一騎討ちと一騎討ち
ウラド軍奥深くで対峙する三人。
ウラド軍総大将マーキール
レグナレス帝国軍 銀翼傭兵団 剣の隊 隊長 ククル・アルキドシア
そして、同遊撃隊隊長 アレン・アックスフォード。
互いの背では未だ部下達がせめぎ合いを続けており、この戦の最前線と言われるに値する血が流れていた。
しかし、その事実も霞むほどこの場で流れている空気は冷たく、皮膚に突き刺さるような鋭さを持っていた。
名を挙げこれから一騎討ちとなるか。
ククルとアレンが顔を見合わせた瞬間に、マーキールが赤槍を掲げる。
「おい!ヨシュドはいるか!いたら前へ来い!」
マーキールの問いかけに答え現れたのは、赤鎧を身に纏った華奢な男であった。
「はっ!マーキール将軍!」
敵陣奥深く、両者共に背で激しい戦闘が行われているのにもかかわらず、ヨシュドと呼ばれた男は一切に血を浴びていない艶のある赤色の鎧を纏っていた。
「我一人で貴様らの相手をするつもりは無い。開戦と共に駆け込んで来た勇猛な隊である事は少なからず認めておる。我右腕、ヨシュドと共に貴様らを叩いてくれよう!」
マーキールが高々と叫ぶと、戦闘を繰り広げている赤鎧隊から歓声が上がる。
「アレン、あれも相当な手練れよ。数的優位も無くなった今、少し厳しい闘いになるわ」
アレンに語りかけるククルであったが
「少し」
その言葉に、徐々に芽生え始めているアレンのククルへの忠誠心が高鳴る。
ここまで活路を開いて来てくれた遊撃隊達。
そして、この場においてアレンの力を信用しているククル。
何故か不思議と活力が湧いて来るアレンは、疲れなど微塵も感じなかった。
「おう、隊長。俺は奴らにバッジをやりてぇ。もちろん、アンタにもな」
ククルの方を見ずに、敵総大将に牙を剥きつつ語りかけるアレン。
彼のどこからそんな力が湧いて来るのか。
敵陣を端から斬り込んでいき、中央手前まで進んで来た者が発する言葉では無いが、目の前の男と共に剣を振るうと何故かその疲れも感じない。
ククルはアレンを見て、ゆっくりと口を開く。
「ふふっ、これは大事な戦よ。銀翼傭兵団始まりの戦。なのに貴方は怯みもしない、強い人ね」
「何言ってやがんだ隊長。始まりの戦だろうがなんだろうが、アンタの下で剣を振るのは二回目だ。二回目なら、ガキでも慣れるさ」
アレンがククルへ向けた言葉を皮切りに、恐らくこの戦を決めるであろう一騎討ちが始まる。
「貴様らはわからぬであろう、己の土地を野蛮な者に踏み荒らされる怒りを…女であろうが容赦はせん!」
ウラド軍総大将マーキールはククルへと襲いかかる。
「ちっ!てめぇの相手は俺だ!この野郎!」
アレンがククルの援護に回ろうとするが、その道は塞がれる。
「しがない傭兵とは言え、隊長だ。覚悟を決めろよ、木偶の坊が」
マーキールの右腕と呼ばれた男、ヨシュドがアレンの目の前に立ちはだかる。
「アレン!この男は私が斬る!貴方はその男を!」
襲いかかって来たマーキールの初撃を躱し、マーキールの兜を狙った一突きで金属音を響かせるククル。
「おう、こりゃ命令ってやつか!?仕方ねぇ、てめぇを斬ってその後にあいつも斬ってやるさ!」
アレンはククルとマーキールから目を離し、目の前に居る男へと視線を移す。
「ほぅ、状況が読み込めていないようだな。このヨシュド。お前のような木偶の坊に負ける男では無い!」
ウラド軍奥深く。
そこで行われていた一騎討ちは、伏兵ヨシュドを除きレグナレス帝国大将軍ハルベルトと銀翼傭兵団団長エスカーが描いていた図を、そのままなぞるように進むのであった。




