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五人のメイドと面倒な事件簿  作者: 杉村雪良
メイドがダックスフントを集める面倒な事件
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メイドがダックスフントを集める面倒な事件 6

 翌日はA田が休みの日で、朝からまた余所行きの服を着て出かけて行った。帰ってくるときには、大きな包みを抱えていた。

 I海さんに目配せをすると、意図を理解してくれたらしく、真面目な顔で頷いていた。

 

「旦那様、見てきたわよ」

 昼下がり、一人で裏庭の掃除をしていた私をI海さんが捕まえて話しかけた。

「夕食の献立の相談とか適当な理由をつけてお部屋を覗いたのよ。そしたら、あの大きな包みの中身が部屋の真ん中にあったわ」

「本当ですか? どうでした?」

「思った通り、大きなダックスフントのぬいぐるみだったわ」

「……やっぱりですか。どこで見つけてくるんでしょうね」

「包み紙が、○急百貨店だったわよ。きっとここの間ペット用品店に行った時に見つけておいたのね」

「ブローチと、ポシェットに着けたキーホルダーに続いて三個目ですね」

「それどころじゃないわ」I海さんは顔をすっと寄せて、声を潜めた。「お部屋の中には、ダックスフントのぬいぐるみや小物がたくさんあったわ。ベッドの上にも小さなぬいぐるみが転がっていたし、机の上にはマスコットがいくつか、ハンガーにはダックスフント柄のブラウスもかかっていたわ。私、びっくりしちゃった」

「それは……また極端ですね」

「ほんとよ。犬は苦手なはずのに、犬関連の小物をあんなに集めるなんて……」

「やっぱり、きっと何か意味があるんでしょうね。見当もつきませんが……。占いが関係ないとすると何だろう。縁起ものとか……?そう言えば、招き猫の小物をいっぱい持ってますよね。何か縁起を担いでいるのかもしれませんね」

 私がほとんど独り言のようにしゃべっていると、声量を落とすために近づいていたI海さんの顔に異変が現れる。目が徐々にじとっとして私を睨むような視線になる。

「……ねえ旦那様、私、今回、分かったことがあるわ」

 口調は優しく、しかし声色は硬質になる。

「な、なんですか」

「知らなかったわ。きみって、普段から、はなちゃ……A田さんのことをよく見ているのね。犬モチーフの小物は持っていない、とか、招き猫を集めているとか……」

 I海さんは話しながら更に顔を私に近づける。手がネクタイにかかる。

「そ、そうですか? たまたま、たまたまですよ。ちょっと近いです。顔、近いです」

「きみは皆の雇い主なんだから、皆のことを平等に接してもらわないと困るんだけど。それとも、A田さんのことを特別気にかける理由でもあるのかな?」

 ネクタイを掴んだI海さんの手が並々ならぬ力で私を彼女の方へ引き寄せる。お互いの吐息がかかる距離だ。

「ちょっ……近いですってば、I海さん。何なんですか。接してます、平等に接してますよ」

「そうかしら?」

 その目が私をじっと見据える。

「そうですってば。首、首痛いです」

「そ? ならいいんだけど」

 ふっと手が緩められる。

 I海さんが何を気にしているのかわからないが、当時ごくまれに突然こんな行動を見せることがあった。

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