銀翼の鷲
ククルとともに駆けること半日が過ぎた頃、アレンの目の前に野営地が見えてきた。
規模はさほど大きくないが毅然として並べられているテントから、銀翼傭兵団という集団が烏合の集ではないことをアレンは悟った。
「あれが私達、銀翼傭兵団の野営地よ。ようこそ、アレン・アックスフォード」
そう告げられたアレンはククルの蒼い真っ直ぐな瞳に吸い込まれそうになるが
「あぁ、だが俺は傭兵だ。もらえるもんはもらわねぇと働かないぞ」
野営地を前にして言葉を交わした二人は野営地の中へと進んでいった。
野営地の中心にそびえ立つ銀翼の鷲の旗の下にあるテントへ向かうと、中から何か言い合うような声が聞こえアレンは目を細める。
「お仲間さん達が随分と楽しそうだが?いつもあんな感じなのかよ」
「えぇ。きっとあれはまた斧と槍あたりがやり合ってるのね」
所属を答える際、自らを剣の隊 隊長と名乗ったクルルの姿を見ながら斧、槍の隊にも隊長がいるのだろうと思いながらもアレンはテントの中へと入っていく。
「今戻ったわ。」とククルが短く告げると
「おっ、剣の美人が帰ってきよった!槍よ!話は終いだ。」
「いつまで経ってもやかましい奴だ!何が終いだ。ところで剣よ、その隣の物騒な男は何奴だ?」
テントの中には六名の男達がいた。
今しがた口喧嘩をしていたと思われる、大木のような男と上背が高くしなやかな体つきの男が「斧」と「槍」なのであろうとじっと見つめるアレンの肩をククルが叩く。
白く細く見惚れてしまいそうな手に肩を叩かれたアレンはハッとした表情になってしまう。
「紹介するわ。アレン。アレン・アックスフォード。彼を今日から私の下に付ける。」
「ほぅ、そいつが例の男か?なるほど、お前の好きそうな男だ。」
一番奥に座っていた男が、物珍しそうな顔でアレンを見ると
「ようこそ。銀翼傭兵団へ。俺が団長のエスカー・ファンブラッドだ。よろしく頼むぞ、百人殺し」
握手を求められたアレンはエスカーの手を握るが、握手をした瞬間ククルが言っていた「強い男」の実力を直感したのであった。