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鬼剣の傭兵〜傭兵戦場物語  作者: 猫拾い
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手当

その戦の結末は、ウラド軍の壊滅的敗走という幕切れであった。

総大将マーキールとその右腕とも呼ばれた赤鎧隊ヨシュドが討たれたことによる指揮系統の瓦解と、敗走状態にあったウラド軍を、レグナレス軍は撤退的に叩いたのだ。


十二万対七万という戦からこのような幕切れを予想できたものは、数少ないであろう。

そして、それを予想出来たのが大将軍ハルベルトであったということだ。


「あの小鳥の将には褒美をくれようか、まぁ他の大将軍達に渡すわけにもいくまい」

天幕の中でひとりごちるハルベルトは、突然現れた才覚溢れる男とその男が率いる団の事を考え溜息をついていた。



一方その頃銀翼傭兵団の天幕では、魔の隊達による救護が行われている最中であった。



「おい、こんなもん大丈夫だ!かすり傷だよ、放っておきゃ治るっての!」


「ダメよ!ククルみたいな雑な女とは違うんだから!だいたいね、あんな馬鹿みたいに斬り込んでいってこんな傷で済んでること自体奇跡なのよ!」


救護所となっている天幕へと仰々しく運ばれて来たアレンであったが、ほとんど傷を受けていない。

唯一受けた傷は、ヨシュドとの一騎討ちでついた頬のかすり傷のみであった。


であるのにも関わらずこの扱いを受けているのには理由がある。

魔の隊 隊長ユリエルに捕まったのだ。


天幕へと引き上げてきたアレンとククル達は、重傷者を救護所へ運び込むと一息ついていた。

しかし、アレンの頬の傷を見たククルは休む間も無く手当を始めたのである。

その手際はお世辞にも良いとは言えず、たまたま通りかかったユリエルに馬鹿にされ、アレンは救護所へ連れて行かれるといった事態に陥ったのだ。



「まったく、ククルのどこが良いんだか…あれはああ見えてちょっとガサツなのよ」

ユリエルはアレンの耳元へ口を寄せ、吐息を吹きかけるようにイタズラのように呟く。


「何故かはわかんねぇがあれの隣で剣を振るのは、なかなか良いもんだ。俺はあいつに惚れてるのかもしれねぇ」


アレンの言葉を聞いたユリエルは、救護所の扉へ向かい振り返る。

アレンの言葉が女としてのククルではなく、隊長としてのククルへ向けられていると分かりつつも茶々を入れねば気が済まない。

そして、その感情はいつ恋愛感情と呼ばれるものに変換されるかわからないのだ。


「ふふふっ、アレンやっぱ面白い!ほら、良い男を捕まえたみたいね、ククル!」


そこにはユリエルに馬鹿にされ、ジト目をしているククルがいた。

しかし、今のアレンとユリエルのやり取りが聞こえていたのか、エルフ特有の尖った耳を真っ赤にしアレンの元へと小走りでやってきた。


「ア、ア、アレン!余計なことは言わないでいいから、さっさと戻って来い!」

そう言うと、ユリエルの手当を受けたアレンの腕を強引に引き、外へと連れ出して行った。


「ふーん、ククルも満更じゃあ無いみたいね。あぁーいいなぁ、彩りがあって」

ぶつぶつと独り言を始めたユリエルは、傷病者の手当を再開する。


「おいおい、ククルよ!あんま引っ張んなって!」

「う、うるさい!来なさい!隊長命令よ!」


周りから見れば微笑ましいやりとりを繰り広げている二人は、間違い無くこの戦の第一功である。

そんな二人を他所に時間は淡々と過ぎて行き、夕暮れを迎えた。



そして、刻は夕暮れ。

宴と行賞が始まるのであった。

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