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クアット・カーラー・エピック  作者: 牛尾 仁成
発 端
1/8

前文

 ここに四つの文明がある。


 一つは『赤の文明』


 二つは『青の文明』


 三つは『白の文明』


 四つは『黒の文明』


 それぞれの文明で生きる者たちは種族、思想、信仰、道徳、生活環境、そのすべてが違う。それぞれの文明はそれぞれの土地や共同体といった勢力を持ち、長い歴史の中で時に助け合い、時に争い、時に憎み、時に赦し、と集散離合を繰り返しながら今日まで栄えてきた。


 これは、そんな世界でかつて起きたある出来事を語り記すものである。


 事の発端は『赤』と『白』の勢力圏の境目で起きた小競り合いからであった。ランカークス跡と呼ばれるこの地域は、かつては『白』の勢力下にあったランカークスという街であったが、長い勢力争いの末『赤』の勢力の攻勢に耐えられず、結果的に放棄されることとなった。今では、街があったということを思わせる石畳や建物の残骸といった、かつてこの地で生活が営まれていたという痕跡が幾許か残されている程度である。


 共同体という枠組みを失い、施設が破壊され資源も無くなったこの地は、最早両陣営にとって用済み、という認識となり、見捨てられていた。そのため、今やどちらの陣営も実効支配している土地ではない。だが、共同体にとって価値を失った土地は、共同体に属さない者たちにとっては、価値ある土地でもあった。つまり、犯罪者や失脚した者、迫害され居場所を追い出された者のように、共同体に属することができなくなった者たちが流れつく、無法者の吹き溜まりと成り果てたのだ。


 街と呼べるほど、確固とした組織体があるわけでもないランカークス跡は、治安など無いに等しい。四六時中強盗や殺傷事件が相次いでいた。


 しかし、組織体がないといっても生活を営むためには大なり小なり生き物は集団(コミュニティー)を形成しなければならない。この無秩序な吹き溜まりの中でも持てる者と持たざる者という差は歴然と存在した。


 法がないからこそ、力ある者がこの吹き溜まりの中で大きな顔をすることができ、力無き者たちを従えることができる。結局、寄る辺なく各地をさまよい歩き、たどり着いたこの場所でも、同じことが繰り返されている。力無き者たちは力有る者たちから、搾取され支配され、抑圧され、虐げられていた。


 統一歴1876年10月12日のことである。


 この時、ランカークス跡には一人の貧しい少女が住んでいた。


 その少女とこの街を訪れたある男との出会いが、全ての始まりであった。


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