孤立する傭兵団
ウラド軍の中央付近まで切り進んで来た剣の隊。
その先頭にいるのは黒馬に跨り大剣を振り回す傭兵と、白馬を駆る美しいエルフであった。
「おい!ククル!そろそろのはずだ、本陣から何か合図は無いのか!?」
「待って!アレン!もうそろそろ来るはずよ、団長がこの機を見逃すはずが無いわ!」
戦場となっている山岳地帯は両軍の丁度中間に当たる部分が最も低い谷になっており、そこからレグナレス、ウラドに向かい駆け上がりの地形となっていた為、もうすでにウラド軍側へ大きく入り込んだククルとアレンにはレグナレス軍側の動きが見えるのだ。
「隊長!赤の狼煙が上がってるぞ!」
剣の隊 四百余りを引き連れているシュードが、やや後方から叫ぶ。
「赤の狼煙…いつもなら徹底前進を意味するものだけど、今は前進中よ!?」
戦というものは広範囲に渡り展開されるものである。
しかし、総大将とは一人しかいない。
よってこのような戦では広範囲に指示を伝達させる為に、本陣からの狼煙が使われることが多いのである。
「赤の狼煙!?赤って言ったら、敵の隊長格ってことじゃ無いのか!?赤鎧だなんだって言ってただろ?」
魔物と馬の混血と言われる黒馬の手綱を引きながら、アレンは器用にククルを見やる。
「まさか、敵総大将がこっちに向かってる!?」
ククルとアレン、そしてシュードはお互いの顔を見合わせると不敵な笑みを浮かべる。
アレンはレグナレス軍を振り返ると、そこには先程まで銀翼傭兵団と肩を並べていたはずの隊が見えない。
完全に銀翼傭兵団が孤立し始めたことを悟った。
しかし、この苛烈な男にそれを憂う気持ちは微塵も無かった。
なぜなら、初めから赤鎧の敵総大将を斬るつもりで側面からの奇襲を仕掛けたのだ。
「おい!ククル、シュード!槍の隊は少し遅れてやがる!ここは俺達でケリを付けるぞ!」
アレンが剣の隊に向かい叫ぶと、遊撃隊からは士気の高さを証明するかのごとく歓声が、ククル隊とシュード隊からも歓声が上がる。
「ちょっとアレン!全く、無理はしないのよ!」
ククルが制止の声を上げるが、その顔は笑っている。
この美しいエルフの隊長も、アレンに魅せられているのだ。
大将軍ハルベルトの図を理解しているこの四人が、遂にこの戦を決定づける闘いに向かうのであった。




