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ヴァイス・ノイン・ブライダル  作者: あぼのん
第三章 シュバルツ・ドライツェン
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第3話 十三番目黒子にはできない

「し、白鷺さんを破壊するって? そ、それってどういう意味……」


 わけがわからず、その真意を問い質そうとしたその時。

 目の前の女性は笑うの止めて鋭い視線を俺に向けてきた。


 いや、その視線の先は俺の背後。振り返ると、じっと見据えるそこには白鷺さんが壁に凭れ掛かり俺達のことを見つめていた。


「し、白鷺さ……」

「どうぞ、話しを続けていいわよ」


 いつも通りの表情ではあるか、どこか楽しげにそう言う彼女。

 そんな白鷺さんのことを、黒髪の女性は睨みつけ、忌々しげに言った。


「白鷺乃音、おまえは今までずっと私のことを騙していたのだな」

「騙す? 黒子、私は別にあなたを騙してなんていないわよ」

「嘘を言え! おまえは、ヴァイス・ノイン61298は眠っている状態で、その原因はわからないと言っていたじゃないかっ!」


 突如口論になる白鷺さんと黒髪の女性、て言うか黒子って言うのこの人?


「あのぉ、白鷺さん。この女性はいったい……」

「一ノ瀬くん、なぜ勝手にここへ来たの?」

「え、いやその、今朝のことが夢じゃないってこと確かめたくて」


 白鷺さんは、じとーっと俺のことを冷たい目で見ると、呆れたように嘆息した。


「あなた、夢と現実の区別もつかないの? はぁ……。きっと疲れているのね、しばらく休学でもして、休息を取った方がいいのじゃないかしら」


 いやまあ疲れてましたよ。徹夜で同じ映画を三回も立て続けに見させられたら、そりゃ疲れるでしょ。


「とにかく、これからは私の許可なしにここへ来るのは禁止よ」

「はい……すいません」


 なぜか怒られて俺は頭を下げた。

 そして白鷺さんは、今度は黒子ににじり寄って行くと頭にチョップを入れる。


「いきなり何をするっ!」

「痛くはないでしょ。あなたには痛覚なんてないんだから。黒子、あなたも勝手にここには入らないでと言った筈よ」

「黙れ。もうおまえの指図は受けないぞ! ふふふ、白鷺乃音。私は一ノ瀬チヒロから有益な情報を得たのだ。おまえが、ヴァイス・ノインと一つになったと言うことをな!」

「へぇ……。そんなことまで言っちゃったんだ、一ノ瀬くん」


 いつも以上になんだか冷たい表情で俺のことを睨み付ける白鷺さん。なんだか黒々としたオーラが滲み出ていて怖い。


「で、それを知ったからってどうするの?」

「決まっている。私の任務はヴァイス・ノイン61298を廃棄処分にすることだ。おまえの意識がヴァイス・ノインと一つになっていると言うのなら、おまえを破壊すれば自ずとヴァイス・ノインを破壊したことになる!」

「あなたに、できるかしら?」

「簡単なことだ! ヴァルキュリヤであるヴァイス・ノインならともかく、単なる人間であるおまえなど簡……たん……に」


 最初は息巻いていた黒子であるが、だんだんと尻すぼみになる。一体どうしたと言うのか?

 そんな姿を見て、白鷺さんは彼女を挑発するように両手を広げた。

 その瞬間、黒子が右腕を前に突き出す。丁度肘の部分が90度下に曲がると、腕の中から銃身のようなものが現れた。


「し、白鷺さんっ!?」


 俺は驚き声をあげた。

 まさか、黒子は……。黒子もアンドロイド? 咄嗟にそう思い、俺は飛び出すと白鷺さんを庇うように黒子の前に立ちはだかった。

 銃を向けられるなんて、日本で普通の生活をしていたら絶対にありえないシチュエーションである。そんな非日常的な状況に、俺の心臓は、はちきれんばかりに大きな音を鳴らしていた。

 しかしいつまで経っても何も起きなかった。

 黒子は銃口を俺達に向けたまま、硬直しぶるぶると震えている。


 白鷺さんは俺の肩に手を置いて退くように促すと、黒子の向けた銃口にそっと触れて下に下ろさせた。


「あなたには、決して人間を傷つけることはできないわ」

「おまえは……それを知っていたから……」

「えぇ、でも大丈夫。あの子は必ず再び起きるから。もう少し待っていて黒子」


 まるで母親が子供に言い聞かせるように言うと、黒子は銃身を腕の中に戻すのであった。


 というわけで。


「なにがなんだかわかりませんっ!」

「唐突にどうしたの、一ノ瀬くん?」

「いやいやいやいや。彼女は一体なんなんですか!? 当たり前の様に話しているけど、今のはなんですか!? 絶対に普通の人間じゃないですよね?」


 俺が捲し立てると、呆れながら答えたのは黒子であった。


「当たり前だろう。私はアンドロイドだからな」

「そんな当たり前は現代日本には存在しません!」


 俺がげんなりしながら言うと、今度は白鷺さんが説明を始める。


「彼女は、シュバルツ・ドライツェン1420。ノインと一緒に未来からやってきたアンドロイドよ。ちなみに、こちらでは十三番目黒子って名乗っているわ。当然名付け親は私」

「なんで、もう一人アンドロイドが来ているって教えてくれなかったんですか?」


 すると、白鷺さんはなにを言っているんだといった感じで答えた。


「説明したでしょ。“あの子達”は未来からやってきたって。ノインが暴走したのを、ドライツェンが止めようとして一緒に重力爆弾に飲み込まれたって話、聞いてなかったの?」

「えええええええ!? それだけですかあ!?」

「ちゃんと文脈を辿ればわかるでしょ? まったく、最近の子は全て台詞にして説明しないと理解できないんだから本当に呆れるわね。これこそが本当のラノベ脳なんじゃないかしら」


 最近の子って誰ですか? ていうか、白鷺さんも最近の子ですよね一応。


 というわけで、シュバルツ・ドライツェン。もとい、十三番目黒子の登場によって、俺はますますわけがわからなくなって、もう頭はパンク寸前なのであった。



 つづく。


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