メイドがダックスフントを集める面倒な事件 6
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翌日はA田が休みの日で、朝からまた余所行きの服を着て出かけて行った。帰ってくるときには、大きな包みを抱えていた。
I海さんに目配せをすると、意図を理解してくれたらしく、真面目な顔で頷いていた。
「旦那様、見てきたわよ」
昼下がり、一人で裏庭の掃除をしていた私をI海さんが捕まえて話しかけた。
「夕食の献立の相談とか適当な理由をつけてお部屋を覗いたのよ。そしたら、あの大きな包みの中身が部屋の真ん中にあったわ」
「本当ですか? どうでした?」
「思った通り、大きなダックスフントのぬいぐるみだったわ」
「……やっぱりですか。どこで見つけてくるんでしょうね」
「包み紙が、○急百貨店だったわよ。きっとここの間ペット用品店に行った時に見つけておいたのね」
「ブローチと、ポシェットに着けたキーホルダーに続いて三個目ですね」
「それどころじゃないわ」I海さんは顔をすっと寄せて、声を潜めた。「お部屋の中には、ダックスフントのぬいぐるみや小物がたくさんあったわ。ベッドの上にも小さなぬいぐるみが転がっていたし、机の上にはマスコットがいくつか、ハンガーにはダックスフント柄のブラウスもかかっていたわ。私、びっくりしちゃった」
「それは……また極端ですね」
「ほんとよ。犬は苦手なはずのに、犬関連の小物をあんなに集めるなんて……」
「やっぱり、きっと何か意味があるんでしょうね。見当もつきませんが……。占いが関係ないとすると何だろう。縁起ものとか……?そう言えば、招き猫の小物をいっぱい持ってますよね。何か縁起を担いでいるのかもしれませんね」
私がほとんど独り言のようにしゃべっていると、声量を落とすために近づいていたI海さんの顔に異変が現れる。目が徐々にじとっとして私を睨むような視線になる。
「……ねえ旦那様、私、今回、分かったことがあるわ」
口調は優しく、しかし声色は硬質になる。
「な、なんですか」
「知らなかったわ。きみって、普段から、はなちゃ……A田さんのことをよく見ているのね。犬モチーフの小物は持っていない、とか、招き猫を集めているとか……」
I海さんは話しながら更に顔を私に近づける。手がネクタイにかかる。
「そ、そうですか? たまたま、たまたまですよ。ちょっと近いです。顔、近いです」
「きみは皆の雇い主なんだから、皆のことを平等に接してもらわないと困るんだけど。それとも、A田さんのことを特別気にかける理由でもあるのかな?」
ネクタイを掴んだI海さんの手が並々ならぬ力で私を彼女の方へ引き寄せる。お互いの吐息がかかる距離だ。
「ちょっ……近いですってば、I海さん。何なんですか。接してます、平等に接してますよ」
「そうかしら?」
その目が私をじっと見据える。
「そうですってば。首、首痛いです」
「そ? ならいいんだけど」
ふっと手が緩められる。
I海さんが何を気にしているのかわからないが、当時ごくまれに突然こんな行動を見せることがあった。




