントの村長は「エーサク」、サンドビーの村長は「ビーサク」でどうかな?」


〈貴方は一体どこからその知識を得たのでしょう? 不思議です〉


 そんなやり取りをして、彼等とは別れた。

 そして確かにここのゴーレム達はこちらが襲わない限り襲ってこないようだった。

 オタマはもしかしたらシャーシャー威嚇してたんじゃなくて命乞いをしていたとか?

 

 うーん。可哀そうな事をしてしまったな。

 ま、言葉が通じないのが運の尽きだね。諦めてほしい。


 わたし達は泉のところまで難なく行くことができた。

 しかしそこには勇者達は居なかった。

 あったのは奥に向かう足跡だけだった。



 ピロン♪

 :金満ゴーレムのオーリオールは中層に移動した。:


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