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異世界風土記〜諸国漫遊が仕事です〜  作者: 木桶 晴
1章 見知らぬ国と人々について
4/11

3. クライマーーックス!(神様的に)

 ちゃーす、木桶です。遅くなりましたが3話ですね。今回はちょっとしたおまけと一緒にアップします。そちらもどうぞ〜。では!

「それで、もう話すことなくなっちゃたんだけど。どうする?」


 別にそれで話すことがなくなるわけじゃないだろうが、予定が崩れてやる気がなくなるのはわかる。スムーズにいかないならいいや、みたいな。


「じゃあ質問が」


「あ、はいはーい。あと一つくらいね。次に進めないと司祭さんたちが困っちゃうから」


 司祭さんとやらはこっちの状況を知ってるんだろうか。俺がそこに行くなら、関係ない話でもないような気がする。仮に待たせるなら、早く話を続けたほうがいいか。


「はい。じゃあえっと、言葉はどうなるんですか? 多分言語違いますよね」


 なんだかんだここが一番重要だったりする。4つ種族があるってことだったが、全部で言葉が違うのか、それともなんかあっちに行ったら行ったでなんか通じちゃう感じなのか。


「あ、それは違うけど問題ない。あとでなんとかするから。はい、質問タイムしゅーりょー! 次のラウンドに行きまーす」


 エスコートだったりラウンドだったり、なんだかよくわからない司会だな。まあ全然構いませんけども。


「はーい。して、次は」


「次で最後だよ! これこそ醍醐味だよね! スキル選択の時間だ!」


「スキル……」


 なんか一気に現実に引き戻されたな。……うん、なんか文化とか言語とかちょっとづつ考えてきたけど、結局これあのよくある異世界転移なんだよな。そっか、スキルね……ゲームくさいなあ。


「あれ、なんかテンション下がった?」


「いや、なんといいますか。別にがっかりしたとかではなくて、いきなりそれっぽくなったなって」


「ああ、なるほどね。まあでも、ここで言うスキルってさ、つまりは才能とか性質にわかりやすい名前と規則をつけて、それを定着させたものだから。君が思ってる魔術とはまた違う(たぐい)じゃないかな」


 やっぱりこいつ、頭の中を覗いてるんだろうか。割と気持ち悪いからやめてほしいのだが。でもそうか、性質ないし才能の可視化ね。すごくいいとは端的に言っていいのかわからないが、人を育てる上ではすごく効率的だと思う。


「才能を選べるんですか? ちょっと面白そう」


「でっしょー? 結局、みんなこれが一番楽しみなんだと思うんだよねー」


「選択ってことでしたけど、選択肢は?」


 そもそもさあ選べ!なんて言われたって、どれが強いのかとか、それにどんな対抗策があるのかとか、そもそも戦闘系のスキルを使うほど治安は悪いのか、どんなスキルがメジャーなのかなどなど……。選ぶにはどうも要素が少な過ぎる。


「せっかちだねえ。私は偉いから、ちゃんと解説してあげようとしてるんだよ。まあ聞き給え」


 それはご丁寧にどうも。


「まずはじめに、魔術とスキルは別物だよ。魔術は何かを代償にして何かを生み出したりする技術のことで、スキルはもっとなんか、規則的で機械的なカンジ」


 言 っ て る 意 味 が わ か ら ね え 。何かを代償にして何かを生み出すのだって、そう言われると規則的で機械的な法則にしか思えない。そういうことができる、という法則。スキルは更に機械的……もとから究極に機械的な、法則そのものと比べてさらに機械的。わからん。


「あのー、魔術も法則で成り立ってるんですよね。ならそれより機械的ってどういうことですか?」


「あーー、……これは説明が悪かったかな? つまり言うと、スキルは感情的な要素と反応しづらいってことさね。魔術は後天的な技能だから、気持ちとか気分で不調とかがあるのさ。君だって熱があるときは走るのは遅くなるでしょ? 計算の制度が落ちたり」


 まあそれは。誰だって生物だからこその欠陥を、あるいは危機管理システムをある程度は持って生まれるものだ。それによって生じる不調はどうしょうもないし、能力の低下も避けられるものではない。


「ですね」


「でしょでしょ? そんな感じで、よくも悪くもあなた次第な魔術と違って、体調にも心象にも関係なく能力を発揮できてしまう、それがスキルなのだ!」


 おおー。それはいい。それに、さっき機械的だと言っていたのにも納得がいった。なるほど、感情に左右されないならば、それは技術よりも機械的であると言えるのかもしれない。


「うむ、納得してくれたようで何より。ところで時間がないので1分でスキルを選んでくれ。翻訳スキルはこっちであげるから」


「はあ!?」


「まあそうなるよね。いやあスケジュール管理って苦手なんだなーこれが」


 神殺しとかのスキルがあったらまっ先に取ろう。こんな神どうせ悪さしてるに決まってる。信仰が篤いなんて絶対嘘だろ。


「あ、せやせや。これがリストね。意識を向けるとⅠからⅢとO(オー)って書いてあるやつが見えるから。それスキルのランクで、数字が大きくなるごとに強くなって最上級はO。Oを4として数字の合計が5になるように選んでね」


「ちょっと待ってくれぇ!」


「あ、ごめん2分に延長できそう」


「……(死ねという顔)」


「ちなみにOは『オリジナル』の頭文字ね。その系統のスキルの頂点に位置してて、意識しなきゃ発動できなかったのがオリジナルだと常時発動型になったり、消耗量が減ったりするよ」


 だから待てって! 待て! 止まれ! 犬でもできるぞ! 個体によるけど! 情報量! 多い! なんで一気に言うんだよさっき説明しとけよ時間ないんなら!


「えっと、ⅠからⅢ、オリジナルの順で強くなって、オリジナルを4として合計が5になるように選ぶんですね? オリジナルは超コスパいいスキルってことですよね?」


「まあだいたいそんなかんじ〜。はーつかれた」


「一旦死ね」


 それはこっちのセリフですよ……おっと逆だった。まあ内容的には大差ないだろ、うん。

 ……ざっと見た限り、スキルの効果は大雑把なものが多いみたいだ。例えば、スキル・家事みたいな特定のものに対するスキルはほとんど見られない。せいぜいスキル・言語理解みたいなのは、かなり一つの技能にフォーカスしているが、それくらいだ。

 ただ、目の前に浮かんでる、多分そこのカスが空間上に出した映像には複合スキルという欄があって、それを覗くと複合スキル・家事とか料理とかが見受けられる。料理なんかは、スキル・身体操作Ⅰ以上と感覚強化Ⅰ以上、材質理解Ⅱ以上、物理理解Ⅰ以上などの複合。今回選ぶものにおいてはセット商品みたいになっているんだろう。いらないけど。


「あと40びょ〜う」


 さあ、大方だけどざっと概要が掴めた。我ながらこの適応力はかなりすごいと思う。もう40秒とのことだし、時間も全くない。ならばどんな環境でも使えそうな、汎用性が高そうなスキルを選ぶのが無難だろう。


「俺は魔術を使えるようになるんですか?」


 これで異世界人は魔術が使えませんとか言われたら、向こうの住人とはスタートから違うということになってしまう。どうあがいてもよそ者な俺は、身を守るために他よりも弱くあってはならないのだ。


「使えるよ。その他の条件に関しても、今ある才能とかそういうの以外は他と変わらない。……あと30秒だよ」


 腐っても神様、こちらの意図をくんでくれたようで、こっちが聞きたかった情報をまとめて返してくれた。たぶん、向こうの人間と俺との人種的な優劣は決定的なものではないってことなんだろう。まあこっちの世界だって人種によって身体能力やら体躯に差があるわけだし、『ない』の一言で片付けられる程度なら考えなくていいか。


 さあ、元の世界で自分に足りなかったのは何だったか。ここで謙遜とか傲慢とか考えてる暇はない。必要なのは率直な自己評価だ。

 前提として、俺は割と器用な方だ。同じ努力量に対して、他よりも多少だが高い水準で物事をこなせる。ただ、抜きん出るものは一つとしてない。さらに、自分で決めたもの以外で努力するというのがほとんどできない。はっきり言って怠惰な人間。


―――あと20秒。


 次に、俺は異世界に渡って何をするのか。目標は……あるはずがない。突然世界から切り離されて、なんだか知らないが『お前は今日からここで生きる』と言われた。自分でも後ろめたさがあるくらい、これまでの全てを捨てることを簡単に受け入れてしまった。実感が湧いてないだけかもしれない。

 それでもやはり昔のことも思えば、俺はかなり諦めのいい人間なのだろう。そんなやつが野望のために強くなるなど、その身に不釣り合い、分不相応と言うやつだ。


 ならば、生き残ることを最優先にしなければならない。


 何も知らない世界に行くことに、不安はある。


向こうの常識をいくら知ろうが、最後まで完全には馴染めないだろう。


最終的に自分の予測能力が、その世界で生きてきた者たちの予測能力を上回ることはない。



 理屈で上回れないのなら、俺の武器になるものは。



直感と



それに従って動ける瞬発力だけだと



そう思った。

 いかがでしたでしょうか? 書いてて思ったのは、

ス キ ル 選 び っ て 大 事 !

うん、下手すりゃ死にますから。あと、常識知らないと敵を作るので郷に入ってはなんとやら、という言葉って正しいんだろうなあ、と。まあそれも後々書くかもしれませんが。ではまた!

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