1話
「れんちゃーん!起きなさーい!」
眠っていた俺の耳に母さんの声が聞こえ俺は目を覚ました。しかしまだまだ寝ていたいのだと脳が主張し、布団の野郎が妙な居心地の良さと温もりでもって脳の主張を助けようとしているが、その誘惑を振り払い俺はベットから出た。そして時計を確認する、なんとまだ6時だった。
「なんでこんな時間に起こされたんだ?いつもより1時間も早いじゃないか。」
そんなことを言ったところで起こされたからには母さんのところにいくしかないのだが、俺はついつい愚痴ってしまう。そして気になるところがもう一つ、もうずっとちゃんづけはやめてほしいと言っているのに一体いつになればやめてくれるのだろうか。後で毎朝の恒例行事になりつつある[ちゃんづけやめてください運動]をするしかないな。
そんなことを思っているうちに俺の足は勝手に自分の部屋を後にし、隣の部屋の前までやってきていた。毎朝の日課である妹を起こすを行うためだ。目の前の扉には、歩美の部屋と可愛らしい字で書かれており、その下には[兄は入るべからず]と真っ赤な字で書かれた紙が貼られている。
「ま、そんなこと関係なく入るんだけどね」
「お兄ちゃん入室~」
自分で言っておいてなんだが、バカみたいだなー。なんて思いながら入ると、必要最低限のものしか置かれておらず全然うら若き乙女の部屋とは思えないような部屋が現れた。
ここの部屋の主である歩美はというと、部屋の真ん中にあるこたつの台の上に広げられた何かの資料に突っ伏していた。
何かものが置いてあると思ったら、何かの資料やら工具や機械の部品だったり、そんなのばっかりだからなぁ。もうちょっと女の子らしく、ぬいぐるみ~とか可愛いお花~とかないのだろうか。この部屋は無機質すぎる。そしてカーテンでふさがれているせいで暗いぜ。
「おい、朝だぞ起きろ~」
耳元でモーニングコールをしてあげると、寝ぼけているのか〔誰だおまえは?〕とでも言いたげな目をこちらに向けてきた。
「誰だおまえは」
訂正しよう言ってきた。それはもう不機嫌そうに。整っている顔を最大限までゆがめて、そう言われた俺は・・・怖くなって部屋を出た。
いやだって仕方ないじゃん、怖いんだもの。なにあれ、一言でも喋れば殺すぞみたいな目でしたよ。いやむしろ出ていかなければ殺すぞという目だったかもしれない。まぁ、あゆみのことだからいつものようにこの後すぐに目が覚めるだろう。
そんなこんなで朝の日課を終えた俺は朝食を求めて母さんのもとへと旅立つのであった。