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第二話 「邂逅」

落下している。いくら足場のない空中でも自由な姿勢をとれるといってもただの人間である。飛ぶことはできない。

私は5億年もの時間の牢獄からついに解放される気配にこの上なくワクワクしていた。


落ち続けること数時間、急に圧力が迫るのを感じた。

地面だ。とっさに衝撃をつま先から頭の上まで逃し、体の半分ほどが埋もれながらも無傷で着地した。


「ここは?落ちてきた穴は深すぎて上を望むことなどできず。周りは暗くしめっけが多い」


「ちと払うか」


そういって私はおもむろに足払いを払った。地面に転がる大小の小石が私の足払いによって着火し、壁に曳航を引きながら燃え尽きた。


どうやらここはかなりの大きさを誇る洞窟のようであった。


しばらくあてもなく歩いていると前方からワニのようなでっかいトカゲが多数迫ってきた。


「うおっ、なんかこっち来てる。5億年ぶりの別の生き物だぁ」


思わずいとおしくて抱きしめてしまったほどだ。

抱きしめられたワニはなぜかしきりに噛みついてきたが破壊と再生を繰り返すうちに手に入れた強靭な肉体には歯が立たない。


「口から火も吹いてるし、面白い生き物だなあ、ちょっとくらい開いてもいいよね」

そういってワニの口を思いきり開いて中身を調べようとしたら、少し力を入れただけでワニは断末魔を上げて塵となって消えてしまった。


「あらら、生き物ってこんなにもろかったっけ?死体もすぐ消えちゃうし」

他に多数いたワニもどうやら一匹の凄惨な死にざまを目にしてどこかへ逃げ帰ってしまったらしい。


「まあいいか、ここはどうやらあの閉鎖空間とは関係なさそうだし、これから興味深いこともいっぱいおきそう」


そういって私は奥へ奥へと進んでいくのだった。



すると目の前に大きな扉が見えてきた。

見上げるほどのその扉は10メートルはありそうである。


「まあ入ってみるか。楽しみだなあ」


5億年も一人で過ごした私には怖いものなど何もなくただ好奇心だけが勝った。

「ん?開かない?鍵でもかかっているのかなあ。まあいいや」


ドごオオオオ


前蹴りが大扉をひしゃげさせ奥に向かって倒れた。


「よく来たな勇者よ、我は魔王軍四天王が1人、竜王タイタンである。この間に入ってきたからには決して生きては帰さぬぞ」


そこにいたのはまさに西洋のドラゴンといった見た目の龍だった。

身体は黄金の鱗に覆われ、立ち上がったままこちらをにらみつけている。


なんか面白そうだから観察してよ

長く孤独な生活で言葉が出なかったのもあるが、何よりこれから起こることへの期待から何もせず待っていることにした。


「フンッ、その余裕そうな態度今に崩してやる」


竜王タイタンは頭を持ち上げたかと思うとその口先に光が集まった。


「まずは小手調べよ、くらえ、皇竜砲ドラゴンブレス」


収束した光が莫大な熱量となってその口から放出された。

熱戦はまっすぐにこちらに向かってくる。


「ふえー、なかなかの熱量。これを避けるのは無粋だな」


掌底打ち「破轟」


これはいくつも生み出した技の中の一つであり、

まず手のひらで空気を打ち出し、急激に圧縮された空気が周りの空気の断熱効果によって断熱圧縮を引き起こし、膨大な熱エネルギーを伴った圧力が前方に解放されるという技である。


二つの莫大なエネルギーが空中でぶつかり合いお互いに消滅した。


「ほう、なかなかやるではないか。龍族随一の火力を誇る我のドラゴンブレスを相殺するなど」


「しかし龍の本領はその肉体よ。強靭な鱗はどんな刃も通さず、四肢の破壊力は岩をも砕く」


突如として龍の巨体が目の前に現れ、右前足を振り下ろしてきた。


「いいね!楽しくなってきた」

振り下ろされた前足をカウンター気味に合わせて右フックを放つ。


放たれたパンチはぴたりと足裏に命中し、見事に龍の右腕を胴体からもぎ取った。


竜の力任せに放った打撃は重心が体から離れており、衝撃に耐えられなかったのである。


「えっ?ぎゃああああああわしの右腕がああ、貴様ァ!許さぬぞ、覚えておくがいいこの竜王の怒りを、そして外界に伝えるのだこの我の脅威をな」


そう言って竜王はなぜか元いた玉座へと戻ってしまった。


「どうした?はよ行かぬか。この我が見逃すと言っているんだぞ」


うーん、もっと長く遊びたかったのになあ。なんか腕とれたくらいで引きこもっちゃった。

「ごめん、もしかしてやりすぎちゃった?腕ぐらいすぐ治ると思ったんだけど」


「こっこっちに来るなああああ、早く扉から出て行ってくれえ」


なんか嫌われたみたいだ。久しぶりの会話なのに落ち込むなあ。今日は帰って、また明日来よう。

「なんかすみません。また明日来ますね」


「こっ来なくていい!謝罪ならその扉を出て右に曲がったところにわが主がいるからそっちにしてくれ。頼む!」


「わかったけど」


竜の表情などは読めないが、なぜか帰るときには竜王がほっとしているように思えた。



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