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鬼剣の傭兵〜傭兵戦場物語  作者: 猫拾い
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抜刀術

マーキールとは違い、華奢で双剣を腰に下げているヨシュドは剣を抜き放つとすぐさまアレンに斬りかかった。



アレンは向かってくる双剣を一太刀交わし、片割れを大剣の背で受ける。

物量では圧倒的なまでの差がある両者の剣であるが、それでも一太刀受ければ致命傷は避けられないだろう。



「はっ!少しはやるが、そのなまくらで斬れると思うなよ!」

リーチが長く、重量のあるアレンの大剣を馬上で受けるのは危険だと考えたヨシュドは、悪態をつきながら馬より飛び降りる。


「ごちゃごちゃ言ってっと、俺に斬られる前に舌でも噛み切るぞ、ヤサ男!」

アレンもつられて悪態をつくと、ヨシュドに合わせるかのように黒馬から飛び降りる。


「お前に恨みはねぇが斬らせてもらうぜ、ヤサ男」

「ふっ、下賤な傭兵が。マーキールの右腕、取れる物なら取ってみろ!」


馬から降り、地を踏みしめながら改めて向き合う両者であるがお互いに相手の力量がわからない程無知な男では無い。

目の前にいる相手が、偽りなしに強者であることを感じ取っているのだ。


「よっしゃあ!行くぜー!!!」

アレンが雄叫びと共にヨシュドに斬りかかる。

ヨシュドの背の丈そのままのような大剣を上段に構え、振り下ろすがその速度が尋常では無い。



当たればそのまま大剣が体を叩き潰すように真っ二つに斬られるであろうと悪寒を感じたヨシュドは飛び退く。


しかし、この傭兵は止まらない。


振り下ろした大剣が地に刺さりこむ前に、強引に向きを変え薙ぎ払いに行ったのだ。

この物量をどうすればそのような動きが出来るのか、だが実際に目の前でそれは起こっているのだ。

考える暇も無く転がり込むように薙ぎ払いを交わしたヨシュドは反撃に出る。


双剣と軽い身のこなしを活かした二刀流であるヨシュドは、手数でアレンを圧倒するしかないと判断し、振り上げ薙ぎ払い双剣を突き刺すようにアレンを攻め立てるが、致命傷を与える事は出来ない。



「くっ、貴様、めちゃくちゃな剣術を使いおって!」

「おうおう!生憎優しい先生なんぞいなくてな!」



ヨシュドの剣を交わしきったアレンは頬にかすり傷こそあれ、致命傷と呼ばれるような傷は全く背負っていない。


「次で決めるぜ、ヤサ男!」

アレンはそう宣言すると、大剣を腰に当て居合のような体勢を取る。


「その大剣で居合が抜けるはずがないだろう!その首刎ねてやる!」

対するヨシュドは双剣をだらりとぶら下げ、脱力した状態で間合いを詰める。


居合。

抜刀術とも呼ばれ、剣を鞘に収めた状態から一気に抜き放つ。

今アレンが放った剣撃は鞘も無く、剣のサイズも全く居合と呼べる代物では無かった。

しかし、その様は洗練された舞のように美しかった。



ガンッ! !

およそ剣の打ち合いとは思えない衝撃音が響いた後、アレンはククルの方を見る。

そこでは剣と槍を交えているものの、ククルが優勢。

さらにククルはいつぞや見たように手を交差させて印を組み始めていた。




その姿に隊長の勝利を確信するとともに、ドサッと言う音を立てて崩れ落ちたヨシュドの首を見つめるのであった。


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