黒と白の矢
「うわぁぁぁぁ!敵だ!敵がもうそこまで来てる!」
ウラド王国軍右方では混乱と血が入り混じっていた。
マーキールの号令により、これから侵略者達を迎え撃つと士気を更に高めようとした瞬間。
レグナレス軍とウラド軍の丁度中間の地点で何かが爆ぜる。
魔術であることは理解できたが、何故それをそこに撃つのかわからない。
必死にその意味を探し、この混乱した状況を打破する術はないかと頭を回転させようとしていたウラド軍右方を指揮していた男のこめかみに矢が突き刺さった。
状況を打破する為の策は永遠に浮かぶことは無く、爆風吹き荒れる中、正確に射られた矢によって絶命したのである。
「おいっ!指示を仰げ!隊長はどこへ行ったのだ!」
「煙が晴れるぞ!前進の命令は出ているのか!?」
いくらマーキール将軍が優れた将とはいえ、十二万に一人で指示を出すわけにはいかない。
それぞれの持ち場に将がおり、その中には将軍の地位を持つ者も多々いたのである。
コルが射ったのは、将軍では無かったが右方端一万の兵を率いる指揮官であり、矢一つで敵兵の指揮を完全に潰すことに成功したのである。
指揮が通らないことに混乱状態に陥るウラド王国軍の側面から凄まじい速さで駆けてくる騎馬兵達がいた。
先頭で大剣を構えながら駆ける男はアレンであり、その後ろには剣の隊遊撃隊と呼ばれる、剣の隊でも屈指の実力を持ちアレンの元に集った隊員達がいる。
「おらぁ!てめぇら、闇雲に切り進んでも拉致があかねぇ人数だ!となれば、やることは一つだ!拉致があくようになるまで俺に付いて来い!」
アレンの指揮する遊撃隊の士気は高い。
この男の元で闘いたい、その希望が実現したこともあるが、何よりもその男がやはり強い。
途轍もなく強いという事実に奮い立っているのだ。
「ほぅ、やはり本物か。銀翼傭兵団とやらよ。あの小鳥の将も只者では無い…が、それよりもあの男はなんだ?凄まじく苛烈な男だ」
どんどんと敵を切り捨てながら進むアレン達は、遂に敵右方軍を完全に取り込もうとする勢いであった。
「ククル殿め!薄々感じてはおったが…槍の隊よ!剣の隊の援護に回る!後方より合流し、斜陣を敷くように展開するぞ!」
ククルへの恨み言を口にしながらも、サリオンが援護へ向かう。
その頃、ククルはサリオンへ心の中で詫びを言いつつもこれ以上無い開戦の攻勢を繰り広げているアレンと、その中心にいる我が剣の隊に頼もしさを感じつつアレン率いる遊撃隊の援護に向かう。
「さてと、そろそろ追いつかないとまたアレンに笑われるわね。ククル隊!気合いを入れなさい!遊撃隊と合流するわ!」
ククルは白馬を駆り敵陣を突き進んで行く。
左方の丘より、戦場を見ていたエスカーは側に控えるアリエフスキに告げる。
「開戦は上々。流石だ、アリエフスキ!そろそろ黒と白の矢が交わるぞ、ユリエルとニグルに援護させろ!」
その指示の後、アレンとククルが過ぎた敵陣には魔術と矢の嵐が襲いかかるのであった。




